“型なし”と“型破り”

昨年末の故中村勘三郎さんに続いて、市川團十郎さんまでもが逝ってしまった。テレビや週刊誌で騒がれているからみなさんご存知だと思うが、このおふたりは、超というか、大御所というか、その生き方やスタイルは違えど日本の歌舞伎界を背負ってたっていた歌舞伎役者さんだ。

僕自身、歌舞伎は年に一度観るか観ないかで、大の歌舞伎ファンというワケではないのだが、その僕にしたってこの突然過ぎるふたりの損失が与える影響の大きさはわかる。團十郎さんは一昨年、勘三郎さん去年の春に公演を観に行ったが、その迫力は素人の僕にもしっかりと伝わってくるほど力強い演技だった。

いつだか、勘三郎さんの言葉で。こんな話を誰かに聞いたか、読んだ記憶がある。「きちんと型ができてそれを壊せるから“型破り”。それもないのに滅茶苦茶するのは単なる“形なし”」だと。海外公演に平成中村座の立ち上げなど、おかたいイメージの歌舞伎をなんとかいろんな人に広く見ていただきたいと、つねに新しいことにチャレンジしていることについてのインタビューかなにかだったと思うが、その言葉を地でいく人生に、なるほどさすがと感銘を受けたものだ。一方、團十郎さんは、名門・成田屋。代々伝わる“にらみ”は、豆粒ぐらいにしか見えないような遠く席に座っていても、ギンギンとその目力が伝わってきたことに度肝を抜かした。

世の中から、カッコいい大人がまた一人いなくなってしまった。景気づけに4月の新・歌舞伎座の“こけら落とし”でも観に行くか。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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