いよいよ今年も、蚊に悩まされる季節がやって来ました。東京で暮らすようになってから刺される回数は減りましたが、それでもやっぱり刺されるし、ボクは蚊が大嫌いです(まぁ好きな人はいないでしょうけど)。あの、夜中に耳元で「プゥゥゥン」と来る音! そしてかゆみ! ゴキブリとともに、人間に生理的嫌悪を感じさせる生き物ではないかと思います。「地球上にいる生物はみんな生態系の一部」「人類が“万物の霊長”だなんていうのは思い上がり。すべての生き物は重要な役割を持っている」…とかいう立派なお題目はわかるんですけど、刺されたときの心情としては「この下等生物めらぁぁぁ!」と思ってしまいます(笑)。
かつて、ふとギモンに思ったことがありました。学生のころ、部の合宿所というのが蚊が多いところだったのですが、外にいると蚊がワンサと寄ってくるわけです。パシパシと次から次へと殺しまくっても、なお次から次へと寄ってくる。具体的にどのくらいの数を叩き殺したかなんて勘定してませんが(すごい表現だな)、まぁ少なく見積もって2分に1匹くらいは抹殺するくらいの勢いだったと思います。いくら退治しても一向に減る気配がなく、毎日毎日バシバシと殺していました。…で、そんな日々のなかで思ったのですよ。「蚊というのは、はたして根絶することができるのだろうか?」「蚊の総量というのはどのくらいいるのだろうか…?」と。
日本には「2分に1匹」くらいで蚊を退治できるヤブはいくらでもあると思いますが、もし本当に「2分に1匹」ペースで殺せるとしたら。1時間で30匹は駆除できる計算になります。となると、10時間で300匹。24時間で720匹にもなります。まぁそれではあまりにも単純計算すぎるので、こう仮定しましょうか。夕方の蚊の多い時間に、2時間ほどヤブに行って蚊退治をするとします。となると、1日に60匹は殺すことができる。これを60日間継続すると、3,600匹もの蚊を退治できる計算になるわけです。3,600匹ですよ、3,600匹。でね、この作業を2人でやったとしたら、7,200匹。3人でやったら1万800匹にもなるわけです。これでもなお、そのヤブには蚊が出続けるんでしょうか? …なんか、出続けるような気がしてなりません。いくら1日に60〜180匹ペースで蚊を葬り去ろうとも、おそらく全体の総量からいえばごく一部なのでしょう。それに取り逃がしが1匹でもいれば、そいつが膨大な数の卵を産んで再び羽化するわけですから…。
そんな想像をしていると、そのヤブごと焼き払いたいような衝動に駆られます。もしくは蚊取り線香を1万本くらい配置し、その上から巨大カプセルを被せて完全密閉したくなるような、そんな衝動。「21世紀という時代にもなってなお、人類の蚊退治は蚊取り線香だとか“叩き殺す”だとか、そんな手段しかないのか!? あの下等生物どもに対して、人類が目にモノ見せてやることはできないのか!?」と、歯がみする思いです。なんかね〜、圧倒したいワケですよアイツらを。ペチペチペチペチと1匹ずつ退治するんじゃなく、強大なパワー感をもって圧倒したい(笑)。「有史以来、よくも人類を悩ませ続けてくれたな。かゆみをあたえ安眠を妨害し、あげくのはてに伝染病まで媒介し…。しかし、そんな時代ももう終わりだ。キサマらが『他の生物の血液をかすめ取る』という卑劣な方法で生存し続ける間、人類は絶え間ない努力で進歩を続けた。とくと味わうがいい、これが人類の力だ! 卑劣なキサマらには永遠に手に入らない、人類の叡知だ!!」…という、決めゼリフとともに圧倒したい(笑)。
いっつも、刺されるたびにこんなことを考えたりします。ただいまタンスタの姉妹誌『レディスバイク』の〆切ウィークなのですが、暑いから窓を開けてるわけですよね。どこからか蚊が浸入してきたようで、編集部で仮眠してたら足をボッコボコに刺されまくりました。かゆさで目が覚めました。そして今、憎しみをもってこのコラムを書いていたりします。ギィィィ、グヤジイ…。