ボクはネタバレというモノに強烈なトラウマがある。小学校低学年のころ『犯人はヤス』をリアルタイムでやられてしまったからだ。知らない人のために解説すると、これはファミコンゲーム『ポートピア連続殺人事件』から生まれた言葉。作中で発生する連続殺人事件の犯人はいったい誰なのか、と考えをめぐらせているプレイヤーに対し、犯人はヤスであると暴露する非道行為のことである。このゲームはプレイヤーが刑事となり、部下のヤスにさまざまな命令をしながら捜査を進めていくという内容なので、いわばヤスはゲームシステムの一部。普通に考えると殺人容疑などかかるハズのない人物なのである。このことから、ゲームや映画などの大どんでん返しをネタバレすることをインターネットスラングで『犯人はヤス』と揶揄することがあるのだ。
説明が長くなったが、ボクにこのネタバレをくらわせたのは友人の兄。当時中学生だったこの兄はどうやら「このゲームは小学生には難しすぎるから早く事実を教えてあげよう」と考えていたらしいが、ネタバレをくらった側からしたらとんだありがた迷惑だ。この事実を知ってしまってからは純粋にゲームを楽しめなくなっただけでなく、目の前に犯人がいるのにあれこれムダな捜査をするハメになって余計にイライラしたり。さらに当時のゲームシステムはかなりアバウトで、犯人がヤスだとわかっていても難易度はまったく変わらないというやっかいな仕様。結局このゲームはクリアできずじまい。ネタバレは何も生み出さなかったのだ。
そんなこともあって以来、ボクはネタバレに対してすっかり臆病になってしまった。今も映画『シン・ゴジラ』や『君の名は』に乗り遅れてネタバレにおびえる日々を送っている。早く観に行けばいいだけなんだけど忙しさを言い訳にズルズルと…。こんなとき、あの兄がいたら「映画を観に行く行くヒマがないだろうから早く事実を教えてあげよう」とか言ってネタバレをくらわせにかかるのだろうか…。そんなことになったらもはや正気をたもつ自信がない。いい歳をして本気のケンカになりそうだ。やはりネタバレは許されない悪事なのである。
そういえば以前のコラムに「シルバーウィークは映画館に行こう」って書いてたことを思い出した。思わぬところからネタバレをくらう前に早めに観ておいた方がよさそうだ。あれ? シルバーウィークってもう終わりだっけ?