編集部のある浜松町界隈は、サラリーマンの町ということもあり、「おそば屋さん」がたくさんあります。立ち食いのお店もありますし、江戸時代から続く伝統のお店もあります。そんな中で、ボクが最近よく行っているのが「十割そば」のノボリがはためくお店。店舗の規模としては、いわゆる立ち食いそばに似たような感じなのですが…。
普通ね、立ち食いそばというと最初から「ゆで麺」がスタンバっているものじゃないですか。注文が入ると、小さなザルにゆで麺を入れて、ササッと揺すったらお湯を切って。つゆをかければハイ、完成。そりゃね、生麺からゆでた方がおいしいのは知ってますけど、立ち食いそばはスピードが命なのだし、「ゆで麺を温めるだけ」という方式なのはしょうがないと思っていたのですが…。最近は、生麺からゆでてくれるお店があるんですよ。これが意外と本格的な味で「都心でこんなそばが食べられれば、十分すごいと言っていいんじゃないのかなぁ…」と思ってしまいます。
しかも、このお店にはとてもおもしろいポイントがあるんです。なんとね、麺を「スパゲッティ方式」で作っているのです! いやいやこれ、冗談じゃなくて本当の話。
注文が入ると店員さんは、そば粉をこねた大きな団子を取り出します。
そして、鍋の上に設置してあるマシーンに団子を入れて、スイッチを押すわけです。…すると! トコロテンのような要領で「ニュル〜ッ」と、そばが絞り出されてくるのです!! 切るのではなく絞り出すことで、麺の形状にしているというわけですね。出てきた麺はそのままお湯の中に投入され、しばしゆでられた後、水洗いされて、ざるに盛られ…。もりそばの完成!
「そんなの邪道だろ! うまいワケがない!」と思うでしょ? いやいや、コレが意外と…ねぇ(笑)。たぶん、作るところを見てなければ「絞り出して麺にしてる」なんて誰も気付かないと思います。麺の断面にはしっかりと角があるし、見た目では絶対にわからない。味だって、ゆで麺を温めるだけのそばに比べたら、そりゃコッチの方断然おいしい。「お…おう…。意外にうまいじゃんか…」という感じなのですよ。もちろんね、「本格的なそば屋で熟練の職人が打ったそばよりもうまい」とは言いませんけど、立ち食いそばに限りなく近い店舗ですから。値段を考えれば(もりそば280円)、全然満足できる味です。
そばという料理を作る過程において「平たく延ばして切る」という行程は必須だと思ってましたが、絞り出し方式でも案外大丈夫なのだということを知り、大きなカルチャーショック。すべてのそばを「絞り出し方式にしろ」とは言いませんが、立ち食い系ならばコレもアリじゃないでしょうか。