暗闇体験は人に何をもたらすのか?

ちょっと前に計画停電が実施された瞬間の動画を見たのだが、あれはなかなかショッキングなものであった。普段明かりのある生活が当たり前だと思っている人間にとって、突然明かりを奪われることの衝撃は想像に難くないが、現に動画中でも悲鳴に似た声が各所から聞こえ、「夜ってホントに真っ暗なんだな」とアホみたいに当たり前のことを考えてしまった次第である。

ではなぜ突然視界がなくなると恐怖を感じるのかと言えば、それは身の安全の確保ができないと思うからに他ならない。人は外界の情報のうち、8割から9割くらいを視覚から得ていると聞くが、それを突然絶たれるのだから無理はない。僕らが安心して前に向かって歩けるのは、歩む方向に危険がないと分かっているからであり、目をつむって歩いたら、ほんの数歩進んだだけで恐怖を感じるはずである。

だがしかし、そういった人間が恐怖する暗闇を、逆に楽しむイベントもあるそうである。そのイベントはグループで暗闇の中を散策したり、食事をしたりするイベントなのだそうだが、参加者の体験談を聞くと「参加して良かった」といった、肯定的な意見がわりと多いから不思議である。

もともと人間の本能として、失われた感覚があれば、その他の感覚をフル稼働させて、その失われた感覚を補おうとする能力があるらしい。例えば、前が見えないまま一歩を踏み出したとするならば、足が着地した瞬間の音や手応え、素足であれば温度、感触、また前方から漂ってくる空気の匂いや、風向きなどなど、あらゆる感覚を駆使して、何とか自分のまわりの情報を得て、身を守ろうとする。当然何かにふれれば、自分の身に危険があるかもしれないと警戒するし、何も感じなければ、進んでも安全と判断する。そんな状況が続くと、不思議と五感が研ぎ澄まされていくそうで、普段の生活では体験できない感覚になるのだそうである。

普段、脳は何気なく接している情報のうち、本当に必要なものかどうか選別しながら、記憶をインプットしているそうである。でないと膨大な情報量を処理しきれないからであるが、視覚に頼った処理ばかりをしていると、その他の感覚がどんどん鈍っていってしまう。そういったことをあらためて思い起こすキッカケとして、先のイベントのような不自由な体験をするのは有効だし、大切なものは失われたときに初めて気が付くというもの。だからあえて無くした状態にしてみる、っていうのも案外いろんなことに共通することなのかもね。

C.ARAi

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C.ARAi

Web制作班所属。何事にもしっかりしていたい気持ちはあるものの、やってることはかなり中途半端。基本的に運命にはあまり逆らわず生きていくタイプで、いきあたりばったりが自分にはよく合っていると思っている。悪く言えば計画能力ゼロ。モットーは「来るもの拒まず、去るもの追わず」。

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