フジガス号との夢の15分間

まさかこんな日が来るとは思ってもみなかった。だってホンダのワークスマシンですよ? そんなスゴイマシンに乗れてしまうなんて、編集者冥利につきるってもんだ。

…写真もないので何の話かわからないよね。先日、ホンダのトライアルワークスライダーであるトニー・ボウ選手の前人未到の10連覇達成を記念して、ホンダさんがトニー・ボウ選手、藤波貴久(フジガス)選手、小川友幸(ガッチ)選手のトライアルワークスマシンの体験試乗会を行なったのだ。

 

本日は、ホンダのトライアルマシンの試乗会で、昨日に続きツインリンクもてぎ。これから世界チャンピオンのマシンに乗るッ! 役得だが、恐らく億単位のマシンを前に小学校の注射以来のドキドキ感。やらまいかッ!

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2016年12月4日日曜日

ハイ、ここでCM!
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Hondaホームページでは現在、
トニー・ボウ選手の10連覇特集サイトを公開中! 見てね〜。
https://www.honda.co.jp/WCT/spcontents2016/toni-bou-v10/

王者トニー・ボウ選手!

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左から、藤波号、トニー号、ガッチ号。この3台に試乗できるという太っ腹企画。

いやぁ、そんなマシンの試乗会を開いてしまうとはホンダさんの度量の大きさに感服。通常、この手のワークスマシンは「乗り味も含めて企業秘密ですっ!」と、役目を終えたマシンですら乗ることができないのが普通なのだが、そんなバイクに乗れてしまうとは…。とはいえ乗る方としてはすんげぇプレッシャーである。なんせワークスマシンだからね。正確な価格はわからないけど、億のお金が費やされているなんて声も聞こえてくる。試乗会には40人ほどのプロライダーや媒体関係者が集まったけど、もはや「どう? どうだった?」と、予防接種の順番待ちをする小学生みたいな状況である。しかも僕ら、タンデムスタイルの試乗の順番はいちばん最後(笑)。「すげ〜よ」注射…じゃなかった、試乗を終えて安堵の顔を浮かべながら感想を語る知り合いのライダーたちを横目に、最後までドキドキさせられ続けるのである。

トライアルマシンに関わらず新車の試乗会でもそうだが、この手の試乗会は、なんとな〜く順番が決まっているものだ(←勝手な想像ですがっ!)。「ナニかをやらかしそう」な媒体は、最初か最後の方と相場が決まっている(←あくまで勝手な想像ですっ!)。まぁ、僕らのことですけどね。今回の場合はとくに、ヤス子が姉妹誌・レディスバイクの記事のために企画絡みで“選手にトライアルの技を教えてもらいたい!”と、それはワークスマシンを使ってやることなのかい? 的なワガママな企画への協力お願いしたから当然だけどね。

そんなこんなで始まりましたMontesa COTA 4RTの試乗枠。本当は3枠の試乗枠あって、トニー・ボウ号とガッチ号にも乗れたんだけど、そっちはヤス子の企画で取られてしまったのでフジガス号に15分だけ。トニー・ボウ号に対してアクセルレスポンスがスゴイなんて他の人たちの感想が聞こえてきたが残念ながら、わからない。この15分間のために朝からドキドキしていたのだ。

 

さて、キックでエンジンをかけて走り出す…、とはいってもまずは、スタンディングで歩くよりも遅いスピードで動かしてみる。トライアルマシンで使うギヤは1速〜3速まで、4速は完全に移動用らしい。そんな止まるか止まらないかのスピードで走り出して驚いたのはその安定感だ。実は僕、ちゃんとしたトライアルマシンでフィールドを走るのは今回が2回目。7、8年前にイーハトーブのプレイベントでスコルパTYS125Fというマシンに乗って以来のこと(笑)。そんなヤツが、ワークスマシンに乗るな!って感じですが乗れる物は乗っとけ!ってのが僕の信条なのでスイマセン。

こちらは僕が乗ったフジガス号ではなく、トニー・ボウ号。見た目はほとんど変わらないのだが、エンジンのピックアップやステップポジションなど、セッティングがまったく違い、乗り味も異なるとのことだ

でもね、トライアル車経験は少なくとも、日ごろエンデューロマシンやトレール車で、スタンディングスティルとかステアケースなどのアクションはお山系の難所アタックで常用している。ガバ開けのハイスピードコースより、ガレ場などのトライアルセクションに近い難所の方が個人的には得意な方なのだ。…ってことで、ちょっとテクのなさの言いワケをさせてもらったところでインプレッションの続き。

フジガス号はもう足を地面に着いているかのような安心感。ここまでスタンディングスティルしやすいマシンは乗ったことがない。餅は餅屋、トレールマシンとは段違いの扱いやすいさなのだ。もうね、なんというか2〜3分走っただけで、スタンディングスティルしながらよそ見ができるのっ!!!! 難所を前に、ハンドルとクラッチコントロールでバランスをとりながら停止、「さぁ〜て、どこのラインからアプローチしよっかかなぁ〜」なんてことを足を着かずに余裕かましていられる。それに驚いたのが、タイヤから伝わる路面情報の多いこと多いこと。例えばハンドルをフルロックしたまま、クラッチをつなぐと、ハンドル切れ角が大きすぎてフロントタイヤ回らず、「ズリッ」と横滑りするんだけどその「ズリッ」が起きるまでに、

「あ、タイヤがサイドウォールが変形しはじめた!」
「タイヤのブロックがよれてる、よれてる!」
「もう限界! 滑っるっ!」
 
…ぐらいの情報がリアルタイムで感じ取れる。よくトライアルのトップライダーは、後輪のタイヤのブロックのどの角が接地しているかを感じられるし、ねらって岩角にタイヤ(のブロック)を置くことができる。なんて聞いてにわかに信じ難かったけど、“ははぁ、なるほどこれなら…”と、そのスペシャルな世界を垣間見れた気がする。…なんてことを考えながら、坂を登ったり降りたり、ちょっとした岩場で遊んでいたら。知り合いの「ガ◯ル」とかいうオフロード専門誌の編集長に、「岩やれ、岩!」と囃し立てられる。注射を終えた外野は言いたい放題なのだ。僕もまぁ、行けなくはないだろうけど、ワークスマシン転すワケにはいかんでしょ? とリスクの高いセクションは避けていたんだけど…、うーん、あまりの乗りやすさにやってみたくなっちゃったんだよね〜。岩。

 

ヤタガイ ヒロアキさんの投稿 2016年12月5日月曜日

状況は30〜40°ぐらいの登りの途中にあるフェースが垂直じゃないにせよ、7〜80°に立ってる50㎝ほどの岩。フロントを当てて跳ね上げれば普通に越えられるとふんだし、実際、そのとおりにいとも簡単に越えられた。「フジガス号すげ〜」。ニヤリとしながらオーダーもとの某オフロード専門誌の編集長の顔色をうかがうと…。

「そうじゃない。お前には失望だ…」と言わんばかりに首をふりながら、“フロントアップのままリヤタイヤをフェースにを当てて、そのまま乗り越えろ!”というゼスチャーをするじゃないか。いわゆるトライアル用語で“アクセル2度吹かし”のステアケースをきちんとキメてみせろというのだ(笑)。

はい、すいません! あまりの乗りやすさにわたくし、ちょーしに乗りましたっ! 結果を言えばコケました。オーダーどおり後輪から岩のフェースに当てたし、マシンも岩の上まではヒョイっと上がった。…が、僕には上がったフロントをリヤブレーキを“ちょん”とかけて落とす技術がなかった。岩の上の土の斜面に上がった…と、思ったらマシンがマクレ、次の瞬間には地面に転がっていた。

あわててフジガス選手の方をみると、「ああっ!俺のマシンが」という表情。スミマセン、ホントにスミマセン! しかも、後で聞いた話では、すべての車両が来年も使う本チャンマシンだったとか…。でもね、これだけは言わせてもらおう。そんな自分の技量を超えるセクションにトライしたくなるくらいワークスマシンは乗りやすかったのだ。試乗の時間はたった15分間だったけど、それはもうホンダの本気を存分に感じられた至福の時間であった。ホンダさん、本当にありがとうございましたっ! …と書いておけば億単位の請求書は来ないよね、たぶん。

やたぐわぁ

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やたぐわぁ

本名/谷田貝 洋暁。「なるようになるさ」と万事、右から左へと受け流し、悠々自適、お気楽な人生を願うも、世の中はそう甘くない。実際は来る者は拒めず、去る者は追えずの消極的野心家。何事にも楽しみを見いだせるのがウリ(長所なのか? コレ)だが、そのわりに慌てていることが多い。自分自身が怒ることに一番嫌悪感を感じ、人生の大半を笑って過ごすことに成功している、迷える本誌編集長の44歳。

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