姉が絵本関連の仕事をしていることもあって絵本を読む機会が多い。子どもがいる人や絵本好きの女性ならともかく、独身の成人男性で絵本を読んでいる人は相当めずらしいかもしれない。ちょっとこわいと思うかもしれない。いやいや、最近の絵本は本当に内容がユニークでおもしろいのである。ただ笑ってほっこりするものや、発想の豊かさに驚かされる絵本もある。
でも所詮、子ども向けでしょ?と思う人には、作家ヨシタケシンスケさんの『りんごかもしれない』を読んでもらいたい。この本は僕の絵本に対する見方が変わるキッカケになった本だ。絵本は子供だけが読むもの、なんてとんでもない。この作品についていえばむしろ大人こそ読むべきじゃないかと思うくらいである。本の中身はこうだ。テーブルに置いてあるリンゴを見付けた男の子。でも、もしかしたらこれはリンゴじゃないのかもしれない…、男の子の妄想ワールドが無限大に展開していくというお話だ。
はたして、「これはリンゴじゃないかもしれません。じゃあ一体何でしょう?」とお題を与えられてどれほどの回答ができるだろう。ヨシタケさんの発想力、とにかくスゴイのだ。よくそこまで考えられるなぁと感心するしかない。モノをさまざまな方向から見ること、固定概念にとらわれない考え方。この本を読めばきっと柔軟な考え方のできる子が育つに違いない。退化する一方である自分は、なんとか脳を柔らかくしたいと思って本を開くのである。
ヨシタケさんの発想絵本シリーズはこの他にも、自分とは何かを考える『ぼくのニセモノをつくるには』や、死について考える『このあとどうしちゃおう』など、とても子ども向けとは思えないテーマを驚きの発想力で絵本に落とし込み成立させている。雑誌制作に携わる者としてこの発想力は大いに見習いたいところだが、これはどの世界の大人にも言えることではないかと思うのだ。