この仕事につくずっと前の、まだ大学で勉強中だったころ、地元に残った高校時代の親友からある日、イラストを描いてくれないかと頼まれたことがあった。「カメ、よくノートに落書きしていたでしょ? あんな感じの、かわいいお年寄りを描いてほしいんだ」大学のセミナーだったか健康講座だったか何だったかはちょっと忘れたが、なんでもそこで配布する資料の表紙にしたいとのこと。もちろん断る理由はない。二つ返事で友人と具体的な内容を相談した結果、当時きんさんとぎんさんが大人気だったので、おばあちゃんがのんびり2人でお茶をすすって笑っているイラストがいいんじゃないかということになった。大学の印刷機で刷るということだったので、ペンで描いただけの素朴なイラストだったが、当時の自分にとってはイラストの初仕事(?)なわけで、とてもはりきって描いていた記憶がある。何度も描き直し、ようやく出来上がった一枚。ドキドキしながら郵送すると、友人はとても可愛いと喜んでくれた。そしてその後も大成功に終わったよ、ありがとうねと連絡がきてとてもうれしかったのを覚えている。今は幸運にもホントに仕事としてイラストを描かせていただいているが、仕上がりや〆切などそれなりにシビアな状況下で日々過ごしている。そんな中、たまにふとあの時のことを思い出すことがある。そして今もあの頃と全然かわらない気持ちでいる自分を確認し、少し安堵するのだ。