アンダー400 No.83掲載車両(2020年7月6日発売)
土の上でスポーツをとことん楽しみたいなら、モトクロッサーやエンデューロレーサーの購入を視野に入れたいところ。今回はナンバーを取得して公道走行も可能なKTMのエンデュロレーサー“250EXC-Fシックスデイズ”を走らせた。そのパフォーマンスを紹介しよう!
文:濱矢文夫/写真:関野 温
オフロード好きならこの性能はたまらない!
KTM 250EXC-F SIX DAYSのディテールスタイリング
すべての“理由”は走行性能のためにある
公道向けのデュアルパーパスにしか乗ったことがない人なら、最初はパワフルさに面食らってしまうと思う。極低速でただスロットルを急に開けただけでもフロントがひょいっと持ち上がる。さらにぐっとステップを踏み、前後サスを縮めてから伸びる動きのタイミングを使えば、高々とフロントアップさせることも簡単。ああ、その前に、高いシートからスパルタンと感じるか。
KTMのオフロードレースモデルで、排気量をあらわす数字の後に“EXC”と入るとエンデューロレースモデルになる。250㏄エンジンには2ストロークと4ストロークがあり、末尾に“F”がつくのが4ストロークエンジンモデル。オフロードのレースで代表的なのがモトクロスとエンデューロだが、モトクロスは人工のジャンプや連続する凸凹のあるクローズドコースで競うレースで、エンデューロは自然の地形を利用したコースをモトクロスより長い時間走るレース。モトクロスのようなジャンプなどは少ないが、千差万別の自然の中を走り抜ける性能がいる。このジャンルでKTMはずっと戦闘力の高い機種を作ってきた。確かに、デュアルパーパスより攻撃的なパワーがあって、私のように身長170㎝だと片足接地がやっとの高いシートだけど、すべてが全地形を速く楽に走るために作られているのである。だからオフロード好きの一人として乗るたびに思う。これは究極のオフロードバイクであると。
まず車体が軽い。セル始動の水冷4ストロークDOHC単気筒エンジンにスチールのメインフレームで、ガソリンなしで103㎏しかない。同じ排気量の公道用デュアルパーパスのガソリン満タンの車両重量は130~140㎏台。燃料のあるなしを差し引いても圧倒的に軽い。男性なら無理なく後ろを持ち上げることができるほど。だから足つきが悪くても、片足だけでもちょっと届けば支えるのは難しくない。
WP製の前後ショックユニットは、剛性が高く動きがスムーズ。シートが高いのは障害物を乗り越えるときに必要な最低地上高と、走破性のキモとなる豊かなサスペンションストロークを確保した結果だ。この足まわりが、デュアルパーパスモデルとレベルが違う。公道向けモデルだとチャレンジングに感じる荒れ地を、前後の足が吸収して“どこが難所だった?”という感じで何事もなかったように行けてしまう。
飛ばしてもへこたれず、KTMエンデューロモデルの特徴であるリンクレスのリヤサスペンションはグッと踏ん張る。モトクロス用モデルよりソフトだけれど、そこそこのジャンプをしても底付きするようなこともなく、猫のようにしなやかに着地する。軽くて、高性能な足まわりで、剛性がありながら適度なしなりを持たせたスチールフレームというのもあって、角のない乗り心地。これに“レースモデル初体験の人は驚く”と表現したエンジンパワーがある。どんな路面状況でも自由自在感がともなう。それが速さだけでなく、楽しさにつながっている。
エンジンは左手側のスイッチで2段階のパワー特性が選べ、ソフトなモードは水分を多く含んだグリップの低い状況でより確実に前に進みやすい。ライダーの技量によってもレスポンシブルで力強さを感じるモードと使い分けるといい。さらにトラクションコントロールも装備され、これがアクティブな状態で、大げさにスロットルを急開しわざとテールを流そうとしても、最初にズズズッっと滑ったかと思うとすぐに滑りがとまり前に出るからうまく流せなかった。手元のスイッチでトラクションコントロールを切ると、ちゃんとテールハッピーに。効いているけれど、ライダーが違和感を感じるほど介入しないところが好ましい。
このシックスデイズは通常モデルにレースで使える装備をさらに増やした、より“レディ・トゥ・レース”な仕様。ビギナー向きとはいえないけれど、オフロード好きなら、その性能はたまらないだろう。
KTM 250EXC-F SIX DAYSのディテール
GOOD POINT
KAWASAKI Z125PROのソフト面をチェック
乗車姿勢
足つき性
取りまわし
Uターン
前U4編集長谷田貝が斬る
最近のレーサーは懐が広い
コンペティションモデルというだけで十把一絡げに敬遠する人もいるけど、モトクロッサーとエンデューロレーサーはまったくの別物。マラソンや障害物競走のような要素の強いエンデューロ用のマシンは、ギヤもワイドでとにかく乗りやすい。それこそトレールバイクでそこそこダートを走れる技量があれば…。具体的には全開全閉&フルブレーキをスタンディングでできるなら、いきなり乗り替えたってそれほど違和感がないだろう。むしろ、一人乗り設定などによる圧倒的なサスペンションのしなやかさや軽さに“コイツとならどこでもいける!”と羽根が生えたような気分になるに違いない。
スポーツラン大好き横田が斬る
ライダーの技術不足をカバー
まだオフロードバイクに乗り慣れていないころ、あるオフロードイベントに参加してKTMのバイクを借りることになった。“オフは不慣れなのでそんな高性能なバイクじゃなくていい”と遠慮すると「だからこそ高性能なバイクに乗ってください」といわれた。恐る恐る走り始めると“自分の腕じゃムリだろ…”という場所を見事にクリアしてくれる。そこで高性能なバイクはテクニックをカバーし、新しい世界に連れて行ってくれることを知ったのだ。どこを走ってもまったく破綻しない250EXC-Fに乗っていると『悪いことは言わない、上達したいならオレに乗っておけ』。そんな声が聞こえたような気がした。
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