本誌11月号の定番スポット特集でも私、ハタナカが実走レポートした静岡県の有料観光道路・伊豆スカイライン、通称“伊豆スカ”。長いストレートや適度なコーナー、アップダウンが組み合わされた屈指のツーリングロードとしてとくに関東圏のライダーには大人気のスポットで、私も大好きな道です。その伊豆スカイラインが、もう走れなくなるかもしれない、今回はそんなお話をしたいと思います。
そもそも、この話は今に始まったことではなくて、もう何年も前から伊豆スカ内での二輪車事故と二輪車のマナーに関する苦情が増加の一途をたどっていたんですね。もちろん、これは二輪車だけに限ったことではなく、四輪車のドライバーにも同様の問題はあるけれど、とくに2009年は静岡県内の二輪車死亡事故の約8割が伊豆スカ内で起きるという尋常じゃない数値になっていたほどといいます。この時点で、県警本部は「二輪車は通行禁止にしなさい」というムードだったそうで、通行禁止措置の検討を始めました。ここで言っておきたいのは、バイクというと“無謀な若者”というイメージですが、現在こういった事故の当事者となっているのは30代以上、40代~50代の大人たちだということ。そして地元のライダーではなく、静岡県以外の他県ライダーが大半を占めています。これは実際の統計として出ている数値で、つまり批判を承知で嫌な言い方をすれば、「普段は社会人として立場のある“いい大人”が休みの日にバイクに乗り、よそへ行って危険走行をし、事故を起こしている」ということなんです。この現状に対し、伊豆スカを管轄する大仁警察署は、2009年から“伊豆スカイライン・ライダー事故ゼロ作戦”をスタートさせました。
たとえば、伊豆スカが二輪車通行禁止になったとします。すると、それまで伊豆スカに来ていたライダーは別の道に場所を変えて同じことを繰り返すだけ。締め出すのは簡単ですが、これでは“いたちごっこ”で、根本的な解決にはならないんですね。それが続いていけば、いつかバイクは公道を走れなくなるでしょう。だから、「利用者側であるライダーの意識を変え、事故をゼロにしよう」と警察・道路公社・民間が一体となって取り組んでいるのが事故ゼロ作戦です。そしてこの活動の民間代表が、本誌でもおなじみ、伊豆在住の二輪ジャーナリスト・KAZU中西氏(以下、カズさん)と、カズさんが立ち上げた“伊豆スカ事故ゼロ小隊”。この小隊は、事故ゼロ作戦に賛同するライダーたちが「通行禁止はさけたい。ライダーみんなで気を付けていこう」と、ビラ配りや声かけ、定期的な巡回視察を行なっている完全なボランティア団体。事故や転倒に遭遇した際にも二次被害を防ぐため、迅速な対処を続けています。そしてこういった活動の継続により、事故件数はピーク時に比べると減少してきていたんです。
ところが今年に入り、再び事故件数は増加中。記憶に新しいところでは、7月にブラインドカーブで大型の観光バスを追い越そうと対向車線にはみ出した大型バイクが、対向から来た大型バイクと正面衝突し、双方のライダーが重傷を負うという事故がありました。正直なところ、通行規制は“首の皮一枚”というところまできてしまっているのが現在の実情です(コチラやコチラの報道も読んでみてください)。本当に本当に、もうギリギリの崖っぷちです。 スピードを出しちゃいけないとか、そんなことを言ってるんじゃないんです。“人に迷惑をかけてはいけない”ってことは、大人が子供に教えることのハズ。道路はライダーだけのものではないし、何事にもマナーや節度というものがあるハズです。 “事故らず、無事に家に帰ること”。これが一番だと思います。事故を起こせば、警察やレスキュー、現場を片付ける人、そこを通行する人など、本当にたくさんの人に迷惑をかけるし、多くの人が悲しみ、自分自身や家族の人生を棒に振ることになります。相手をキズ付けてしまったら、その人やその人の家族の一生を背負うことになるんです。
11月23日(日)に事故ゼロ作戦の第12弾開催が決定しました。当日は、“ライダー目線の現場診断”というテーマで、過去の重大事故現場をめぐり、事故現場から事故を起こさないためのライディングテクニックを学ぶほか、移動中は二輪車安全指導員・警察官によるライディングチェック&アドバイスが行なわれる予定。また、この活動に参画している元ホンダワークスライダーの宮城 光氏や二輪誌などで活躍中の福山理子さんも登場します。ライディングテクニックは事前申し込みが必要とのことですが、まだまだ定員に空きがあり参加者募集中とのこと。そのほかは参加自由なので、ぜひツーリングがてら伊豆スカのスカイポート亀石まで出かけてみてください。私、ハタナカも参加するつもりです。詳細は、カズさんのブログをチェックしてくださいね。近々大仁警察署HPのお知らせコーナーにもアップされる予定だそうです。参加できないという人も、これを読んで賛同していただけたら、ツイッターとかフェイスブックでシェアしてくれるとうれしいな。一人でも多くの人ライダーに、現状を知ってもらいたいと思います。