中学時代のある日、根本(仮名)という悪友が大量のロケット花火を持ってきて「人に向かって飛ばすのは飽きたからほかの遊びをしよう」(←絶対マネすんなよ!)と言いだしたのでボクたちはとりあえずそのロケット花火を分解することになった。当然ながら中には火薬が込められていたのだが、その量は拍子抜けするほど少ない。「こんなちょっとの量であれだけ威力があるんだから、これをいっぱい集めたらどうなるんだろうな」とボクが言ったとたんに二人の意見が一致。手始めにロケット花火5本分の火薬をティッシュペーパーの上に集め、着火してみた。すると60㎝くらいの火柱が発生。当時大人気だった格闘ゲーム『餓狼伝説2』に登場するパワーウェイブという技に似ていたため、これを『パワーウェイブごっこ』と名付けて大喜びしていた。中学生くらいの男子ってどうしてこうアホなんだろう。
しだいにパワーウェイブごっこに飽きたらずパワーウェイブの上位版『パワーゲイザーごっこ』をやろうという話になり、残ったロケット花火の火薬をすべてティッシュペーパーに盛ってみた。量はすでにパワーウェイブの比ではない。ドキドキしながらライターの火を近付ける。ライターを持っていたのはボク。その直後『ボォッ!!』と爆発が起こった。強い爆風も感じた記憶がある。その規模はまさにパワーゲイザー(わからない人はググってね)だった。ケガはなかったが、右側の腕や指の体毛がすべて燃えて毛玉状になり、頭髪からは火葬場の匂いがした。一瞬身を引かなければおそらく皮膚にも火傷を負っていただろう。アホな中学生男子たちはパワーゲイザーの恐るべき威力に唖然とし、しばらくその場を動けずにいた。
それ以来、さすがの悪ガキ根本もボクも火薬で遊ぶことはなくなった。冷静に考えれば、火薬はもともとダイナマイトや銃の弾丸に用いられる危険物。中学生ごときがそんなもので遊ぶこと自体が間違いなのだ。パワーゲイザーごっこを経て、二人はちょっとだけ大人になった。
…と、そんな青春時代を振り返って思ったんだけど、普通に生活していたら“爆発”を体験する機会ってあまりない気がする。たとえばエンジンにしても、その原動力が爆発によるものだということを知っている人はいても、爆発によって生じる音・光・熱・衝撃を身をもって感じたことがある人は少ないハズだ。この仕事をするようになってエンジンの機構を勉強したり解説したりすることが増えたけれど、このパワーゲイザーごっこのおかげでエンジン内部でどんなことが起きているのか、ということをより深く理解できている気がするのだ。それにしてもあのときのパワーゲイザーの爆発力は燃焼室何㏄分に相当していたのだろうか。感覚的には1,000ccくらいかな…。もちろん1気筒分。あんな爆発を1分間に何千回も発生させているんだから、やっぱりエンジンってスゴイんだなぁ。