25時間耐久サバイバルで小笠原の海へ

注意:お食事中の方は読まないで下さい

超大型冬休みに一計をくわだてて小笠原へ行ってきた。ええ、乗ったら最後、片道25時間という地獄の船旅をしてきたんです。いやぁ、さすがに長かった、何度かメシを食って、2度寝して、シャワーを3回浴びても着かないのである。しかもね、季節がらだということだがけっこう船が揺れるのだ。

とはいえ僕もね、“渡難(わたりがたし)”と書いて“どなん島”と呼ばれるほど海が荒れる与那国島で船酔い修行(なんのこっちゃ?)はイヤというほど積んできた身。その石垣〜与那国航路は、4時間と時間は短いものの日本一揺れるフェリーなんていわれるぐらいで、ひどいときは窓の外が海中に沈んで水族館的な景色になるのはもちろん、個室のカーテンが横揺れで45°以上にフワッと浮き上がり、船首が波を切ったり、波底を打つ拍子に荷物が跳ねて転がり出すなんていう尋常じゃない揺れ方をする。転がらないように必死に地面にへばりつく体勢から意を決し、口を押さえてトイレに向かおうにも揺れがひどくてたどり着けず、志し半ばで轟沈したゾンビたちがトイレのまわりに群がるという、最悪の航路である。まぁ、僕も幾度となくゾンビ化したことで、フェリーでも小型船でも大抵の波では動じない強靭な三半規管を手に入れたわけだが、さすがに25時間もの耐久戦ともなると、ひと波ひと波がじわりじわりとボディブローのように利いてくることを知った。

最初は「けっこう揺れる方なんじゃないの?」なんていいながら、スマホを片手にシュッシュッってなもんで読書をする余裕もあったが、外洋へ出るとさすがにそうも言ってられなくなった(笑)。しまった!と思ったときにはずーんと頭の奥の方が重くなり始めている。スマホを投げ出し、船中散歩に出かけてみると、廊下を歩けないことはないが、できれば壁に手を当てたいぐらいの揺れ具合。案の定、濁った目をした男女がトイレのまわりでゾンビ化している。

見なきゃいいのに、それを見た瞬間、いや…かいだ瞬間。口の中が酸っぱくなる。久しぶりだね、あの感覚は…。ヤバイと退散し、シャワーを浴びてリフレッシュ。こんなところで酔ったとあっちゃぁ、元与那国町民の名がすたるってもんだ。死んでも酔い止め薬なんかにゃ頼らねぇ! 出航から12時間。闘いはようやく半分を消化しようというところ、気合いで自己暗示をかけてメンツを守る僕だった…。

 

ところで、肝心の小笠原だけど…、“それだけの苦労をしても行く価値が十分あるし、もう一度行きたいと思ってしまうような海だった”とだけ書いておこう。今度はぜひ夏に行きたいな!

25時間の苦行の先には、こんな海が待っているのである。しかも交通手段が船しかないので、観光客は“船の定員”以上はいない。GWだろうと正月だろうとゆったりできるのだ
名物のお見送り。船が東京へ向けて出航する際には、島の観光従事者が総出でお見送り。しばらく並走したあとに、スタッフたちが次々に海へとダイブ!

 

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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