誌面のイラストのほとんどはパソコンで制作しており、この仕事をはじめたころは、ラフの段階からすべての作業をパソコン上でおこなっていた。デジタルのいいところは作業工程を時間軸で自由に行き来できるところである。たとえば、紙上で描いて消したとき、「あ、やっぱりもとに戻したい」と思っても二度と同じ線が描けないもどかしさ、色を決めるときに色見本をあてがって本塗りをし、イメージと違ったときのやり直すむなしさ、そういうものが気楽にカチッ、ポチッ、という操作だけで変えたり戻したりできるところである。画材コストもかからず、労力も最小限で済むし、何度やり直しても地は痛まないし、絵の具のように色を作り置きする必要もないし、作業を中断してもムラなど仕上がりに影響が出る訳でもない。こんな便利なものはないぞと当初は思っていたのだが、ここ最近はまたもとのアナログに戻りつつある。大きな要因は老化に伴う(?)目の疲労であるが、もしかするとデジタルに対する飽きであるかもしれない。とにかくそんなわけでこのごろは紙とペンをまた昔のように持ち歩くようになった。そんなとき、偶然「フリクション色鉛筆」なるものを見かけた。最新号の誌面コラムでは「フリクションペンの良さがわからない…」と時代の波に乗れていなかった自分だが、「色鉛筆のフリクションかあ…」とこれはちょっと心が動いた。もともと色鉛筆は自分の気に入っている銘柄があるが、消しゴムではきれいに消せないので仕上げ用にはいいが、こいつはフリクションときた。ラフを描いた場合、線は残っていてくれないと困るのだが、色はそのときだけ見えればいいし描いて消してを何度もくらべてみたい…これはいいかもしれないぞ、ということでためしに買ってみた。いつもだとラフが完成した後デジタルに起こして色を決めていくのだが、ラフの時点である程度色味を考えられるというわけである。もちろんそれほど色数は多くないのであくまで大まかにだが、色の傾向ぐらいは決定できるので、これは便利である。しかも、おどろくことによく「消える」! あ〜いいものみつけちゃったな〜と、このフリクション色鉛筆も一緒に持ち歩くようになった。…ということで、誌面コラムの「フリクションペンの良さがわからない…」は色鉛筆を例外とさせていただきます(笑)