先日、お彼岸は少し過ぎてしまったけれど、墓参りに行った。なかなか、行こうとすると悪天候で、「こんな大雨で行ってもご先祖さまだって嫌がるに違いない」と勝手な言い訳をつくって後のばしにしていただけであるが…(苦笑)。それでも(私と同じ理由ではないだろうが)、何件かの家族連れと一緒になった。静かな場所に子ども達の明るい声がよく響く。その元気な声をのんびり聞きながら、大人達はせっせと草取りや掃除をしていた。ところがしばらくすると「何するのー!」「パコッ」「うぇ~ん!」と何やら喧騒が聞こえてきた。どうやら子どもたちがお手伝いをしている最中に水をかけたかけていないでもめているうちに柄杓を武器に戦いを始めたらしい。最終的には「やめなさい! 墓前で、みっともない!」母親の一喝でその場はすぐにおさまった。半べそでにらみ合いながらも、こんどは線香に火をつけることに夢中になり、さいごは仲良く並んでお墓に手を合わせていた。「ったくー。ご先祖さまも笑っているだろうよ…」なんて父親に小言を言われながらその家族は墓を後に帰って行った。その場に残った大人たちは微笑ましくその様子を見守りながら、また掃除や手入れの続きを始めていた。墓に眠る人たちの中には、防空壕の中で、地鳴りのような野太いB-29の音をただただ震えながら静かに過ぎるのを待っていた、そんな幼少時代の思い出しかない方もいらっしゃるだろうか。いやもっともっと悲惨な体験をされている方もいるのだろう。お墓に響きわたるこんな今を生きる子ども達の声が、いくらかの供養になればと、秋晴れの空に願った、ある休日の話である。