先日、甲州街道をブラブラ走っていたら、笹子トンネルのあたりで「矢立ての杉」という看板を目にし、せっかくだからちょっと寄ってみるかなと看板の指す道を進んだ。いつ落石があってもおかしくないような細い道をどんどん進むとまもなくして到着。以前地方で、やはり同じように杉の大木を目指して進んだことがある。道の所々に大きな落石がゴロゴロ横たわっているところをがんばって進んだものの、あげくに雪解け前で冬の登山装備のようなものがなければとても進めないような崖の上に立て看板の矢印が向いていて、これはさすがに無理だとあきらめてUターンした。それに比べれば、ここは道の途中にのぼりも設置されていて比較的親切である。少し歩いた先に大きな巨木がひっそりと立っていた。明らかに周囲の杉より大きな幹は、荘厳な雰囲気を漂わせていた。驚いたのは、観光案内の人が立っていたことだ。失礼ながらそれほど観光客が訪れるような感じではない。杉にいたずらなどされないよう見守っているのかな、と思っていると、その案内人のおじさんが「こんにちは」これ持って行ってと、にこやかにパンフレットを渡してくれた。「あっ、どうも」と受け取ると、すぐにおじさんは横のなにやらボタンを押した。すると音声ガイドがはじまった。おおっ、と少し驚き、そのガイドを聞きながら杉の大木に近づいた。幹の中は空洞になっていて、入れないようになっている。樹齢千年かぁ…千年もここに立っているんだなぁ。今はひっそりとしているその場所に、かつては武士や旅人が訪れていたのかなぁと想像していると、案内のおじさんが話しかけてきた。「昔はこの中でたき火なんかしてたんだけどね〜」今はガイドをしていても、ほとんど人は来ないし、もうやめちゃおうかなぁとぼやいていた。でもそう言いながらもこうやって観光案内しに通って来ているのだから、きっとこの地が好きなんだろうなと思った。帰り際に「帰りはライトをつけて帰るといいよ、僕はいつもそうしているんだ」とニコニコと見送ってくれた案内人のおじさん。なんだか矢立ての杉に教えてもらったみたいだな、なんて妙な錯覚をしながら、その場を後にした。あ〜、もっと気のきいた質問でもたくさんすればよかったかな(笑)。