快適性や使い勝手に加え安全性も高まっている
ここ数年、新しい技術を投入したブランニューモデルを毎年ラインナップに加えてその元気っぷりを感じるカブト。今年もすでに通気性にすぐれたフルフェイスのシューマが発売となっている。ただ、その一方でフルフェイスのフラッグシップモデルが2014年に発売されたRT‐33以降登場しておらず、その発表を待ちわびているライダーがいるのも事実だ。
そんな中、ついにフラッグシップモデルとしてF‐17が発売となった。6ヶ月ほど前、最初に発表されたのは風洞実験室を思いっきりフィーチャーしたティザー広告だった。その動画からは、早くから空力性能を追求してきた同ブランドにとってF‐17は、空力性能の現時点における集大成だといわんとしていることが伝わってきた。
実物を目の当たりにして、スタイリングにおいて目につくのは、走行中に発生する帽体付近の気流をコントロールしてライダーへの負荷を軽減するウェイクスタビライザーが、2世代前のフラッグシップFF‐5V以来の別体式になっているところ。加えて、頭頂部に新たなスポイラーが装備されたのも目を引く。
もちろん目に見えるところだけではなく、根本ともいえる帽体自体も新しくなっている。高性能ガラス繊維と引っ張り強度、弾性にすぐれた有機繊維を組み合わせた同社独自のA.C.T.(アドバンスド・コンポジット・テクノロジー)構造が、従来品よりも進化したA.C.T.‐2になっており、さらにFEM(有限要素法)構造解析を導入して各部の強度を最適化することで、安全性と首への負担を低減する軽さを追求している。ちなみにLサイズの実測値は1.6kgで、以前測ったさまざまなヘルメットの重量と比べてみると、かなり軽量なモデルといえる。
ヘルメット内の快適性に直結するベンチレーションは、チンガード部分が開口幅、面積ともに大幅に増し、さらに頭部はセンターに加えてサイドベンチレーションを左右に採用している。このサイドベンチレーション、コーナリング時の姿勢でも効率よく風をとらえ、直進時の姿勢と同等のエア導入を目的として装備されたとのこと。快適性の追求という点では、シールドの密閉性と静粛性の向上を狙って新形状の一体式トリムラバーを採用しているのも見逃せない。
さらに転倒などのアクシデント時に他人が簡単かつすばやく安全にヘルメットを脱がせられるように、チークパッドの内装ウレタン材を引き抜くことができる独自のエマージェンシーシステムも採用している。
実際にかぶってみると、インナーパッドをおおう生地の肌触りがよくて、左右上下に激しく動かしてもブレないほどしっかりと頭全体がホールドされているはずなのに、やさしく包まれているような印象を受けた。
レースユースにおいても、Moto2に参戦するヤリ・モンテッラ選手やMoto3の鳥羽海渡選手が現在実戦で使用していることからもわかるように、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)レーシング・ホモロゲーション・プログラム・フォー・ヘルメット(FRHPhe‐01)の承認を受けているバージョンもあり、MFJ公認なので、国内のレースで使用するにあたってまず問題はない。
このように細部までしっかり見てみると、これまでに実用化されたさまざまなテクノロジーがぎっしりと詰まった、まさにフラッグシップにふさわしいモデルなのだ。
最先端のエアロフォルムを採用
CFD(3次元数値流体解析)を駆使して開発されたKabuto独自の空力デバイス“ウェイクスタビライザー”と、極限まで絞り込んだ前面投影面積を採用した帽体によって、直進時だけでなく横風や後方確認時の空気抵抗も低減。また走行風で発生する揚力(ヘルメットが持ち上がろうとする力)を抑制するデバイス“クレストスポイラー”を新たに採用することで、現在もっとも進んだエアロフォルムとなった。その結果、ライダーへの負担は今までのモデルよりさらに軽減されることだろう。
ウェイクスタビライザー
クレストスポイラー
ヘルメット内の快適性を追求してサイドベンチレーションを新たに採用
RT-33にも採用されていたヘルメット内部にこもった熱気を放出するトップエアロベンチレーションに加えて、どんな状態でもヘルメット内部へフレッシュなエアを取り込めるように、シールドのすぐ上にサイドベンチレーションを装備。これによりコーナーリング時の姿勢でも効率よく風をとらえ、直進時の姿勢と同等のエア導入が可能となった。開口面積・開口幅ともにRT-33より大幅に拡大したチンベンチレーションと相まって、ヘルメット内部の高い快適性が望める。
サイドベンチレーション
トップエアロベンチレーション