小学生時代の友人にふじこという女の子がいる。彼女は私の親友だった。おてんばな彼女に連れられて木登りをするうちに私の中の好奇心があらわになり、二人で秘密基地を作ったり、民家の塀を歩いて通報されたり、学校の木に登って校長室に呼び出されたりとすっかり破天荒になってしまった。でもそんな日々が何より刺激的で何より楽しかった。
おそらくふじこと出会っていなかったらバイクには乗っていなかったと思う。それほどまでに彼女との出会いは私の人生に大きな影響を与えている。
そんなわけで小学校のころはいつも放課後になると秘密基地で遊んでいたのだけれど、中学で部活を始めてからはそちらの方が忙しく、高校で地元を離れてからはパタリと会う機会が減った。
高校生活でふじこに会ったのは一度きり。久々に会おうという手紙が届き、地元のおしゃれなカフェで落ち合った。すっかり女性らしくなったふじこに若干ショックを受けたのを今でも覚えている。半そで半ズボンで傷だらけになりながら木に登り、新たな秘密基地を求めて探検をしていたころのふじこはすっかりなりを潜め、ここのカフェ、最近よく来るんだよねなんて言っている彼女の横顔を見て何だかおいてけぼりをくらった気分になり、それ以降私が県外に出たこともあり、会うことはなくなってしまった。
そんな長い前置きがあり、つい先日ふじこからラインが届いた。
友だちかも?という友達検索機能の欄に私の名前が出てきたらしく、久々にラインを送ってみたとのこと。
「ホーネットの画像が貼られてたから気になったんだけど、もしかしてバイク乗ってる? 私も中免持ってるんだ!」
唐突なカミングアウトに私はラインの文面を何度も見返した。
しかも乗っているバイクはスズキ・バンディット250。ホーネットと同じ4気筒高回転型のエンジンを採用するバイク。こりゃあもう運命ってものの存在を強く感じざるを得ない。
お互いがまさかバイクに乗っているとは思ってもみず、ただただ衝撃だった。
次に会うときはツーリングに行こう!と約束を交わし、ラインはそこで終了した。まだ見たことのないふじことバイクのツーショットが頭に浮かんで楽しみで仕方がなくなる。
何年ものときを経て私とふじこを繋いでくれたバイクは、ただの乗り物なんかではなく、人と人とを繋いでくれるコミュニケーションツールだと私は思う。
これからもまだまだ出会いや再会があるかもしれない。そう思うとバイクに乗るのがずっと楽しみになってきた!