東京は世田谷の砧公園(きぬたこうえん)にある世田谷美術館で、現在-デザインが導く未来 榮久庵憲司とGKの世界-『鳳が翔く』を開催中だ。
GKとは、ご察しのとおり、ヤマハのオートバイ(スクーターを除く)のデザインを一手に行なっているGKデザインのこと。正確にはたくさんあるGKの部門のうちオートバイなどの動態インダストリアルデザインを行なっているのはGKダイナミックスだが、今回の展示はGKグループまるごとの企画展となっている。
企画では、美術大学のゼミがヤマハからピアノのデザインを頼まれたことから始まった、GKデザインの生い立ちや50年以上にもおよぶ歴史のなかで生み出された作品群、創立メンバーであり、現在のGKデザインを率いる榮久庵憲司氏の世界感を中心に展示。代表例をあげればキッコーマンの醤油さしはもちろん、コマツのユンボ、JRAのマークなど、「これGKだったんだ!」なんて思う物も沢山あって飽きないわけだが、僕らはやはりバイク乗り。オートバイの扱いが気になるところだが行ってみて驚いた。世田谷美術館のメインのエントランス(チケットを売っているところね)にはいきなり、VMAXの金型がドドンと鎮座。こいつは2代目VMAXの登場前にモーターショーで展示されていたヤツだが、本展示もVMAXの実車で始まるというバイク乗りにはうれしい演出だ。
内部の展示に関しても、工業製品にはなってはいないが、その独創的な感性で作り上げたコンセプトモデルたちも多数展示。代表的なのはリーンして曲がる4輪風のテッセラクトやヘビーデューティ仕様のXTW250陵駆、XS-V1 Sakuraなどだが、GKデザインのなかで、いかにオートバイの部門が重要であるかが感じ取れる。しかも、そのひとつひとつのディスプレイも遊び心あふれているのが心憎い。ヤマハとしてのモーターショー展示では決して語ることができなかったXTW250陵駆の「被災地救援仕様」という根幹コンセプトや、テッセラクトを台上で自然にリーンさせるために開発した(?)ギミックなどなど、見ていると、なぜだかGKダイナミックスの社長である一条厚さんの「これ、こだわったんですよ〜」という笑顔がうかんでくるものばかりで飽きない。ヤマハのオートバイここにありという雰囲気だ。
この企画展、9月1日までなので、興味のある人はぜひ! 美術館というオートバイとは一番関係なさそうな空間にバイクが当たり前のように置いてあるという不思議な光景だけでも見る価値はあると思うぞ!