アンダー400 No.81掲載車両(2020年3月6日発売)
ヤマハは3機種のミドルスクーターを日本国内で販売しているが、その中でもっとも人気が高いのがマジェスティSだ。それはなぜか? 試乗を通じてその理由を探っていこう。
文:谷田貝洋暁/写真:関野 温
下道&高速性能を高次元で両立
ユーティリティを捨てずに高いスポーツ性を実現!
125㏄クラス並のコンパクトな車体で街乗りが楽で、置き場所にも困らない。それでいて“いざ”となれば高速道路にも乗れてしまう、…というのが最近流行りのミドルスクーターの特徴だ。とはいえこれ1台でツーリングから通勤までなんでもやる“メイン”バイクとして選ぶライダーはかなり特殊な方だろう。多くのライダーは、もともと趣味性の高いツーリング用バイクは持っていて、日々の足として追加でスクーターを購入する。そんなセカンドバイクとしての需要がとても大きいのがこのクラスの特徴だ。
各社“セカンドバイク”という隙間をねらっているワケだが、それぞれに趣があっておもしろい。このマジェスティSの場合、実際これらのマシンがどんな使われ方をするか? 乗り手の好みはどんなものか? をかなり研究して作られている。そんな気がした。
乗っていると第一に感じるのは、ヤマハのバイクらしいハンドリングだ。そこから想像できるターゲットイメージは“このマジェスティSを選んでくれるのはバイク乗り。それも趣味性の強いスポーツバイクに乗っているバイク乗り”。彼らが日常でも走りを楽しめるような乗り物を作りたい。スクーターとはいえヤマハの乗り物は楽しくなければいけない。…そんな開発陣の心意気がマシンを通して伝わってくる。
実際、この手のコンパクトなスクーターは、街乗りでの小回り性重視か、高速走行での安定性重視かでどっちかに別れるものだ。当然、今回の試乗でも”こいつはどっちだろう? まぁ、フラットフロアだし利便性重視かな?”なんて乗り味を決めつけながら走り出したのだが、どうしてどうして、なかなか楽しく走るヤツなのである。
街中は、持ち前のコンパクトな車体でキビキビ走れ、加速もスムーズ。…というかむしろ速い。それに交差点や低速コーナーといった、小径ホイール&ショートホイールベースのマシンが苦手とするセクションでも、変な切れ込み感もなく、安定してアクセルを開けていられる。
“ここまで街乗りがいいと高速道路は…”と思ったら、いい意味で裏切られた。ツアラーのような安定感…というのは少しばかりいいすぎだが、ワンデイツーリングくらいなら“今日は近場だしコイツで行ってみるか?”なんて思えてしまうくらいの安定感がある。
このマジェスティSに限った話をすれば、街乗りも高速走行もそつなくこなす、両刀使いのキャラクターってワケだ。この二つの個性をうまく両立させているのは、ちょっと太めの120㎜サイズのフロントタイヤにありそうだが、このコンパクトな車体で、下道も高速も過不足なく走れてしまうことがすごいと思う。
ただ、ここまでならホンダのPCX150も、同社のNMAX155もできることなのだが、このマジェスティSで驚くべきなのは、フロアボードがフルフラットでこの走りってことだ。ここからは僕の勝手な持論になるけど、スクーターに求められる要素の第一義は“利便性”だと思っている。①乗り降りが楽であること。②荷物が積めること。③高速が走れること。…あたりが代表例になるけど、最近は③ばかりの性能が取りざたされて、①と②がお留守になっている。そんな気がしてならないのだ。
確かに高速道路での安定性や、タンデム時の安心感は大切だと思う。ただそのためにスクーターが守るべき①や②をバッサリと切り捨ててしまうはちょっと違うと思うのだ。いったいなんの話かって? バイクの中央で車体前側と後ろ側をつないでいるセンタートンネルの話である。最近のスポーツ性重視のスクーターたちは、車体剛性確保のために、このセンタートンネル部分がやたらと高くなりがちなのだ。これはいってみれば、ママチャリとスポーツ自転車の違いと同じで、なるべく高い位置で前後のフレームをつないだ方が剛性を確保しやすいのだ。
さて、このセンタートンネルが高くなると利便性にどんな影響が出るか? 第一にまたぎにくくなる。スクーターなのに、バイクと同じように後ろから足を回してまたがった方が早かったりして、和装洋装、服装問わず乗れることがスクーターの利点であるハズなのに、ズボンでしか乗れないようでは、スクーターとして本末転倒である。
そこへいくとこのマジェスティS。このステップボードの下には燃料タンクがあるため、足を置く位置が少々高めになるが、それでもまっ平らなフロアがあるおかげで、足を大きく振り上げなくてすむ。ハマる人は、このステップボードだけで購入を決めるだろう。何度も繰り返すようだが、マジェスティSのすごいところは、車体剛性の確保において不利なフラットステップボードなのに、コーナリングも高速道路も走りが楽しいところにあるのだ。
YAMAHA MAJESTY Sのディテール
GOOD POINT
YAMAHA MAJESTY Sでタンデムランチェック
YAMAHA MAJESTY Sのソフト面をチェック
乗車姿勢
足つき性
取りまわし
Uターン
小柄な女性ライダー伊藤が斬る!
マルチな走りが楽しめる
ビッグスクーターブームに湧いた時代を、ライダーとして通過していない私。それでも“マジェスティ”が、ポピュラーな存在で、大きなマシンだったことくらい知っている。今回試乗したマジェスティSは、そんな記憶を裏切る程度にはコンパクトなサイズだった。ハンドル幅も広すぎず、個人的に気に入ったポイントのひとつ。そのおかげですいすいと小回りができる。エンジンは中速域あたりからググッとパワーがやってきて、その加速感がたまらない。俊敏さとスポーティさをあわせ持つスクーター。ただちょっと残念なのは、前方フットレストの角度が急なところ。もう少しゆるやかならばバッチリなのに!
ジャンルを問わず二輪好き淺倉が斬る!
攻めた走りが楽しい元気印!
一番のポイントはエンジンの元気のよさ。スロットルレスポンスも鋭いし、高回転の伸びもある。ミッションのセッティングは、意図的に過激な方向に振ってあるハズ。でなければ、こういうフィーリングにはなりません。この俊敏なレスポンスは、ヤマハ製スポーツバイクの頂点、YZF-R1に通じるかもしれないし、そうでないかもしれない。サスペンションも硬めで、ガシッと荷重を受け止めてくれる。でも、路面状況が悪いと跳ねるので、調子に乗りすぎないように注意しよう。コレは間違いなく、スポーツしたい人のためのスクーター。ミニバイクサーキットに持ち込んでも楽しめそう。
YAMAHA MAJESTY Sのスペック
- 全長×全幅×全高
- 2,030×715×1,115(㎜)
- 軸間距離
- 1,405㎜
- シート高
- 795㎜
- 車両重量
- 145㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒・155㎤
- 最高出力
- 11kW(15㎰)/7,500rpm
- 最大トルク
- 14N・m(1.4kgf・m)/6,000rpm
- 燃料タンク容量
- 7.4ℓ
- タイヤサイズ
- F=120/70-13・R=130/70-13
- 価格
- 37万9,500円(税込)
CONTACT
- 問い合わせ先
- ヤマハ発動機カスタマーコミュニケーションセンター
- 電話番号
- 0120-090-819
- URL
- https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/