扱いやすいストリートファイター
スーパースポーツなどのハイスペックなマシンのカウルを取り払い、アップハンドル化したようなモデルは“ストリートファイター”などと呼ばれている。ここで紹介するストリートトリプルも、言ってみればメーカー主導で製作されたストリートファイターと言えるだろう。
見た目や名前から、同社のスピードトリプルの系列と思われがちだが、実際はスポーツモデルのデイトナ675がベースとなっている。エンジンはデイトナ675と同じ675cc水冷3気筒を搭載。この並列3気筒というエンジン型式は現行の国産車にはないものであり、これが一つのトライアンフの個性ともいえる。
丸目2灯式のヘッドライトからはコミカルな印象を感じる人がいるかもしれないが、ぜい肉を削ぎ落としたような車体構成は十分に攻撃的だ。ヘッドライトバイザーやラジエターカバー、アップマフラーなど、個性を主張する装備も印象的。
ただしスポーツモデルがベースとはいえ中低速域から扱いやすく、ビッグバイクビギナーにも扱いやすい。見た目とは裏腹の取っつきやすさを併せ持つ1台といえるだろう。
DETAIL
RIDING POSITION & FOOT HOLD
●ライダー:身長178cm/体重78kg
国内ネイキッドモデルのようなスタンダードなポジションで、ハンドルステップの位置はちょうどよくゆったり構えられる。タンクの側面はエッジが利いているもののニーグリップしやすい形状となっている
●ライダー:身長178cm/体重78kg
シートの後部が高くなっているためタンデマーが乗り込むときに少し車体がフラついた。前後でシートの高さに差をつけているので乗車中にきゅう屈に感じることはなかった
●タンデマー:身長161cm/体重45kg
タンデム側はライダー側よりシート位置が高くなっていて、ライダーとの密着感は薄い。ライダーの腰部に二ーグリップできるポジションではあるものの、グラブバーがなく走行時はやや心もとない
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- 2,030×755×1,110mm
- 軸間距離
- 1,385mm
- シート高
- 805mm
- 車両重量
- 189kg
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークDOHC 並列3気筒・675cm3
- 最高出力
- 77.9kW(106ps)/11,700rpm
- 最大トルク
- 68N・m(6.9kgf・m)/9,200rpm
- タンク容量
- 17.4L
- 価格
- 114万円4,500円
- カラーバリエーション
- マットブレイジングオレンジ
マットグラファイト
ファントムブラック
STAFF’S IMPRESSION
3気筒という特別感を味わう
エンジンをかけた瞬間。「ビュォォオオ」という独特のサウンドがスタート。このサウンドは並列3気筒という、トライアンフのお家芸的なエンジンレイアウトによるもので、パラレルツインとも直4とも違う味わい深いサウンドになっている。その675ccエンジンのパワーフィーリングは、スポーティな90°Vツインの“軽やかなフケ上がり”に、直列4気筒の力強い“重厚感”をプラスしたようなイメージ。全域でしっかりとしたトルクがあるから低速時から力不足感がなく、それでいて高速の延びもいいという“オールマイティ”なキャラクターがその持ち味と言えるだろう。一方、車体はというとサスは固めでブレーキもタッチ重視。重量も167kgとかなり軽く、セパハンではなく、バーハンドルだけどネイキッドというよりは、スーパースポーツに近いキャラクターになっている。だからこそ、ガンガンアクセルを開けられるし、少々速度域を高めてコーナリングしても不安感がない。積極的にアクセルを開けて走るスポーツライディングの楽しさを存分に味わいたい。
高回転では元気なサウンドに
試乗は編集部の周辺で行なった。渋滞はしておらず適度に流れているような状況だったのだけれど、そんな速度域でも非常にマイルドで扱いやすいことに感動してしまった。まるで国産車のように、「普通に走りやすい」と思った。ニーグリップもしやすいし、足つきもよく、取りまわしやUターンもまったく怖くない。これならビッグバイクビギナーにも気負わず乗れるんじゃないかな。せっかくだからこのバイクのいろんな表情も見てみようといろいろ走ってみたり試してみた。アクセルを軽くあおってみたら、かなり元気なサウンドをかなでてくれ、きっと高回転域ではもっと違う表情を見せてくれるんだろうなぁ~と、かなり走りへの気持ちがかきたてられてしまった。次に試乗するときは、ぜひ時間を作って、都内じゃないところへ行ってみたい。かなり個性的なルックスだけど、丸目2灯のヘッドライトが個性とカワイさを感じで好み。こういうかわいらしさと、走りへの気持ちがかきたてられる部分が同居しているのが印象的だった。