クルマに道を譲ってもらったおじいさんが深々と頭を下げた――。先日、そんな動画が話題となった。なぜそんなことが話題になるのか、しかも感動の声が多く寄せられたという。これがお国柄の違いというべきか、中国の出来事だったからだ。中国のテレビ局が大々的に取り上げ、このおじいさんのマナーを見習おうと呼びかけたらしい。それほど中国の交通マナーが悪いという。
日本の場合、軽く頭を下げてくれる人もいれば、小走りに渡ってくれる人もいる。クルマやバイクに乗っているこちらの身としては、急がせてしまって申し訳ないという気持ちになるときもあるし、歩行者優先なのだからそこまでしなくても…と思うこともある。しかし自分が歩行者のときに、ドライバーが「どうぞ」と道を譲ってくれると無条件反射のうちに頭を下げている自分もいる。中国で感動を呼んだニュースから日本人の礼儀のよさを感じずにはいられない。
実はこのニュースの後に、中国人のマナーで困ってしまうこともあった。とある観光地で行なわれたメディア向けの新型車両のお披露目会のこと。複数台のバイクを一ヶ所に集めて数人のカメラマンで撮影していると、中国人の観光客がことあるごとに車両のそばにきて写真撮影をしていくのだ。主催者側が「今はダメ!」と強い口調で断っても、「1枚くらい撮らせてよ!」というふうに怒りだす始末。ニコニコしながら「それが何か?」という感じでピースサインを繰り出す人もいる。もう僕らは断ることもあきらめ、怒る気にもなれず、ただ苦笑いするしかなかった。むしろ、意思を何より優先する図太さに“あっぱれ”と言いたくもなる。
しかし、それでは譲り合いの交通マナーが実現することもないだろう。かつてスペインに行った際、駅の窓口で切符とおつりを投げ捨てるように返されたときのカルチャーショックといったらなかったが、日本で生活していると、気付かないうちに気持ちのいいコミュニケーションが生まれている。マナーや礼儀を意識しましょう、なんてこの国では呼びかけるまでもない。ライダーのみなさんもきっとそうですよね。