素姓のよさが光るモタード
XT250Xのベースモデルは、セローだと言っても差し支えないだろう(車名はまったく異なっているけれど、搭載しているエンジンはセローと同型モデル)。現在、ヤマハからはWR250Xというハイパフォーマンスなモタードがリリースされており、WRと比べるとXT250Xは少々地味な地位に甘んじているところは否めない。しかし、セローゆずりの扱いやすい性格を受け継いでいるのがXT250Xの最大の魅力だ。
開発コンセプトは“市街地での軽快な走りを実現するスタイリッシュスポーツ”。足つき性のいいシート、幅広いトルクと伸びやかな特性のエンジン、専用セッティングのサスペンションと専用タイヤなどを装備し、軽快な走行フィーリングを実現している。そのコンセプトどおり、どちらかといえばレースマシンというよりシティコミューターとしての用途にピッタリの性格を持る1台だ。
DETAIL
RIDING POSITION & FOOT HOLD
●ライダー:身長178cm/体重78kg
シートが後部にかけて跳ね上がっているが、またがるのは非常にラク。ステップの位置がやや近いため、ライディングポジションを構えるとヒザが少しきゅう屈。長時間同じ体勢のまま走るのはキツイけど上体の自由度は高いので無理には感じない
両足ともべったりカカトまで着くうえに、ヒザにもまだ余裕がある。足を下ろす位置にステップがあったので、足を前後に少しずらしても足つきには影響はなかった。車体が軽くバランスも取りやすい
●ライダー:身長178cm/体重78kg
シートが低く両足で支えられるので、タンデマーが乗り込むときにも安心してバランスを取っていられる。タンデマーが座っても圧迫感はないが、シート上で前後に動く範囲が少なくなるため少しきゅう屈に感じる
●タンデマー:身長151cm/体重43kg
シート高が低めのため乗り降りがしやすい。座面はスリムながら長さがあるおかげか、ライダーとの間にも空間ができるほど。ライダーとの一体感はそれほど高くないが、しっかりしたグラブバーのおかげで安心感は高い
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- 2,040×805×1,110mm
- 軸間距離
- 1,365mm
- シート高
- 790mm
- 車両重量
- 133kg
- エンジン型式・排気量
- 空冷4ストロークOHC 2バルブ 単気筒・249cm3
- 最高出力
- 14kW(18ps)/7,500rpm
- 最大トルク
- 19N・m(1.9kgf・m)/6,500rpm
- タンク容量
- 9.6L
- 価格
- 51万4,500円
STAFF’S IMPRESSION
トータル的に扱いやすいモタードだ
ラインナップのなかではあまり目立たないモデルだけど、試乗してみると「けっこう、よくできてるんだよなぁ…」という印象が強い。モタードとしては若干マイルドな加速感だけど、もちろん信号待ちからのダッシュでは四輪を一気に引き離せるほどのパワーがあるし、旋回性は素直でクイック。シートが低いのも、街中では非常に重宝するポイントだ。トータル的に完成度が高く、誰にもオススメできるモタードじゃないだろうか。
扱いきれる楽しさがある
見た目ではそこそこ車格があるように感じるのだが、足つきもよく、乗った感覚もかなりコンパクト。とはいえシートが前後に長いので、きゅう屈感はない。走り出せば、トルクがあるので低回転でトコトコ走ることも可能だが、高回転まで滑らかにエンジンパワーが増していくので、高速を維持して走り続けることもできる。何より、コンパクトな車体と入力に対して二ュートラルなハンドリングは、バイクを操る楽しみを堪能させてくれる。
訓練の行き届いた、有能な小型犬!
カリッと元気な乗り味で「加速したい」とアクセルを開けた瞬間にはスパッと加速し、曲がりたいと思ったらクイックに方向転換。こちらの意思を汲んでつねに半歩くらいリードしてくれ、パワーをもてあますこともないので、とにかく気持ちがいい! 走る、曲がる、止まる、それだけのことがこんなに楽しいものなのかと驚かされた。うまい人とテニスのラリーをすると楽しいというけれどまさにそんな感じ。たとえるなら“鍛えあげられた有能な小型犬”!