アンダー400 No.81掲載車両(2020年3月6日発売)
キムコはさまざまな排気量のスクーターを世に送り出している台湾のメーカーだ。その一部が日本市場でも流通している。日本向けU4クラスの主力がこのGディンク。その実力はいかに?
文:横田和彦/写真:南 孝幸
市街地・郊外・高速など幅広いフィールドで活躍!
個性的なデザインを持つスクーターの実力を検証
現在、日本市場には数多くのアジアンブランドが存在し、そのクオリティもさまざま。中には“安いけれどこの作りはちょっと…”と感じてしまうモノもあるのは否めない。だからといって日本メーカーのモノ以外がすべてダメというわけではない。競争が激しいヨーロッパ市場で鍛え上げられた製品を送り出すメーカーも少なくない。
台湾のKYMCO(キムコ)もその一つ。ブランド名を聞いたことがある人は多いかもしれないが、その歴史を知る人はあまり多くないだろう。実はホンダとの関係が深く、技術提携などによりホンダの海外拠点の一つになっていたという経歴がある。品質が高い製品を作り続け、現在はヨーロッパやアメリカのみならず、フィリピンやベトナムなどにグループカンパニーを持ち、東南アジア各国に提携工場まであるほどの大メーカーになっている。
そのキムコがラインナップするG-DINK250iは、同社の世界的ベストセラーモデルの名を継承したビッグスクーター。カラーリングの影響もあってボディサイズは大柄に見えるが、またがってみるとフィット感はいい。ハンドルとシートの位置関係もコンパクトすぎず、大きすぎず。このポジションが絶妙だと思ったのは走り始めたときだ。堅苦しいところがまったくないリラックスできるポジションは、車体をコントロールするときの力が最小限ですむ。そのため混み合った市街地から郊外の街道までストレスなく走ることができるのだ。目線が高めで視界が広いことや、ステップボードがフラットで広く足元の自由度が高いこともメリット。さまざまな面でライダーの気持ちを楽にしてくれる。
水冷・単気筒エンジンはレスポンスがよく、低回転域からスムーズに吹けあがる。雑な感じはなく、トルクも十分に体感できる。なめらかに吹け上がり中回転域でのアクセル操作、たとえば高速道路での追い越しなどのときのスピードの追従も不足ない。これで不満を感じる人はそういないだろう。
加速に対して減速するためのブレーキはどうかというと、レバーをにぎり込むに従ってリニアに速度が落ちていく扱いやすい性格。ギュッとにぎってもABSが働きにくく安定している。
フラットフロアということで車体剛性がどうなのか興味があったが、市街地や高速道路を走った限りだと不安な感じはせず、タンデム走行でも安定していた。フラットフロア=剛性が低いという考えはG-DINK250iには当てはまらないようだ。
ハンドリングは安定志向でニュートラル。ライダーが行きたいと思った方向に素直にノーズが向いていく。バンク中にギャップを通過したときもサスペンションがショックを吸収して車体姿勢がくずれることはない。立ち上がりでアクセルを開けていくと中間トルクがスムーズに後輪に伝わり気持ちよく加速していく。スポーティというほどの印象ではないが、機敏さは十分に感じられる。街中でコミューターとして使うには十分なハンドリングだ。
足の置き場が自由であるとか、ちょっとした荷物を置けるといったメリットが多いフラットフロアだが、気になるシーンもあった。一つは高速道路をハイスピードで走っているとき。車体をカカトなどでホールドできないので不安に感じることがあるのだ。とはいえ実害があるわけではないし慣れの問題でもあるので、必ずしもマイナスというワケではないのだけれど。
同じ理由でコーナーリングのときのフォームも決まりにくかった。寝かし込むときや切り返しなどでは足元でホールドできないので、上半身を積極的に使って荷重移動することになるのだが、慣れるまでは力の入れどころがわかりにくかった。とはいえフラットフロアだからという理由でこのスクーターを選ぶ人も少なくないはず。とても魅力的である点であることは間違いない。
ルックスはスマートな流線型で、アジアンビューティのメイクのようにも見える大胆な赤い差し色が特徴。今となっては大型のヘッドライトがハロゲンというのが古さを感じさせなくもないが、LEDのアイラインがそれを補っている。大きなスクリーンによる整流効果は高く、USBソケット付きのフロントポケットなど装備の実用性も高い。ディテールを細かく見ても安っぽさを感じるところはほとんどない。アジアンスクーターに対して持ちがちな偏見が払拭される作りである。
ひととおり試乗を終えてから、その内容と車両価格を冷静に比較してみた。これだけの走りと装備で44万円である。ひとクラス下の軽二輪スクーターとあまり変わらない。もちろん“安かろう悪かろう”じゃないことは今までの話でわかるはず。これは他社軽二輪スクーターへの脅威といえよう。あらためてG-DINK250iのコストパフォーマンスの高さを実感した。
G-DINK iのディテール
GOOD POINT
G-DINK iのソフト面をチェック
乗車姿勢
足つき性
取りまわし
Uターン
G-DINK iでタンデムランチェック
ベテランツーリングライダー栗栖が斬る!
ツアラーとして魅力的な存在
スポーツツアラーのようなスタイルが印象的で、実際に走行すると、大型ウインドスクリーンが風圧を抑制してくれ、足の置き場の自由度が高いフラットフロアボードが快適なライディングポジションをもたらしてくれる。外観のイメージどおりツーリング性が高く、走りも安定している。エンジンは決してパワフルとはいえないものの、必要十分なパワーを発揮してくれるが、排気音がやや大きめなのが気になった。USBソケットや12Vアクセサリーソケットを備えるほか、LED照明付きシート下ラゲッジスペースもツーリングの利便性を高めてくれる。さらにダンパー付きのシートオープンも上質でいい。
小柄な女性ライダー伊藤が斬る!
ゆったり遠くへ走りたくなる
どっしりと大きな車体からくる最初の印象は“重そうなスクーター”。けれど走り出せば、扱いやすいエンジンで走りを楽しめた。アクセルを開けるほどジワジワとパワーが出てきて、加速にも余裕がある。今回私は走ることがなかったけれど、高速道路でも気持ちのいいスピードで走ることができそうだと感じた。ただ少し気になったことがある。それはスロットルが少し重たいこと。そのために私のように握力がないライダーは、低速のシーンで不意の失速をしないようにスロットル操作に気を配る必要があった。総じてみると、小柄なライダーとしてはツーリングバイクとして候補に挙げたいスクーターだ。
KYMCO G-DINK iのスペック
- 全長×全幅×全高
- 2,115×770×1,360(㎜)
- 軸間距離
- 1,450㎜
- シート高
- 770㎜
- 車両重量
- 182㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークOHC2バルブ単気筒・249㎤
- 最高出力
- 14.6kW(19.9㎰)/7,500rpm
- 最大トルク
- 20.9N・m(2.1kgf・m)/6,500rpm
- 燃料タンク容量
- 9ℓ
- タイヤサイズ
- F=120/70-13・R=140/70-12
- 価格
- 44万円(税込)
CONTACT
- 問い合わせ先
- キムコジャパンお客様相談室
- 電話番号
- 0120-046-165
- URL
- http://www.kymcojp.com/