夏の夜の未知との遭遇

お盆が過ぎたとはいえ、まだまだライダーにとっては快適とはいえない日々が続いているが、大汗をかきながら、アツアツに熱せられた空気のなかを走ることも、もしかしたらバイクに乗るひとつの醍醐味かもしれない─。そんなことを思いつつ、昔の夏の記憶をたどってみると、ふと思い出したのが、若かりしころにバイクでソロキャンプに行ったときのことであった。

ある日の夕方、自分はその日の寝床へと向かっていたのだが、アテにしていたキャンプ場がなかなか見つからなくてけっこう焦っていた。結局自力では探し出せず、偶然山中で出会った地元の人に相談したところ、場所自体はすぐに分かったのだが、ついでに懸念点として教えてくれたのが、その環境についてだった。

まずひとつ目は夜中になると、街路灯の類が一切ないので、正真正銘の真っ暗闇になること。そしてふたつ目は暴○族が頻繁に訪れる場所が近いので、運が悪いと標的にされ、それはもうひどい目にあうとのことであった。その人の話によれば、以前あるライダーが標的にされて、バイクごと川に投げられたことがあったのだという。

その話を聞いてボクは震え上がった次第だが、日が暮れかかっていたのと、もうその時点で探し疲れていたので、やむを得ずそのキャンプ場で一晩明かすことにしたわけである。真っ暗闇になるのは、まぁキャンプだし明かりがあるので特別気にすることはなかったのだが、問題は明かりをつけていたら、すぐにヤツらに発見され、標的になってしまうのではないかということである。なのでバイクは可能な限り人目につかない場所に駐車して、テントも物陰に隠して設営したつもりだったが、やはり明かりをつけてしまうと、誰かいることは容易に分かってしまう環境だった。

そうこう悩んでいると、案の定遠くの方から、それらしい爆音が近づいてきたので、慌てて明かりを消し、可能な限り息を潜めていたわけだが、その数が半端ではなかった。一度近づくと爆音が途切れなく続き、しかも通るのは一度ではない。その間中、明かりをつけることができず、真っ暗闇のなか、眠ることはおろか逃げることもできず、ただただ耐えるしかない夜を過ごしたのであった。

結局いつの間にか眠ってしまい、気付いたら朝方になっていたのだが、今考えれば、無理にその場所でキャンプをせずに、多少遅くなっても別の場所にすればよかったと思うわけだが、とにかくあの夜の何とも言えぬ不安感は、今でも忘れられない思い出となっている。

まぁこういったハプニングは後から考えればいい思い出にはなるのだが、やはり地元の人の言うことには素直に従った方が身のためである。だいたいバイクごと川に投げられるなんてどんな仕打ちだよと思ったわけだが、被害に遭われた方は果たして無事だったのかどうかは知るよしもない。

まだまだこれから旅に出るライダーも多いと思うが、世の中には不思議なことが数多くあるので、くれぐれも油断は禁物です。無事家に帰るまでがツーリングですので…。

C.ARAi

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C.ARAi

Web制作班所属。何事にもしっかりしていたい気持ちはあるものの、やってることはかなり中途半端。基本的に運命にはあまり逆らわず生きていくタイプで、いきあたりばったりが自分にはよく合っていると思っている。悪く言えば計画能力ゼロ。モットーは「来るもの拒まず、去るもの追わず」。

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