インダストリアル・デザイン・ディレクターのオラ・ステネガルドさん新型スカウトを語る

2024年7月11日、ポラリスジャパンはインディアン・モーターサイクルの新型車“Scout(スカウト)”シリーズの国内発売を記念したジャパンプレミアを開催した。2014年に水冷エンジンを搭載し登場した新生“Scout”シリーズは、以降バリエーションモデルを増やし、インディアン・モーターサイクル(以下インディアンMC)の中核モデルとなった。国内発売が決まった新型“Scout”は、その“Scout”シリーズの最新モデル群。フレームとエンジンを共有しながら、ホイールサイズや足まわり、外装類を変更してキャラクターを分けた5モデルを、発売と同時にラインナップした。アジアにおける販売拡大も図るポラリスにとって、アメリカに次ぐ大きなクルーザーマーケットを持つ日本は重要であるとして、そのジャパンプレミアを強力にサポート。本社から、新生“Scout”シリーズの開発や販売に欠かせないキーパーソンを日本に送り込んできた。

今回は、インディアンMCのすべての車両開発において、車体設計とデザインを統括するインダストリアル・デザイン・ディレクターのオラ・ステネガルドさんに話を聞くことができた。すでにタンデムスタイル本誌Vol.268にショートバージョンを掲載しているが、ここではより詳細に迫ったロングバージョンを用意したので、新生“Scout”シリーズに興味がある人にはぜひとも目を通してほしい。
「スカウトは、発売後約10年で10万台のセールスを記録している、現インディアンMCの中核モデルだ。そしてスカウトが初めてのインディアンMCであり、初めてのバイクであるというライダーも多い。そのスカウトを新しくすることの意味は、コレまでの価値をひっくり返すようなRevolution=革命的なモデルではなく、これまでのスカウトが積み重ねてきた価値をさらに広げるEvolution=進化したモデルでなくてはならない。チームでは、そんな共通意識を持って開発に当たった」とステネガルド氏は言う。

そして車体開発において、アメリカンクルーザーらしさにもこだわったという。
「Keep it simple, Keep it clean(シンプルに、そしてクリーンに)。新型スカウトのデザイン開発においては、それを常に、そして強く意識した。分かりやすく言えば、燃料タンクは燃料タンクらしく、フェンダーはフェンダーらしく、シートはシートらしくデザインされていること。それでいて説明書なんて見なくても、簡単な工具さえあれば誰もが取り外せること。そういうことだ。簡単なことのように聞こえるが、コレが難しい。いまバイクは市場が拡大し、また安全性や生産効率を高めるため、デザインも車体構成も複雑になっているからだ。しかしアメリカンクルーザーはライダーのライフスタイルの一部になるし、長く乗ることを前提としているので、そういった方程式からは独立するべきだと考えている。だから新型スカウトは、シンプルでクリーンであることを望んだのだ」

そしてシンプルであるがゆえに大切にしたのが、人間の感覚。ライダーがまたがり、タンクに触れ、ハンドルをにぎり、ステップに足を乗せる。バイクと人間の関係を構築するのは、ライダーが直接触れる部分だからだ。
「我々は手作りのデザインを大切にしている。車体デザインの開発において、フレームに使用するスチールパイプは手曲げし、外装をデザインする際には、クレーと呼ばれるデザイン用粘土を使い、その表面を手で削って成型する。もちろん各種製作機器やコンピュータも駆使している。今やデザインの現場にも、それらはなくてはならないモノだ。しかしそれらはあくまで、デザイナーの仕事をサポートしているだけだ。バイクはライダーがまたがり、操作する。そのライダーが感じるタンクやシート、ハンドルやステップの位置や触り心地、そして操作感はとても繊細で、そのモデルを評価する大きなバロメーターとなる。もちろん新型“スカウト”シリーズのデザインも手作りした。5つのモデル、どれにまたがっても、我々が大事にしてきたことをすぐに理解できると思う」

そうやって構築した新型スカウトシリーズの“スカウトらしさ”とは、どこにあるのだろうか?
「デザインのキーポイントは、燃料タンク上面からリヤタイヤの中心につながる曲線だ。これは1920年にデビューした初代スカウトにも採用されていた象徴的なボディラインだ。両サイドがストンと落ちた燃料タンクのデザインも、初代から継承した。また新しくなったスピードプラス・エンジンのデザインは、大型クルーザーモデル/チャレンジャーに搭載しているパワープラス・エンジンからインスピレーションを受けている。同じ水冷エンジンを搭載する兄弟エンジンとして、その親和性を高めた」

また車両とともにラインナップされた純正アクセサリーパーツも、車両デザインと同時進行でデザインされている。カスタムと聞くと大げさなデザイン変更やパフォーマンスアップをイメージするが、彼らが言うカスタムとは幅広く、なかでもハンドルやステップ位置を変更するライディングポジションの変更がとても重要だという。
「ライダーの体格や走り方、居住地域は幅広く、それによって好みのスタイルは異なる。カスタムとは、そのライダーひとり一人にフィットさせるためのアイテムや、その方法のことだ。車両開発をしながら、そのカスタムの拡張性を探り、パーツをそろえて同時進行でデザインしていくのは大変な作業だが、新型スカウトでは幅広いスタイルに対応できるアクセサリーもラインアップした。それらを駆使すれば、日本のライダーにも気に入ってもらえると確信している」


メーカーの新型SCOUT詳細ページはこちら

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問い合わせ先
ポラリスジャパン
URL
https://www.indianmotorcycle.co.jp

 

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