ヤマハのレーシングマシンによく見る「YAMALUBE」の文字。これはヤマハが開発したヤマハ車用フルード類のブランドのこと。すなわちヤマハ純正エンジンオイルなどが含まれる。存在自体は知られているだろうが、ではブランドを立ち上げるほどのヤマルーブとは一体どんなものなのだろうか? エンジンオイルを例に挙げ、解説したい。
ヤマハ車に最適なのはヤマハ純正のエンジンエイル
バイクにとってエンジンオイルは非常に重要な役割をになっている。超高回転で動くエンジン内部を保護すべく、摩擦や潤滑、衝撃緩和、冷却、清掃、密閉、防錆など、さまざまな役割をたった一種類のエンジンオイルが担当しているのだ。そしてエンジンオイルはエンジンを守るために摩擦や衝撃、熱、汚れ、サビなどさまざまな悪条件にさらされることになる。だから性能が重視されるとともに定期的な交換が推奨されているのだ。
では、どんなエンジンオイルを使えばいいのか? それを考える際、良し悪しを考える以前に多くの人は「まずは間違いない選択をしたい」と考えるだろう。それにピッタリくるのが車両メーカー純正のエンジンオイルだ。ヤマハ車なら「ヤマルーブ」がそれにあたる。ヤマハ車オーナーやレースシーンに興味がある人なら、ヤマハファクトリーチームのカウルに「YAMALUBE」という文字があるのを見て存在を知っている人もいるだろう。ただし中身まではよく知らないという人も少なくないのではないだろうか。そこで今回はヤマルーブについて解説したい。

そもそもヤマルーブとは、エンジンオイルに限らずヤマハ純正フルード類に与えられたブランドだ。今回はよりわかりやすくするためエンジンオイルを例として出すが、ヤマルーブ製品は例外なくヤマハ車のために開発されている。この「ヤマハ車のために開発された」だという点が一番のポイントとなる。
一般的にエンジンは非常に精密な設定で組み立てられている。各部の寸法は1/10〜1/100㎜単位で管理されていることがめずらしくないし、組み立て時にすき間(クリアランス)を意図的に作ることだってある。そのすき間もたとえば0.25〜0.30㎜にすることが定められている場合も存在する。エンジンオイルとは、そんな厳密な組み立て方をされているエンジン内で機能する性能が与えられているわけだ。
しかし、世の中にはいろんなエンジンがある。単気筒で6,500rpm付近でレッドゾーンに入るエンジンもあれば、4気筒で1万3,500rpmまで回るエンジンもあるし、今度はモデルによっては常用域が6,000rpm付近というツーリングモデルもあれば、一方で9,000rpm以上を使う前提のスーパースポーツモデルだってある。高回転時の動きを重視するのか、低回転時を重視するのかでもエンジンオイルには求められる性能が変わってくる。だから本来、エンジンオイルはそれぞれのエンジンの仕様やモデルごとに求められる性能が変わってくるものなのだ。
そこで注目したいのが、その使用条件をもっとも熟知している車両メーカーの純正エンジンオイルだ。あたり前の話だが、どんなユーザーに向けてどんな使用条件を想定したバイクを発売するのかを一番知っているのは車両メーカー。そういう前提でエンジンオイルを設計するのだから、ヤマハ車ならヤマハ純正エンジンオイルがベストマッチする。一定水準の性能を満たしていればいい、ではなくて、ヤマハ車にとって最適な性能を重視してきたのだ。だからヤマハ車にはヤマハ純正エンジンオイルが間違いない選択となるわけだ。
エンジンオイルとは「液体パーツ」
ヤマハは黎明期から小排気量2ストロークモデルに注力してきたメーカーだ。2ストロークモデルは現代ではなじみが薄くなってきたが、エンジンオイルとは別に2ストロークオイルを混合気に微量に混ぜて燃焼させる構造を採用する。そうしないとエンジンの構造上、潤滑が足りずにシリンダーとピストンが焼き付いてしまうからだ。それだけにヤマハではまず焼き付かないオイルを非常に重視してきており、そのためにベースオイルの質や成分、性能にこだわってきたという経緯がある。

一般的に、エンジンオイルは車両メーカーが「これこれこういう細目のエンジンを採用するマシンを開発するので、それに合うエンジンオイルが欲しい」とオイルメーカーに発注し、それに適した配合をオイルメーカーが割り出して提出、車両メーカーが試験して採用の可否を決める、というプロセスとなる。しかしヤマハは小排気量2ストロークモデルが主力だった時代から性能にこだわりながら、エンジン開発の段階でメカニズムとともにエンジンオイルの役割にも着目しつつ、純正エンジンオイルを開発してきたという歴史がある。ヤマハは自社にオイル分科会という認証機関を用意し、成分から評価を行なっているほどだ。だから他社から与えられたエンジンオイルが一定水準の性能をクリアすれば合格としているわけではなく、ヤマハのエンジンの性能をフルに引き出せる性能なのかを非常に重視している。そこが「一般的な高性能エンジンオイル」とヤマルーブとの最大の違いといえるだろう。

この違いは、ヤマハがエンジンオイルを「液体パーツ」と位置付けていることからもうかがえる。この言葉からも、マシンを構成する要素のなかでも存在感の大きさが垣間見られるだろう。
ここまででヤマハがヤマルーブで何を突き詰めているのかを解説してきたが、そのベースとなるのは高性能であることだ。しかし、そこで勘違いしていただきたくないのが「高性能エンジンオイルは高性能モデル専用ではない」ということだ。
これは一般的によく誤解されるところだが「小型車や廉価なモデルだったら廉価なエンジンオイルでよくて、高性能なモデルなら高性能なエンジンオイルが必須」という認識は正しくない。
じつはエンジンにとってもっとも過酷な条件とは、超高回転時だけではなく低温時、つまりエンジンスタート直後もエンジンにとって過酷なタイミングとなる。エンジンオイルの流動性が低い状態なので十分な保護性能を発揮しにくいからだ。なのでエンジンスタートの直後に暖機なしでアクセル全開で走り出すようなスクーターやビジネスバイクのエンジンはとくに過酷な状態にさらされ続けることになる。
また小排気量車は交通の流れに乗るため、大排気量車なら高回転にしないところでも、アクセルを全開にし続けることもめずらしくないだろう。つまり小排気量車はエンジンを過酷にする環境が整いすぎているのだ。
さらに言えば、アイドリング〜低速時もじつはよくない状態が続くことになる。エンジンオイルはエンジンの回転数に応じてオイルポンプが稼働して循環させるのだが、アイドリング〜低速時にはほとんど稼働しないので、エンジンオイルが十分に循環せず熱がエンジン内に溜まりやすくなる。低速で走る状態もまた、バイクを労わることとイコールではないことも知っておきたい。
つまり、高性能なエンジンオイルはどんなバイクにとっても、どんな乗り方をするにしても重要になる。むしろ小排気量で過酷な使用条件が想定されるのならなおさらだし、自分はエンジンを回さずゆっくり走るという人にとっても重要だとも知っていただきたい。
ヤマルーブは、自社の小排気量車から最新スーパースポーツまで広くカバーすることを目的に開発されている。そのヤマルーブのなかでもさまざまなグレードが設定されているが、いわゆる最新スーパースポーツモデル用だけが高性能で、小排気量車向けが廉価版という位置付けではなく、いずれもが高性能なのが前提で、かつヤマハ車に適した設定であるのだ。
たとえばヤマハ最速モデルのYZF-R1を例に挙げよう。YZF-R1にはエンジンオイルを最大限活用するメカニズムが採用されている。もちろんヤマルーブ使用が大前提だ。そしてそのヤマルーブだが、YZF-R1だとヤマルーブ最高峰モデルのRS4GPの使用が想定されて開発されている。それよりも低価格のスタンダードプラスと比較して、後者はYZF-R1にとって低性能だから不向き、というわけではない。性能の高低があるから向き・不向きがあるのではなく、あくまで個別のバイクごとの性能や用途に応じてエンジンオイルも設計されているのだ。このあたりはマッチングの違いといってもいいだろう。

ヤマハはよく知られるように、バイクだけではなく船舶用の発動機やスノーモービル、ビークル、さらにはトヨタに四輪用エンジンを供給する総合内燃機メーカーでもある。そういった各部門での知見がヤマルーブというブランドに集まり、さらに過酷な条件にさらされるバイクのエンジンオイルとして完成されている。そうやって長年にわたって蓄積された膨大なデータや経験に基づき、自社製品のために開発されたヤマルーブ。世のなかにはさまざまな高性能エンジンオイルが存在するが、ヤマハ車のために開発されたエンジンオイルはヤマルーブしか存在しない。ヤマハ車オーナーがヤマルーブを選ばない理由など、もうないだろう。
ヤマルーブ製品ってどんなのがあるの?
YSPなどヤマハ正規取扱店はもちろん、量販店でも見られるヤマルーブ製品。そこでどんな製品があるのかをここでは紹介したい。ここで紹介したモノだけではなく、幅広いラインナップを誇るので、気になる人はワイズギアのウェブサイトをチェックいただきたい。

ヤマルーブ RS4GP 1L
ヤマルーブシリーズ最高峰モデルと位置付けられるエンジンオイル。ヤマハのMotoGPレーシングチームで技術開発されたテクノロジーを高次元でフィードバックしており、高負荷、高回転での過酷な条件に耐える油膜保持性、せん断安定性にすぐれ、長時間安定して高い潤滑性能を発揮。とくに高性能エンジンに適したオイルとなっている。YZF-R1推奨オイルだ。(税込み3,872円)
ヤマルーブ スタンダードプラス 1L
コストパフォーマンスにすぐれたエンジンオイルで、スタンダードという名称からもローグレードモデルと思われがちだが、ヤマハ車の開発テストに使用されるほか、工場出荷時にもベーシックモデルとして充填されているエンジンオイルだ(※一部車種を除く)。スポーツ走行からタフな業務使用まで幅広い用途に対応する。(税込み1,617円)
オイルチェンジキット Aタイプ(オイルフィルター付き)
エンジンオイルを交換しやすいようヤマハ純正部品とオイルをまとめたエンジンオイル交換キットも用意されている。エンジンオイル交換時に必要なモノから、あったら嬉しいモノまでをワンパッケージにまとめているので、DIYメンテナンスにトライしたい人にピッタリだ。オイルは「YAMALUBEプレミアムシンセティック」で、漏斗もYAMALUBEオリジナルデザイン。ここで紹介するのは1L缶×3、オイルフィルターカートリッジ、ドレンガスケット、漏斗、計量カップ、手袋、紙ウエス、給油材(4.5L用)などのセットだが、対応車種ごとにA〜Eタイプを用意する。(税込み8,800円)
ヤマルーブ ブレーキフルード(DOT4/BF-4)500ml
ヤマルーブにはブレーキフルードも設定されている。もちろん、こちらもヤマハ車にとって最適な性能を得られる製品だ。高沸点、防錆性、安定性、ゴム劣化防止性にすぐれ、(DOT4/BF-4)規格に合格した非鉱油系の高品質ブレーキフルードとなる。リブチルアミン未使用。(税込み1,408円)
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