先日20年ぶりぐらいに釣りに行ってきたのだが、出かける前に当時使っていた古い道具を引っ張り出してみたところ、見たとたんに昔の記憶がよみがえってきた。古い記憶は、普段決して思い出すことはないにも関わらず、こんなふとしたキッカケで、よみがえってくるから不思議である。
そもそも人の記憶というのは、大きく分けて2つに分類されるんだそうである。それが短期記憶と長期記憶であり、短期記憶はとりあえず必要なものを一時的に覚えるための記憶で、すぐに忘れてしまうことが特徴である。しかしながら、その中で重要だと思った記憶は海馬という組織に最大で1ヵ月ぐらい保存され利用することができるのだそうで、さらにその中でも重要と判断されたものだけが、側頭葉と呼ばれる部分に長期記憶として格納され、ちょっとやそっとじゃ忘れない記憶になるのだそうである。
ではその長期記憶に記憶を格納するためにはどうしたらいいかというと、反復して記憶を利用したり、視覚だけでなく、別の感覚を同時に利用したりすることが有効なんだとか。そのためよく聞く勉強法で「文字を書きながら覚える」というのは、そういう意味で理にかなっている方法であり、また印象的な行動の記憶が長く保持されやすいというのも納得のいく話ではないかと思う。
で、釣り道具を見て思い出したのは、やっぱりいい思い出と悪い思い出であり、例えば「このルアーで何を釣った」とか、「買ったばかりの道具を無くして箱だけ残ってる」とかそんなような内容ばかりである。やっぱり昔の記憶というのはそんな極端な記憶が優先して保存されるようで、数え切れないほど釣りに行ったにも関わらず、覚えているのはほんのわずかしかない。そう考えると、今こうして生活していくなかで記録されている記憶も、1ヵ月も経たないうちに忘れ去られる運命かと思うとなかなか切ない話である。
久しぶりにやった釣りでは、ラインの結び方から、ルアーの投げ方まで、ほとんどのことを忘れていたのだが、いざ調べながらやってみると、みるみる感覚を取り戻すことが出来たから不思議である。でも残念ながら釣果はゼロ。まぁ釣りのウデは昔からたいしてうまくはなかったのだが、せっかくなのでしばらく通い続けてみようかと思っている今日このごろである。