長年の歴史がその魅力を物語る
もはや解説する必要のないほど、世代を越えて愛され続けている名車・SR。1978年に初代が登場して以来、何度も小変更は加えられているものの、基本的な車体構成を変えることなく30年以上という長きに渡ってラインナップし続けているというのはご周知の通り。
SRのアイデンティティの一つといえば、キックのみというエンジン始動方式だ。現行車のほぼすべては、セルボタン一発でエンジンがかかる。しかしSRは、キックペダルを蹴り込むことでエンジンを作動する必要があるのだ。それは燃料供給方式がFIになっても変わることなく、SRのアイデンティティとして受け継がれている。
変える部分と変えない部分。そんな絶妙なバランス感覚を大切にして、ヤマハは現代もSR400をリリースし続けている。そしてこれからもその名は、バイク史に刻み込まれていくのだ。
DETAIL
RIDING POSITION & FOOT HOLD
●ライダー:身長178cm/体重78kg
シートがフラットなので、前方に座りポジションがきゅう屈に感じても座る位置を後ろへスライドするだけで解決できる。ハンドルまでの距離は、スタンダードに腰を下ろすと近からず遠からず。しかし、実際にライディングポジションを取ってみると少し低い印象だ
車体もシートもスリムで足つきはまったく不安に感じることはなかった。車体の重心が低くなっているからか、ハンドルから手を離してもフラつくようなことはなかった。もちろんまたがったままステップの足を乗せ替えたり、サイドスタンドを出すのも問題ない
●ライダー:身長178cm/体重78kg
シートの前方に詰めないでソロと同じ位置に座っても、タンデマーと干渉することはほとんどなかった。両足でしっかり支えられるので、タンデマーが乗り込むのときにも車体がフラつくことなく、不安に感じることはなかった
●タンデマー:身長151cm/体重43kg
シートは、奥行きはさほどないもののきゅう屈というほどではない。厚みがありすっぽりお尻がおさまるので安定感があり、座り心地は良好。細い棒状のグラブバーはしっかりにぎり込むことができるので、かなり安心感は高い
COLOR VARIATION
SPECIFICATIONS
- 全長×全幅×全高
- 2,085×750×1,110mm
- 軸間距離
- 1,410mm
- シート高
- 790mm
- 車両重量
- 174kg
- エンジン型式・排気量
- 空冷4ストロークOHC 2バルブ 単気筒・399cm3
- 最高出力
- 19kW(26ps)/6,500rpm
- 最大トルク
- 29N・m(2.9kgf・m)/5,500rpm
- タンク容量
- 12L
- 価格
- 57万7,000円
STAFF’S IMPRESSION
軽快な走りで、街中からツーリングまで楽しい
ややハンドル位置が低く感じたけれど、ポジション、足つきともにとくに不安はない。ちなみに足つきは両足だとツマ先、片足だと土ふまずぐらいまで着く。また、シートのクッションの弾力などが自分に合っているのか、かなり心地よく、振動を感じても疲れにくかった。単気筒エンジン独特の心地よい鼓動感をどちらも感じられるけれど、私はキャブ車のドコドコ感が機械的なら、インジェクションのドコドコ感はモーター的という印象を受けた。
FI化しても“らしさ”は健在
僕の愛車もSR(インジェクションではありません)。モデルチェンジを受けても基本は変わらず、車体も軽いから、扱いには全然不安を感じない。FI化されたSRはピストンの上死点を探すたびにモーター音がするので、ちょっと知らない人みたい。でも鼓動感やアクセルの反応は以前のままだし、始動性がアップしているくらい。走行性だって近寄りやすさがある。単気筒の味わいを感じながらトコトコ走るのもいいし、400ccこそのキビキビした走りも楽しい。懐の深さは健在です。
オーナーだけが味わえる“所有感”
クラシカルな外観やスリムな車体は親しみやすさ満点。威圧感とはいっさい無縁で“トコトコトコ…”という軽快な鼓動感も楽しい。キックスタートは、コツがつかめるまでは少々苦労するものの、いかにも“点火”といったようすで“ド…ドルン!!”とかかるのがなんとも人間的。コツを覚えると「どれどれ…、OK、私がかけてあげますよ」なんて親心まで芽生えてくる。「誰でも気負わず乗れるけど、実際に乗れるのはあえて選んだライダーだけ」、そんな美学めいたところも大きな魅力だと思います。