アンダー400 No.87掲載車両(2021年3月5日発売)
フランスのプジョーといえば“四輪”というイメージを持つ人が多いだろうが、さまざまなスクーターを手がけているメーカーだ。原付二種クラスを中心のその一部が日本でも流通している。その中のスピードファイトに試乗! その性能を紹介する。
文:横田和彦/写真:関野 温
モータースポーツイメージ満載のスポーツスクーター
躍動的なルックスどおりその走りもスポーティ!
自動車メーカーとしてなじみがあるプジョーに二輪部門のプジョーモトシクルがあることは日本ではあまり知られていない。その歴史は古く、初の二輪車を発表したのは実に123年前のこと。歴史が長いといわれているハーレーダビッドソンよりも古く、現存するバイクメーカーとしては世界最古。もちろんヨーロッパでは超有名で、一般的な二輪スクーターのほか、三輪や電動など、スタイリッシュで意欲的なモデルを数多くリリースしている。
現在、日本ではアイディアが総代理店となり輸入販売、アフターサービスなどを担っていて、東京都の赤坂ショールームをはじめ、各地にディーラーが増え始めている。今後、注目したいブランドの一つといえよう。
今回試乗するスピードファイト125Rカップは、スポーツスクーターとして1997年にデビューし、話題となったスピードファイトシリーズの第4世代にあたる。同シリーズは世界では累計50万台以上売れているという人気車種だ。歴代モデルのスポーツ感あふれる個性的なスタイルを見ると、注目されるのにも納得する。最新モデルも同様で、プロジェクターヘッドライトをダブルで備えたフロントフェイスやエアダクト風のディテールがほどこされたサイドカウル&テールカウル、シート後方に取り付けられた小型のウイングなど、レーシングイメージを盛り上げる装備が数多くある。
ヘッドライトのまわりを赤で縁取った、まるで歌舞伎役者の隈取のような斬新なカラーリングはRカップモデルの特徴。これは四輪のツーリングカー選手権に参戦しているプジョーのレーシングマシン、308TCRのレプリカカラーなのだ。つまりスタイルのみならずグラフィックまでモータースポーツしている特別なモデルということ。
またがってみるとコンパクトさが際立つ。小ぶりなメーターの下にスマートフォンホルダーが標準装備されているのが目に入ってくる。セルボタンを押し、エンジンを始動しアクセルを開けてスタート。低回転域でのトルクフィールは力強さよりもなめらかさを感じるもの。回転を上げていくとエンジンからの振動は減っていき、中回転域にさしかかったあたりからグーンと伸びていく。なかなかスポーティな加速フィーリングだ。アクセルを開けるのが楽しくなってくる。
コーナリング時の動きは非常にクイック。軽量な車体や足まわりの設定、短いホイールベースなどが関係していると考えられる。ねらったところでスパッとバンクさせてコーナリングスピードをキープしながらスムーズに立ち上がっていく。そんなスポーツライディング感に満ちた一連の動きが常用速度域で味わえるのだから、市街地で乗っていて楽しくない訳がない。
また挙動が軽いからといって不安定なわけではない。直進安定性も備わっているので、幹線道路を一気に駆け抜けるときも安心だ。前後13インチというホイールサイズが運動性と安定性を両立させるのに役立っているのだ。
スポーティなルックスなので“走り命”のスポーツ重視モデルかと思いきや、スマートフォンホルダーが標準装備されていて、シート下に電源があったり、ウイングがグラブバーとして機能するなど実用性も十分に考慮されていて、シティコミューターとしての実力もある。毎日の生活の中でモータースポーツを感じられるスクーターに乗りたい。そんな人はもちろん、通勤通学でちょっとした“刺激”がほしいという人にも注目してもらいたいスクーターである。
PEUGEOT SPEEDFIGHT125 R-CUPのディテール
GOOD POINT
PEUGEOT SPEEDFIGHT125 R-CUPのソフト面をチェック
※センタースタンドに関しては女性ライダーを代表して“加藤”が担当。それ以外の項目は、メインライダーの横田が執筆している
乗車姿勢
足つき性
センタースタンド
取りまわし
Uターン
PEUGEOT SPEEDFIGHT125 R-CUPのタンデムランチェック
技術的には平均点・U4編集長吉田が斬る
利便性は低いがそれを十分カバーする走りの楽しさ
スクーターというと利便性を重視する傾向が強いだろう。もちろんそれが主流なのはわかる。が、スピードファイト125に乗るとスクーターでスポーツ走行を楽しむのもありだと思ってしまう。絶対的なスピードは排気量なりだが、今回乗った原付二種クラスのスクーターのなかで、もっとも軽快なコーナリングを楽しめた。前後13インチホイールやちょっと腰高なライディングポジションが功を奏しているのだろう。サイドスタンドがなくても、シート下のラゲッジスペースの容量が少なくとも、フロントにグローブボックスがなくても、その走りの楽しさがカバーしてくれる。
PEUGEOT SPEEDFIGHT125 R-CUPのスペック
- 全長×全幅×全高
- 1,895×700×1,150(㎜)
- 軸間距離
- 1,296㎜
- シート高
- 800㎜
- 乾燥重量
- 116㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークOHC2バルブ単気筒・125㎤
- 最高出力
- 8.1kW(11㎰)/7,400rpm
- 最大トルク
- 10.8N・m(1.1kgf・m)/5,600rpm
- 燃料タンク容量
- 8ℓ
- タイヤサイズ
- F=130/60-13・R=130/60-13
- 価格
- 36万7,400円(税込)
PEUGEOT SPEEDFIGHT125 R-CUP 製品ページ
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