魚の飼育はちょっと手間がかかるが、観察しているととても興味深い。
うちにはキカルコッカルチャールドカルちゃん(以下チャールド)という赤い和金と、キッタイクリマコリッちゃん(以下りっちゃん)という朱文金がいる。“幼児に名前をつけてもらうとなぜこんなにわけのわからん長ったらしい名前をつけたがるのか”というのもなかなか興味深いが、それはまた別の機会に考えるとして…。
うちの2匹、どちらも金魚すくい経由で我が家にやってきたのだが、あっという間に体長20センチくらいになった。大きい分、行動などの違いがわかりやすくなるのか、見ていると大変おもしろい。ふだんはエサを食べるときも、遊泳しているときも、チャールドが何でも先であり、ガツガツグイグイと押しまくっている。りっちゃんもたまにやりかえしているので、まあバランスは悪くないのだと思う。りっちゃんは、チャールドの牽制をスルリとかわしつつ、だけどちゃっかりおいしい部分は手に入れる、そういうタイプだ。
ある日、水槽のレイアウトを大きく変えたコトがあった。端にあったポンプや流木の位置を中央に持って行っただけであるが、左右の移動は中央に置いた石のトンネルをくぐってのみ、できるようにした。上のほうもすきまがあいてはいるが、巨体の2匹には水面に出ないと通れないくらいのすき間なので、おそらく通らないだろう。
もともとりっちゃんのほうが警戒心が強く、慎重なタイプであるが、今回はチャールドもかなり警戒している。二匹して、トンネル入口まで泳いでは「おまえ先行けよ」「あんた先行きなさいよ」と互いに押し合いしてはまた端に泳ぎ帰って行く、ということを繰り返していた。
さあ、こうなると、どちらがはじめの一歩を踏み出すかが見物である。予想ではいつも積極的なチャールドなのだが…。うーん、なかなか通らない。しびれをきらした私は、トンネルの出口にエサを浮かべた。2匹の大好きな“でっかいカメのえさ”である。さあこれでどうだ。「おっ、エサだ!」「ちょっと先食べてみてよ」「いやいや、どうぞどうぞ」「そっちこそ、どうぞどうぞ」。も〜〜と思っていたら、次の瞬間、一匹がトンネルをススーッと抜けてエサをパクッと食べた。りっちゃんだった。食べてすぐまた戻ってきて、二匹でグルグルと旋回した後、こんどはチャールドが行った。「なんだ大丈夫じゃーん」と言ったかはどうかわからないけれど、それから二匹は何度もトンネルを行ったり来たりしてすっかり慣れたようだ。
しかし、それで終わりじゃなかった。それからのりっちゃんはなんだかちょっと強気である。一方のチャールドは、りっちゃんに追いかけ回されている。ありゃ…。強気なりっちゃんは、強気なチャールドよりは大人しいが、どうやら立場が逆転したようだ。りっちゃんが強くなったのか、チャールドが大人しくなったのか、あのトンネルの一件で2匹のバランスが変化した、ということに驚きだ。魚も経験値や環境によって立場が入れ替わったりするのか…?
それからしばらくはそのままの関係が続いたが、夏に数日間家を空けた時に、また立場が逆転していた。おそらくエサが十分ではなかったか何かで、本来の姿を取り戻したのかと思われる。うーん、やっぱりおもしろい。他にも興味深い行動がいろいろあるが、それはまたこんどの機会にしようかな。