昨日、家に帰りドアを開けると、いきなり豆を持った娘が駆け寄ってきた。そりゃもうすごい笑顔である。その後ろから、娘が昼に“子ども教室”で作ったオニのお面を持った嫁がついてくる。こちらも笑顔である。
「オニが来たぞ、オニが〜! はい、豆を投げろ〜。オニは〜外!」と嫁のかけ声。
はい、そうですよね。ボクの役割ですよね。というわけでお面を頭に乗っけて豆を投げつけられ、「いや〜」と叫びながらドアから退散しましたとさ。
そう、愛知で生まれ育ったボクには子どものころから結婚するまで、2月3日は豆まきだけがイベントだった。ところが、嫁が大阪出身だったことで、結婚してからは新たに恵方巻きを食べるようになった。初めて恵方巻きを手渡されたときは、驚きとともに新しい地方文化に触れられて、なんともうれしかったものである。
ところが、気が付けば恵方巻きも全国区である。正月が過ぎるや、コンビニの窓には、“2月3日は、恵方巻き”の文字がデカデカと書かれた大きなチラシが貼りめぐらされ、まるでどこの家庭でもやるのがあたりまえのような扱いである。バレンタインやクリスマスが百貨店や製菓業界による仕掛けだったことはよく聞く話だが、恵方巻きもそういった商売のかおりがプンプンする。もちろん、ビジネスとして考えれば評価できる戦略だと思うけれど、個人的には地方性がなくなっていく感じがして、なんだかな〜という気持ちである。そんな個人的な感情はさておき今年も食べたわけだけど、そろった全員が無言で同じ方向を向いて食べる光景は、ついよけいなことを考えてしまい、いまだに慣れない。