キャンプの楽しみと言ったらキャンプ飯に焚火!暑い夏だからこそ、熱々のキャンプ飯を楽しもうじゃないか。ということで、ダッチオーブンとダッチオーブンを使ったキャンプ飯レシピを紹介していこう。
まずはダッチオーブンだからこその料理を美味くする3つの特長
1.高いウォーターシール機能
ダッチオーブンのフタには段差があり、その表面には非常に細かい溝がある。加熱調理すると内部から発生した水分がすき間を密閉して高い圧力を保持。これによって短時間でふっくらとした仕上がりになる。
2..加熱・加圧に役立つフタ
多くのダッチオーブンのフタは鉄できている。重い鉄製のフタはウォーターシール機能に役立つだけでなく、熱を効率よく伝えられるため、フタ側から加熱して調理もできる
3.たくさんの熱を蓄えるボディ
ボディも厚い鉄でできており、熱を大量に蓄えられる。そのため食材を入れても温度低下が少なく、料理の味に大きく影響する。ゴツい中華鍋で作ったチャーハンがおいしいの
バイクで使うとなるとコッヘルで十分なのでは?
軽く・省スペース化にすぐれるコッヘルはキャンプで役立つアイテムだが、上で紹介した機能は期待できない。ウマいキャンプ飯のために、コッヘルの代わりにダッチオーブンを愛用するライダーも多いのだとか。
バイクキャンプに合う形状を選ぶ
ダッチオーブンの種類はどんなのがあるの?
鋳鉄製
ザ・キャンプ飯の風格
使い込まれてブラックポッドに仕上げられた鋳鉄ダッチオーブンは美しさだけでなく、誰にでも簡単にウマい料理が作れるという。このことから鋳鉄ダッチオーブンはアウトドアファンからの人気も高く、各メーカーからリリースされている製品は鋳鉄製が主流となっている。ちなみにここで紹介する鋳鉄製品はすべてシーズニング済み、または不要となっている。
LODGE キッチンオーヴン10 1/4インチ
内径×深さ φ25.7×10(㎝)/重量:6.1㎏ /1万2,420円
キャストアイアン(鋳鉄)にこだわり抜き、120年以上愛され続けているアメリカ生まれのダッチオーブン。同社の長年の研究により、長年使い込んだもののように表面がコーティングされて風格ある仕上がりになっている。工場出荷時から大豆油で慣らし済みで、お湯で洗えば新品時からすぐに使えるお手軽さも魅力だ
COLEMAN ダッチオーブンSF(8インチ)
内径×深さ(約)φ18.5×7.7(㎝)/重量:3.7㎏/6,480円
テントやシュラフをはじめ、焚き火台やパドルボートといった幅広いアウトドア製品を展開しているコールマン。少人数のキャンプにピッタリなサイズと軽量なボディでキャンプツーリングでも使いやすい。熱くなったフタの開閉に役立つリッドリフターも付属。使いたいときにすぐに調理が始められる植物性オイル仕上げだ
LOGOS SLダッチオーブン8inch(バッグ付き)
内径×深さ(約)φ18.5×7.7(㎝)/重量:3.7㎏/6,480円
屋外と人を繋ぐ第一ブランドを提唱するロゴスらしいリーズナブルな価格設定が魅力のダッチオーブンだ。植物性油を使用しており、丸洗いしてすぐに使えてシーズニングいらず。鋳造ながら気負わず使える手軽さ、4㎏を切る軽量なつくりが魅力だ
黒皮鉄板
性能・価格は両者のいいとこ取り
1,200℃まで加熱した鉄を圧延する工程でできる酸化被膜を持つ鋼鉄を黒皮鉄と呼ぶ。黒皮鉄のダッチオーブンはステンレス製と同じく1枚の鋼板からできており、ヒートショックや衝撃に強く、黒皮による被膜が赤サビの発生を抑えてくれる。実用性にすぐれながら比較的安価で、また鉄器が持つ風合いも楽しむことができる
UNIFLAMEダッチオーブンスーパーディープ 8インチ
内径×深さ:約φ20.5×9.5(㎝)/重量:約4.2㎏/9,900円
‘ユニークな炎(フレーム)を創造するという理念から創設された日本のアウトドアメーカー・ユニフレームのダッチオーブン。業務用の中華鍋やフライパンにも使われ、熱伝導に優れる黒皮鉄板を採用。使用の際はシーズニングをする必要があるが、洗剤で洗えるなどメンテナンス性にすぐれた機能が特徴
ステンレス製
メンテナンスがラク
クロム(Cr)を含んだきわめてサビにくい鋼鉄がステンレスだ。落下などの衝撃やヒートショックに強く、洗剤による水洗いも可能で収納時は油の塗り込み(P29参照)も不要。鋳鉄製ダッチオーブンがもつ弱点を改良した材質だといえる。価格が高く、ブラックポッドのような風合いを出すことはできないが、調理器具としての機能は申し分なく、実用性はピカイチだ。
SOTOステンレスダッチオーブン8インチ ST-908
内径×深さ 約φ20.6×9(㎝)/重量:約3.5㎏/1万9,440円
炎の総合メーカー新富士バーナーのアウトドアブランド・ソト。ガスバーナーやガスストーブのほか、燻製用品といった製品を手がけている。このダッチオーブンは丈夫なステンレス鋼板からプレス製造によってつくられており、非常に高い耐久性が特徴。またすぐれた蓄熱性を持つことで、さまざまな調理メニューにも対応可能だ
シーズニングって何?
新品のダッチオーブンは、サビの発生を抑えるワックスが付着している製品もある。これを洗い落としてニンニク・タマネギなどのクズ野菜を炒めることで香りづけし、油をなじませる作業をシーズニングという。バイクでいうところの新車の慣らし運転のようなものだ。
コゲ落としを行なったあとなどに必要なケースもある。かつて鋳鉄製ダッチオーブンでは必要不可欠とされた作業だが、近年は初期シーズニング済み、または不要とする製品が多くなっている。いずれにせよこの作業を面倒だととらえるか、道具へ対する愛情だととらえるかはユーザーしだいだろう。
ここからはダッチオーブンを使ったキャンプ飯レシピを紹介
ローストビーフ
① ダッチオーブンを火にかけて予熱を与える。これはプレヒートと呼ばれる作業で効率よく食材に熱を加えるための必須工程らしい。燻製にしたかったが、今回はスモークチップが入手できなかった…
② 適量に切ったブロック肉全体に天然塩をもみ込む。今回は空のフィルムケースに入れて持参した岩塩を使用
③ 底網(中敷き)を入れたダッチオーブンに岩塩をもみ込んだブロック肉を投入してフタをする。そのあと火力は弱火にし、フタに炭などの火種を置いて弱火で加熱した
④ この状態で20分ほど焼いたら肉の中心まで金属製スプーンを刺す。5秒数えてから引き抜き、唇に当てて温かく感じれば完成だ。本来は金串を使うのだとか…。ちなみに火力不足のせいか肉がデカすぎたせいか、焼き時間は30分ほどかかった。瓶詰めの粒マスタードとニンニク醤油を用意して、2種類の味が楽しめるようにした
用意したもの(4人分)
牛もも肉ブロック… ………………………600g
天然塩……………………………………適宜
粒マスタード・おろしニンニク・醤油… …適宜
魚介のパエリア
① サフランを400㏄の水に浸ける
② アサリは水に浸けて砂を抜き、イカはあらかじめワタが取り除かれたパック品を使った。イカは食べやすい大きさに切ってエビは皮をむく。ピーマン・トマトはサイの目切り、タマネギはみじん切り
③ ダッチオーブンに大さじ1杯のオリーブオイルとおろしニンニクを熱して香りを出したらエビ・イカ・ピーマン・トマト・タマネギを炒める
④ 油が全体にまわったら白ワインを入れて軽く煮立て、いったん別の容器に移す
⑤ 空になったダッチオーブンにオリーブオイル大さじ2杯を入れて熱したら米を加えて炒める。今回は無洗米を使用
⑥ ④の材料と煮汁をダッチオーブンに戻してサフラン水を加え、塩で味付けして混ぜながら少し煮詰めた。ローストビーフと違ってやることが多くて大変
⑦ 水分が減りはじめたらアサリとホタテを形よく乗せ、プレヒートしたフタをかぶせて煮る。やっとフタができる
⑧ と思ったがけっこうすぐに吹きはじめ、水が不足していたので追加。米が煮えてアサリの口が開いたところで完成
用意したもの(4人分)
エビ…………………………………………4尾
アサリ………………………………………1パック
イカ…………………………………………1杯
ホタテ貝柱…………………………………適宜
タマネギ……………………………………1個
トマト… ……………………………………1個
ピーマン……………………………………1個
おろしニンニク… …………………………適宜
米…………………………………………2合
水…………………………………………400㏄
白ワイン……………………………………200㏄
オリーブオイル… …………………………大さじ3杯
サフラン……………………………………ひとつまみ
塩・コショウ… ……………………………適宜
豚ヒレ肉のトマトソース煮
① ニンニク・タマネギ・鷹の爪をみじん切り
② 食べやすい大きさに切った豚ヒレ肉に塩とコショウをふる
③ プレヒートしたダッチオーブンにオリーブオイル大さじ1杯を入れ、肉の両面を焼く肉に火が通ったらいったん取り出しておく
④ ダッチオーブンに残った肉汁にオリーブオイル大さじ2杯を加え、ニンニクとタマネギを炒めた。タマネギが透き通ってきたので鷹の爪と缶トマトを加え、オレガノとバジルも追加
⑤ トマトをつぶしながら煮込み、全体量が2/3程度になるくらい煮詰まったら塩とコショウで味を調整
⑥ ③で取り出した肉をダッチオーブンに戻して温めたら完成。最後に彩りとしてみじん切りにしたパセリを加えた
用意したもの(4人分)
ニンニク……………………………2片
タマネギ……………………………2個
鷹の爪……………………………1本
豚ヒレ肉ブロック… ………………約500g
コショウ… …………………………適宜
塩…………………………………適宜
オリーブオイル… …………………大さじ3杯
トマト缶詰水煮… …………………約200g×2缶
オレガノ……………………………適宜
バジル………………………………適宜
パセリ………………………………適宜
鶏の丸焼き
① 鳥肉を洗い、皮をむいたニンニクとローズマリーを鶏のお腹に詰める。
② お腹に入るだけニンニク&ローズマリーを詰めたら、楊枝で尻を縫うようにとめる
③ オリーブオイルと塩、コショウを混ぜ合わせて鳥肉に揉み込む。この間に底網を入れたダッチオーブンを高温にプレヒートしておく
④ 十分にプレヒートしたら火力を弱火にして鳥肉を入れる。フタをして上火も弱火で約60分焼くそうだが、鶏がデカすぎて生焼けだったので今回はもう30分焼き時間を追加
用意したもの(4人分)
ニンニク……………………………………2株
ローズマリー………………………………たくさん
鳥肉………………………………………1羽(約800g)
オリーブオイル… …………………………大さじ3杯
塩…………………………………………小さじ1杯
コショウ… …………………………………小さじ1杯
楊枝………………………………………1本
熱で料理は美味くなる
高温を維持することは、ウマい飯をつくるための必須条件。そのためプレヒートと呼ばれる作業が必要になる。要は食材を入れる前にダッチオーブンを空焼きして予熱を与えておくことなんだけど、その状態でたとえば肉を入れれば、その肉の表面はすぐに焼ける。つまり旨味を瞬時に閉じ込められるというわけだ。
プレヒートをしておけばたいていうまくいく!?
家庭用の電気オーブンでトーストや餅を連続で何個も焼いたとき、1回目よりも2回目の方がおいしく感じた…、なんて経験はないだろうか? これはオーブン内があらかじめ温められていたことで起こる味の変化で、ダッチオーブンでも同じ現象が起こる。普段から料理をする人にとっては常識かもしれないけれど、オーブンで料理する場合、多くのメニューには予熱というものが必要になる。で、これをやらなければどうなるかというと、熱の伝わり方にムラができて中心は生焼けなのに表面だけがコゲたり…といった失敗を起こしやすくなるのだ!
フタの加熱は火種を置く密度で調整が可能で、すき間なくギッシリと配置すれば強火になる。短時間でプレヒートしたい場合に有効だ
キャンプ後の手入れ
最後に解説するのは、自宅に持ち帰ったダッチオーブンの洗い方と保管方法だ。これは鋳鉄製ダッチオーブンのやり方なので、ステンレス製や今回使った黒皮鉄板製ダッチオーブンはいくつかの工程を省略できる。
①お湯を使って汚れを落とす
鋳鉄製ダッチオーブンを洗剤で洗うと表面の油分が失われるだけでなく、こまかい穴に洗剤が入り込んで調理の際に悪影響をおよぼすこともある。必ずお湯で洗うこと。ステンレスや黒皮鉄板製は洗剤を使っても大丈夫
②空焚きして水分を飛ばす
表面に水分が残ると赤サビの原因になるので、空焚きによってそれらをすべて蒸発・乾燥させる。フタや持ち手も同様に乾燥させておこう
③油をなじませる
ダッチオーブンが熱を持っているうちに、布やキッチンペーパーなどを使って植物性無塩油を薄く塗り込む。内側だけでなく外側、底、フタ、持ち手など細かいところも忘れずに。その後、また少し焼いてから余分な油を拭き取る
④新聞紙で包んで保管する
熱が十分に冷めたら、フタとボディは別々に新聞紙で包み、収納袋などに入れて保管する。保管が長期におよぶ場合は、鍋の中に丸めた新聞紙をさらに追加しておくといい。新聞紙が湿気を吸ってサビの発生を抑えてくれる。また保管場所は床や地面に直接置くと湿気の影響を受けてサビやすいので、図のように木片やレンガなどを下に敷いて直接触れないようにする
ここで紹介したダッチオーブンを使ったレシピなどはほんの一部に過ぎない。まだまだ色々な楽しみ方ができること間違いなしなので、ぜひともダッチオーブンデビューしてみてはいかがだろうか。
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