今月号のタンデムスタイルの特集は「排気量は優劣じゃない」。
でも誤解を恐れずに言うと、「排気量のヒエラルキー意識」って、やっぱり多くのライダーの中に根強くあって、「大きくて馬力のあるバイクに乗りたい」という欲求は、ある種ロマンのようなカタチでライダーの深層心理にあるように思う。
もちろん、排気量の大きさによってそれぞれ得意・不得意があるので、「一概に大きいものがえらいわけじゃないよ」っていうのはよくわかるし、それが今月号の骨子でもある。またそれぞれ体格もさまざまなら使い道もさまざま。すべて排気量で優劣を付けるのはいささか乱暴である。ただ、人間、特に男性は「大きい方がすごい。大きい方がえらい」という思考が強く、大きい方が格上だとする論理はその強い支配欲から来るのではと思う。そして男たちは大きいもの、力強いものに憧れるわけだが、まさにその考えに当てはまるのが、バイクで言うなら「排気量」や「馬力」なわけで、「排気量(馬力)が大きい」=「スピードが出る、速い」=「えらい、強い」という構図が出来上がるわけだ。
同じことはクルマでもそうだし、家だって大きければ大きいほど「すごい」となる。また同様にマンションなども、より高層階のほうがえらいようなイメージがあったりもする。もちろん大きいクルマや家はお金持ちの象徴的な部分もあるが、やはり軽自動車に乗っていて、隣に大きい車が来たら、つい「どうぞお先に」と道を譲りたくなってしまうのは、そういった劣等感の現れによるものだと思うのである。
でもクルマだって大きすぎると狭い路地を通るのが不便だし、身の丈以上の広すぎる家は管理が大変だ。ようするに、やみくもにスケール感だけを求め、オーバースペックに気づかないような事態にはならないようにしたいわけである。「過ぎたるは及ばざるがごとし」とはよく言ったものだが、「大きいことはいいことだ」はもはや通用せず、小さく作れる現代において、必ずしも大きなことが、最適ではない場合も多い。すべてはユーザーの価値観にゆだねられる時代なのだ。
とはいいつつ、本質的には両極端を知っているからこそ、それぞれのよさが分かるわけで、長年ワンルーム以上の部屋に住んだことのないボクにとっては、大きい家の素晴らしさは知るよしもない。大きいバイクも小さいバイクも、いろんなバイクを毛嫌いせずにまず乗って見ることが大事というわけで、それぞれの魅力については、ぜひ最新号を読んで研究していただきたいところである(笑)。