「冷やかしでもいいと思う」

姉妹紙「風まかせ」の取材で、宮城県と福島県県境あたりの山岳地帯にいってきた(7月6日発売号に掲載します)。道中、宿のご主人、通りすがりのおじちゃん、タケノコ農家のオーナーに、定食屋のおばちゃん。いろいろな人に声をかけたし、逆にいつにも増して声をかけられた。

話題になるのはやっぱり震災の話である。どの方も、直接地震や津波で建物を失ったりしたワケではないのだが、今年の来客の少なさは、本当に恐怖だという。
「ちょっと前までは、被災地の工事関係者の方たちがいたんですが、落ち着いて来てしまって、今はちょっと…。地震はなんとか乗り越えたのに、それ以上の脅威になってます」と、客足の少なさに言葉を詰まらせる鎌先温泉・最上屋旅館のご主人。バイク乗りであることもあり、話が盛り上がったのだが、やはり震災の話となるとトーンが下がる。8月まで震災応援キャンペーンとして、1万円以上の宿泊費を6,000円台まで割り引いて営業しているが、それでも客足は増えないという。

また、白石の武家屋敷あたりで「おっ、撮影だね。じゃんじゃん(取材)やって安全だってことをアピールして、じゃんじゃんお客さん呼んでよ!」」と声をかけてきた男性は、
「東京のために原発を引き受けたのに、こうなると一斉にお客さんが来なくなっちまうんだもんなぁ。だから、僕はクルマの後にメッセージ書いて貼ってるの。そんで、東京ナンバーのクルマを見付けると、わざと前に入ってじっくり読んでもらうんだよ」とつとめて明るくふるまう。

こんな声も聞いた。
「うちはタケノコを売って商売しているワケだけど、今年の春は異常にお客さんが多かった。聞いたら被災地の方が多いのね。震災の影響で市場にタケノコがまったく出回らなかったらしいんだけど、やっぱり日本人だからだろうね、春に一度はタケノコが食べたくなるんだって。おかげで休むヒマも無かった」。“やしまや”という屋号のタケノコ農家の方だが、今年のタケノコ最盛期は“被災地の人たちの分も働いて稼いで、税金収めて復興をささえないと…”と、本当にがむしゃらに働いたという。

またこうも話す。「確かに津波の被害は大変だけど、それでみんながトーンダウンしてたんじゃ、この宮城はもちろん、日本がどんどんダメになってしまうと思うんだよ。被災地に行くのにボランティアという大義名分を用意する必要はないと思うんだよ。被災地見学の冷やかしでもいいから東北に来て、お金を落としてほしいっていうのが、僕らの本音。でも、この被災地の現状を見て、“こんなことが同じ日本で起きたんだ”ということを自分の目で見ておくのも、絶対に悪いことではないと思うよ」

僕自身、津波に原発と、いろいろな問題を抱えた東北をバイク雑誌という媒体でどう扱っていいのか非常に迷っていた。そんななかで手探りしながら取材を仕込んだワケだけど、行って、数少ないながらも東北の人たちと話をしてみて思ったのは、とにかく僕らライダーは東北に行った方がいいということだ。もちろん被災地へのボランティアでも観光でもいい。直接被害のあった地域へ行くのがはばかられるというなら山間部への観光でもいいだろう。とにかく東北に行って、給油でも食事でも、なんでもいいから地元にお金を落とす。それこそ義援金のつもりでいつもよりちょっと多めにおみやげを買ったっていいかもしれない。とにかく東北の人たちは僕らが来るのを待っているのだ。

そうそう、高速道路のETCの休日割引が終わるのは今月19日。高速料金的な行きやすさを考えるなら、あと1週間ちょいがねらい目だろう。いまこそバイク、ライダーのフットワークのよさを活かすときなんじゃなかろうか。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

コメント 1件

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    by シモヤンブルース2011/6/26 11:12

    地元にお金を落とす。納得です。そう思います。心の中の考えを字に出来ない無知な私ですが、やたぐわさんの言うとうりだと思います。
    そうだ、行こう。 

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