3月の5日、端午の節句に飾る兜を見に行った。出向いたのは東京・浅草橋で、この界隈は東京の人形問屋の約70%以上が集っているのだ。以前ひな人形を用意したときにお世話になったお店をのぞくと、当たり前ではあるが、すでにひな人形は一体もなく、すべて端午の節句用の人形や兜になっていた。
さて、端午の節句用鎧兜であるが、お店の人によると基本は源氏兜なのだそうだ。ただ戦国時代の武将でも、織田信長や徳川家康といった名のとおった人のものは人気があって、ラインナップされているとのこと。実際にショールームの中を見渡すと、その他にも伊達政宗、上杉謙信といった有名どころの兜が飾られていた。
「伊達政宗は、隻眼でそういった意味ではあまり縁起はよくないのかもしれませんが、伊達者(人目につく、シャレた身なりの人。とくに、粋でオシャレな男性)の語源になっており、美男子というイメージもあって、そういう点において人気がありますね」とのこと。さらに店員さんは「その年の大河ドラマに取り上げられた武将の兜も出回りますね。昨年だったら“愛”の立物(たてもの)が目印の直江兼続のモノが出回りましたよ」と続ける。
なるほど。やはり、自分の子どもにも活躍してほしいという願いを込めて歴史に名を刻む有名武将の兜を飾るのだな。と納得したわけだが、出世率でいったら誰よりもすごい人が忘れられているではないか! 百姓出身なのに天下人にまで登り詰めた豊臣秀吉こそ、人気があってしかるべきではないか。兜だってカッコいいし…。と思ったのだが、どうもこれまでに小説やドラマで描かれた秀吉像の影響であまり人気がないらしい。いやはやイメージは大事にしなければと、あらためて思ったしだいである。