ミズカマキリと刺身

たいへんたいへん、と、大事そうに小さなバケツを抱え、こんがり小麦色した児童らがわらわらとやってきた。「プールにミズカマキリがいたんだよ」プールなんかに何しに来たんだろうね、 エサは携帯で調べたら(こういう時代なんですね、今は)ボウフラとか書いてあったよ、と口々に話しかけてくるが、ちょっとまてよ? 君らは何か期待していないか…? おそるおそるわたしはたずねてみた。「で…このミズカマキリをどうすると?」「えっ、いや…みんなおうちで飼えないからさあ…ここ(うちの池を指す)で…」やっぱり思ったとおりである。「は? だって、ミズカマキリでしょ? エサがボウフラって…このサイズ(10センチはある…)は間違いなく小魚食べそうだよね?  えっ、池なんてぜったい入れられないよね?」ここは心を鬼にして、うちは生き物の駆け込み寺じゃないとキッパリ断ったところ、予想が外れたか(この変なオバサンなら笑っていいよと言ってくれると思ったのだろうか…汗)しょんぼりした顔で、困ったなあとバケツをのぞきこんでいる子供達。結局話し合いの末、「プラケースで観察したい」というところで落ち着いてしまった。まあ正直わたしもちょっと興味あったので…(苦笑)。

そんなわけで、しばらくミズカマキリを観察することになった。エサはとりあえず無しで様子を見ていた。お腹がすいたらそのうち自分で飛んで出ていくだろうと気楽に思っていたら、1日たち、2日たってもなかなか出て行かない。そうこうしているうちに、水中に乳白色の細長いつぶつぶが…そう、まさかの卵である! 「え~っ!」一同興奮気味。すると、しばらくケースをのぞいていた子供らから「ちょっとためしてみたいんだけど…」とある提案をされた。「ミズカマキリって生き餌しか食べないんでしょ?(ハイ、たしかにわたしが検索で調べてそう言いましたよ…) でもチャンカメがやってみて食べなかったわけじゃないよね?(ああ、たしかに調べてそう書いてあっただけですからね、それが何か?…汗) だからね、あの…ちょっとでいいから刺身(一応気をつかっているのか小声で)とか…あげてみたいんだけど…」まーた、おかしなことを言っている。これだから子供ってのは面白い。まあ食べないと思うけど、こうなったらとことん気の済むまで試してみてくれよと、冷凍庫で眠っていた値引き商品の安い刺身を少し切って分けてあげた。ところがである。「わー、食べてるよ!」子供らがさわいでいるので、まさかな~と半笑いで見に行くと…「う、うそー!」切り身に口をシッカリ刺して放さないミズカマキリの姿が! あわててもう一度調べなおすと、「非常時にはマグロ刺身などを食す」という記述もちらほらあった。そうなんだー…勉強になりました(汗)。子供たちはもう、エサを食べてくれたということで大喜びで、よかったよかったとかわいがっていた。

残念ながら、その後、消化液で溶け出した切り身が水質を悪化させたようで、それが原因か寿命だったのかはわからないが、ミズカマキリは死んでしまった。子供たちは泣いて土に埋めていたが、卵は数日後にふ化したので、まだしばらく観察は続きそうである。今回はしかし刺身の実験には驚いたと同時にやってみないとわからないものだなあと子供らに脱帽である。最近は便利な検索ばかりに完全におんぶに抱っこ状態だったけど、たまにはこうやって小さな疑問をためしてみるのもおもしろいものだなと改めて気づかされた一件であった。

チャンカメ

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チャンカメ

タンスタ創刊号の〆切間際に入社した古株女子だが貫禄はまるでナシ。かわいい=へんなものについつい手が伸び、デスク周りは癒やし(?)小物だらけ、少々アク抜きの必要な40代。イラスト担当。愛車は現在Z250。乗るたびに ”最近のバイクはすごいな〜” と可愛さ倍増中☆

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