SUZUKI SWISH

車両インプレ・解説

SUZUKI, 51㏄〜125㏄

2021年9月19日

アンダー400 No.81掲載車両（2020年3月6日発売）

原付二種クラスは安定性を求めて、ホイールサイズを大径化する傾向にある。そん中でも前後10インチホイールにこだわったスズキは、2018年に新型を市場に投入。それがスウィッシュだ。小径ホイールならではの乗り味とは？

写真・文：栗栖国安／写真：南孝幸

軽快なフットワークで都市部を駆け抜ける！

スタイリッシュなボディと高い機動性が持ち味の1台

数あるスクーターの中でももっとも利便性が高く、実用的でもあるのが原付二種モデルだ。俗に“通勤快足”なんていわれているけれど、まさしくそのとおり。混雑する都市部の移動では向かうところ敵なしだ。スズキでは長らくこのカテゴリーをアドレスシリーズが牽引してきたが、そこへスウィッシュが追加された。これは“より大人のモデル”といった位置づけだと思う。

スタイルはスズキのバイクらしくスポーティさを前面に押し出している。縦型二灯式ヘッドライト採用のマスクデザインもスズキスポーツバイクを彷彿させる。そのため単なるコミューターというよりスポーツスクーターといったほうが当てはまる。だがそれだけじゃない。スポーティな中にもどこかエレガントな雰囲気を感じることができる。これなら、たとえば30～40代の人が乗ってもよく似合う。

乗車してみると、思っていたより足元が広く、大柄なライダーにも窮屈さがない。ボディそのものは軽量でコンパクトなので軽快な走りと高い機動性を発揮してくれるが、乗り心地に関してはゆとりさえあるのだ。メインステージはあくまでも市街地になるのだろうけど、これだけリラックスして乗れるのならツーリングのパートナーにもいいなぁと思える。

エンジンはスズキ独自のSEPエンジンで、リッター50㎞以上走る低燃費はありがたい。強烈なパワーは感じないが、トルク特性はフラットで操作しやすい。四輪の流れをリードする加速性は発揮してくれるので、一般道を走行している限り、パワー不足を感じる場面はほとんどない。仮に郊外の流れの速いバイパスを走ったとしても、十分にそのスピードを維持できる力量を持っている。

ハンドリングに関しては、とにかく軽快だ。しっかりとした直進安定性がありながらも、交差点の右左折では俊敏に向きを変えられる。最近は大径タイヤを装備する原付二種スクーターが主流だけど、このスウィッシュはなんと10インチを採用しているのだ。路肩の段差の影響を受けやすいなどの難点もある小径タイヤだけど、軽快な走りに貢献するのもまた事実。スウィッシュではあえて軽快性重視で10インチタイヤを採用しているのだ。

しかし、変にフラフラした操安性ではない。おそらく前後サスペンションが状況に適した減衰をしているのだ。だからコーナリングに恐怖を感じないし、さらにショートホイールベースということもあって、不必要に深いバンクを強いなくてもしっかり向きが変えられるのだ。

人気のカテゴリーだけにライバルモデルが多いけれど、あえて小径タイヤを採用して軽快さをアピールした点がスウィッシュの特色だ。そして、エレガントさとスポーティさを融合させているのも個性的。わずかながらも価格面でのアドバンテージがあることを踏まえれば、より幅広い年代のライダーに興味を持ってもらえる存在だと思う。

SUZUKI SWISHのディテール

SUZUKI SWISH ヘッドライト — 縦型2灯式ヘッドライトはスズキスポーツバイクのイメージ。上部にあるポジションランプも表情を印象付ける。灯火類はテールランプ、ウインカー含めてすべてLEDだ

SUZUKI SWISH メーター — インパネはフル液晶ディスプレイを装備。スピード・エンジン回転・オド/トリップメーター・残燃料・時刻、さらにオイルチェンジインジケーターが表示される

SUZUKI SWISH ステップボード — ステップスルータイプのフロアボードは足つき性を考慮したカットタイプ。シート下部にはU字ロックが格納できるマウントを装備。そんな装備もうれしいところだ

SUZUKI SWISH インナーカウル — インナーカウルには左から給油口、コンビニフック、シャッター付きイグニッションキー、収納ボックス、そしてUSBソケットを装備。ユーザーの使い勝手を考慮している

SUZUKI SWISH シート下収納スペース — シート下の収納スペースは、フルフェイスヘルメット1個プラスαの容量が確保される。また前方2ヶ所にヘルメットホルダーも装備されているので、実用性は高いといっていい

SUZUKI SWISH シート — タンデムしても十分な余裕がある大型シート。ソロライディングでは大きな自由度を与えてくれる。肉厚でワイドな形状のシートは、快適で疲れにくい。リヤキャリアも標準装備される

SUZUKI SWISH エンジン — フリクションロスを低減し、力強い加速と、高い燃費性能を両立したSEPエンジンを搭載。すぐれた燃焼効率により平成28年国内排出ガス規制に適応させている

SUZUKI SWISH リヤショック — 十分なストローク量が確保されたツインショック。3段階にプリロード調整可能なスプリングはプログレッシブタイプだ。小径ホイールだが、乗り心地のよさに貢献している

GOOD POINT

SUZUKI SWISH フロント足まわり — 一長一短だけど、あえて10インチの小径タイヤとしている点が特徴で、ライバルモデルとの違いを決定づけている。小径タイヤのよさは車体全体をコンパクトに見せて、親近感を抱かせてくれる効果もある。これはコミューターとして魅力的なところだ。軽快なハンドリングにも貢献する

SUZUKI SWISHのソフト面をチェック

乗車姿勢

足つき性

SUZUKI SWISH 足つき — 760㎜のシート高に加えて、ボディがスリムでフロアボードの張り出しも少ないので足つき性はいい。小柄なライダーでも両足のつま先がつけられるし、車重が軽いので、停止時の不安はないはずだ。肉厚のシートは座り心地がよく快適だった

取りまわし

Uターン

SUZUKI SWISHでタンデムランチェック

SUZUKI SWISH タンデム走行 — **ライダー：栗栖**
思ったよりシートが大きいので、パッセンジャーを乗せたときの圧迫感はない。しかし車重が軽くエンジンパワーも限られているため、走行性に与える影響は小さくない。タンデム時はムリな走りをしないほうが無難だ
**タンデマー：伊藤**
座り心地は問題ないのだが、タンデマー側のシートが少し狭い気がした。平均的な体格の人でも、後ろにお尻がはみ出してしまうのでは…。ステップは細身。どちらかというと短時間のタンデムに向いていると感じた

スポーツラン大好き横田が斬る!

スポーティなルックスとスポーツ性が融合

シャープなスピード感あるデザインを持つ原付二種。スズキのアイデンティティである縦二連のLEDヘッドライトを採用しているのも好印象。幅が広めのシートは適度なクッション性があり乗り心地は良好。フットスペースは広く、前方に足を置くスペースの角度もいい。走り出して感じたのは上品な挙動だ。エンジンの振動は少なく、サスペンションの動きも雑さがない。前後とも10インチという小径ホイールだが、しっかりと接地感が伝わってくる。コーナーではクイックさを発揮しスパッとバンクするが安定感はそのまま。単なる移動をスポーツに変えてくれるスクーターだ。