先日の通勤電車でのこと。車内は比較的混んでいる方だったのだが、ボクの隣にいた女性が、バックから化粧ポーチを取り出し、突然化粧をし始めた。「何もこんな混んでいるときに…」なんて思いつつも、ここまでならよくある話である。だが化粧ポーチの次に取り出したのはなんと粉薬。そして混んでる電車のなかで、おもむろに粉薬を飲み始めた。しかも水も飲まずに3包連続(笑)。電車の中でいきなり粉薬を飲む女性を見たのは初めてだったが、水も飲まずに3包立て続けに飲める人を見たのも初である。いささか車内にはその粉薬の臭いが充満したものの、無事粉薬を飲み終えた彼女は、最寄り駅のホームに着くや否や、さっそうと歩いて会社に向かったしだいである(たぶん)。
一連の現象について、ボクは日本人のモラルがどうとか、彼女の常識がどうとか言うつもりはない。もちろん正直迷惑だなぁという、個人的な感情を抱いたのは確かだが、それ以上にどうしても聞きたいのは、なぜ混んでる電車のなかで、粉薬を飲む必要があったのかということだ(笑)。
まぁ忙しい身であったのだろう。朝は身支度でそれどころではない。歩きながらでは粉薬は飲みにくい。会社では同僚に見られて恥ずかしい。トイレでは口にモノを入れるのは気が引ける。というわけで最後の最後に残った選択肢が「電車のなか」だったのかもしれない。まぁそんなことはないと思うが。どちらかというと、たまたま粉薬が飲みたくなったのが電車なだけで、「粉薬なんてどこででも飲むわよ、アタシ」な人だったのかもしれない。
繰り返すが、ボクはこんな人が増えたとか、日本人の美徳がどうとか言って嘆かわしく思うことはない。ただ昔からあった、公衆の面前での恥じらいのようなものが、どこでどうやってなくなっていったかということに興味がある。しかしながら、別の議論として、いつの時代にもそういった「恥知らずの人」はけっこういたという説もある。ただ現代では通信や交通機関といった産業の発達で、目についたり、広まりやすくなっただけだという考え方もある。これも個人的には一理あって、どちらかというと日本人がダメになったという以前に、昔からあったモノがわかりやすく表に出てきただけだと思うわけである。
しかしながら、やはり恥じらいと、他人への気配りは、大人なら当然持っておいてほしいふるまいである。TPOとは時間と場所と場合の英単語の頭文字を組み合わせた言葉だが、残念ながら電車のなかで粉薬を飲むような行為は、TPOに合った行為とは言えないだろう。個人的にはTPOをわきまえられる人間を目指していきたいし、周りもそうあってほしい。ただ多少の無礼には寛容な社会であってほしい気もするけどね。