アンダー400 No.81掲載車両(2020年3月6日発売)
ミドルスクーターは150㏄前後の排気量が主流だが、スズキは199㏄のバーグマン200を展開し続ける。フルサイズ250㏄、主流の150㏄クラスとの違いはどういった形で現れるのだろうか?
文:伊藤英里/写真:関野 温
思わず使い方を妄想するゆったり走行の楽しさ
便利さが詰まった装備についつい心が傾いていく
バーグマン200のようなミドルスクーターを前にすると、何ともいえない後ろめたい気持ちになる。高速道路を走ることができるし、キャリアやボックスを付けなくても収納できるスペースはあるし、タンデマーにもやさしい。バイク乗りは、何かしらの不便さだったり、挑戦することを好む…、と思う。この背徳感はそういう理由から来るものなのだろうか…。
そんなわけで今回乗ったバーグマン200は、便利さが集約したようなスクーターだと思う。排気量が199㏄のエンジンとあって、車格は大きい。しかし、ステップボードがくびれていたり、シート形状にも傾斜がついていたりして、足つき性は抜群。大きくてもある程度重くても、足がついて踏ん張りがきけば、ミニマムライダーは安心できるというもの。“これなら乗れる”とまたがってすぐに確信した。
ライダーへの細やかな配慮はまだまだある。ハンドル下にある収納スペースは四輪のダッシュボードのようにたっぷりとした容量を持っている。さらにはシート下には41ℓの収納。その広さに、思わず“スーパーでお米を買って、持って帰ってこられるな”とつぶやいた私。だが、残念ながら積載できる最大積載許容量は3㎏とのこと。惜しい…。けれど、これほど余裕のあるスペースならば、仕事道具をたっぷりと詰め込むこともできるし、出先での買い物だって躊躇せずにすむ。まるで、小さな四輪のような利便性の高さだ。
ふと視線を移しみると、メーターが目に入る。アナログとデジタルで構成されたそれは、必要最大限の機能がしっかりと詰まっていた。見ているだけでバイク乗りゴコロをくすぐる、バーグマン200のメーター。そういう、機能性とデザイン性をあわせ持つ部分もある。これでシートヒーターと、グリップヒーターが標準装備されていれば、完璧ではなかろうか。
ところでこのバーグマン200、兄弟車に排気量が約2倍のバーグマン400が存在する。こちらの詳細なインプレッションは別ページにゆずるとして、初代バーグマン200が日本でリリースされたのは2014年のことだが、それ以前から日本で販売されているビッグスクーターは“スカイウェイブ”、海外では“バーグマン”として販売されていた。2014年時点ではまだ日本でスカイウェイブシリーズは現役で販売されていたが、逆輸入の形となったバーグマン200と2本立てに。2017年にスカイウェイブシリーズがフルモデルチェンジを受け、400のみになり、車名もバーグマン400となった。
そうした経緯を持つだけあって、バーグマン200はヨーロッパでよく見られるスタイルになっている。たとえばアップライトで大きな風防は、イタリアの街中では、とても一般的なスタイルだ。バーグマン200は、このクラスのスズキのスクーターにあって日本だけではなく世界へ向けられたモデルだと感じられる。細やかなユーザビリティも、そうした要因が一つにあるのだろうか。
バイク乗りってやつは不便さを愛するんだ、と豪語しつつも、バーグマン200が持つ数々の装備に、すっかり“こりゃ楽ちん”と傾倒してしまった軟派な私。それでは、走りはどうなのだろう。そう思ってグリップを握ると、すっきりと細身であることに気が付く。インプレッション当日はバーグマン400も走らせていたので比較してみると、やはりほんの少しだけ、バーグマン200の方が細いグリップが採用されている。排気量が小さいからか、小柄なライダーが乗ることを想定しているのだろうか。確かに、私のような手が小さく握力のないライダーには、細い方がありがたいのだ。そのグリップを握ってアクセルを開ける。エンジンの感覚は、とてもマイルドだ。低速から中速、高速域までフラットにパワーが出てくる。過剰でもなく、不足もない。大きな車体を不意にぐらつかせることのない、扱いやすいエンジンだ。初めこそ、もう少しリニアな反応がほしいとも思ったが、乗り続けるとこのスクーターにはこの味付けがちょうどいいのだとわかる。高速道路では中速域からの伸びが心地よく、直進でしっかりと安定していた。防風効果も感じられ、100㎞/hほどでものんびり感があった。こんなにゆったりと高速巡行ができるのなら、街乗りや少しの遠出に使うだけではなく、ぐっと本格的なツーリングをしてみてもいいかもしれない。なにしろシート下に収納できるスペースはたっぷりある。積載に頭を悩ませず、1泊ツーリングくらいになら思いつきで行けそうだ。高速道路を走らせながら、妄想が膨らむ。
確かに、ライダーは不便を楽しむ生き物かもしれない。けれど、バーグマン200のような至れり尽くせりのミドルスクーターで、ゆったりと走ってみてもいい。日常で走らせるスクーターとして、趣味のバイクとして。自分なりの楽しみ方で、走ってみたくなる。
SUZUKI BURGMAN200のディテール
GOOD POINT
SUZUKI BURGMAN200のソフト面をチェック
乗車姿勢
足つき性
取りまわし
Uターン
SUZUKI BURGMAN200でタンデムランチェック
ジャンルを問わず二輪好き淺倉が斬る!
中途半端じゃなく丁度いい!!
250㏄より大きいとビッグすぎる、125㏄では足りない。そんなワガママな人にピッタリの1台。ちなみに、自分はワガママなので、非常に気に入りました。ミドルスクーターはスリム&コンパクトな機動性重視のモデルが人気だ。そういった時代の流れに逆らうように、バーグマン200は太めな車体で見た目もラグジュアリー志向。コンセプト的には、ビッグスクーターブームのものに近いか? 125㏄と250㏄の中間というと、アジア向けの150㏄あたりのマシンが多いけれど、このバイクは+50㏄の余裕あるパワーが魅力。トランクが大きいので、荷物の積み込みに気をつかわないところもGood!
前U4編集長谷田貝が斬る!
高速道路は大きい方が快適だ
他のミドルスクーターが150㏄台なのに対し、199㏄というバーグマン200の排気量のアドバンテージは、高速走行おいては加速・最高速となって明らかな差が出る。また車体がこのクラスにあって大柄で安定感がひときわ高いのもポイントだ。確かに街乗りするにはちょっと大きなボディと163㎏の重めのボディは不利なポイントになるかもしれないが、高速道路で緊張せずにアクセルを開けていられる安心感はやはりいい。このクラスで高速道路を使ったツーリングにも出かけるというライダーは、バーグマン200を選ぶと、速くはないが、疲れず淡々と移動できていいだろう。
SUZUKI BURGMAN200のスペック
- 全長×全幅×全高
- 2,055×740×1,355(㎜)
- 軸間距離
- 1,465㎜
- シート高
- 735㎜
- 車両重量
- 163㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒・199㎤
- 最高出力
- 13kW(18㎰)/8,000rpm
- 最大トルク
- 16N・m(1.6kgf・m)/6,000rpm
- 燃料タンク容量
- 10ℓ
- タイヤサイズ
- F=110/90-13・R=130/70-12
- 価格
- 53万3,500円(税込)
CONTACT
- 問い合わせ先
- スズキお客様相談室
- 電話番号
- 0120-402-253
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