嫌な思い出は心に残りやすく、反対にいい思い出は心に残りにくい。そのたとえとして「人間は、人生で一番まずかったモノは覚えているが、うまかったモノは覚えていない」…なんて話を聞いたことがある。でもこれ、ボクの場合は正反対で、まずかったモノってそんなに覚えておらず、逆にうまかったモノは今でも鮮明に思い出すことができる。
北海道を旅していたときに食べたウニ丼だ。稚内の漁師が経営している『漁師の店』という食事処 兼ライダーハウスなんだけど、そこで宿泊すると夕食&朝食付きで2,500円。その夕食に出てくる食事がウニ丼なのだ。普通、ウニ丼を食べようと思ったらそれだけで2,000円くらいするのに、宿泊客が来るたびに赤字になるんじゃないの…? と心配になる価格設定だ。
で、そのウニ丼なんだけど、ウニが新鮮とか濃厚とかただそれだけじゃなくて米がうまい。もちろんウニも絶品なんだけど、米のうまみ・固さ・水加減が絶妙で、主役のウニを見事に引き立てており衝撃を受けるほどのうまさなのだ。ライダーハウスに置かれていた寄せ書きノートを見ると、過去の宿泊客がこぞって「メシがうまい!」と書き綴っており、なかには「北海道で一番」とまで書かれていた。
ボクはこのお店以外でもウニ丼を食べていて、なかには絶品とうたわれる有名店もあったけれど、あの漁師のオヤジが出してくれたウニ丼に勝るモノに出会ったことがない。いや、ウニ丼に限らずこれまで食べたメシのなかで間違いなく一番だ。
では反対に『一番マズいモノ』なんだけど、ボクはわりとなんでもうまいと言って食べるらしく、「これはマズかった!」というモノがない。そのせいで味覚オンチのレッテルを貼られることもあるけれど、これはこれで幸せなことだと思っている。いい思い出よりも嫌な思い出の方が鮮明だなんて悲しいしね。あ、でもひとつだけマズかったモノがあった。ドイツのお菓子『ラクリッツ シュネッケン』だ。世界一まずいグミだと言われている。このコラムを書いていて、思い出したくないモノを思い出してしまった。まずいモノを勧めるつもりはないけれど、気になる人はググってね…。