東京モーターショー2017にも展示され、大いに注目を集めていた新型ゴールドウイング/ツアー。
2018年4月には国内販売もスタートする話題のニューモデルの開発者に話を聞いてきたので、その詳細をお送りするぞ。
開発のコンセプトに関して
1975年のGL1000の登場から、ホンダのフラッグシップモデルとして進化を遂げてきたゴールドウイング。
モデルチェンジのたびに装備を充実させ、ボディサイズ&排気量を拡大してきたワケだが、第6世代目となる今回の新型ゴールドウイングでは、バイク本来の魅力の原点に立ち返りあえて軽量&コンパクト化に注力。
その結果、従来モデル比(エアバッグ付きモデル)で41kgもの軽量化を実現したのだ。
もちろん、それに加えてエンジン&制御システム、スタイリングなども刷新している。そのなかでも注目の新型サスペンションと新型デュアル・クラッチ・トランスミッションについて解説するぞ。
ダブルウィッシュボーンサスペンションに関して
まず、注目のポイントは新開発のダブルウィッシュボーンサスペンション。通常、バイクのフロントフォークに使われているサスペンションはテレスコピックと呼ばれるタイプの場合が大半で、ダブルウィッシュボーンという名称を聞き慣れない人も多いのでは?
クルマ好きの人であれば、スポーツカーやハイグレードなセダンなどに採用されているサスペンション形式であることにピンと来るのではないだろうか。
ホンダでは新型のNSXやレジェンドなどに採用されるサスペンション形式で、鳥の胸部分の骨(WishBone)に似た形の2組のアーム(アッパーアーム&ロワアーム)でタイヤを支えることで、快適な乗り心地と高い操縦性の両立が狙えるのがダブルウィッシュボーンの特徴。
このサスペンションを新採用することにより、足元のスペースを犠牲にすることなくライダーの乗車位置を前方に移動させられ、それによりスクリーンやフロントカウル全体もより低くコンパクトなデザインを実現可能になったのだ。
図で見るとダブルウィッシュボーンサスペンションを採用することで、タイヤの動き方が変化していることが分かりやすい。
従来のテレスコピックタイプでは、サスペンションのストロークと同時にタイヤが斜め後ろに下がってくるため、フロントまわりに余裕を持たせタイヤが動くためのスペースを確保しておく必要があった。
しかし、ダブルウィッシュボーンサスペンションの採用により、タイヤがキレイに上下動するようになるためフロントまわりの省スペース化を実現。エンジンの搭載位置もより前方(従来モデル比で24mm前)に移動することができるようになったのだ。
さらに、路面からの入力を受け止める緩衝部とハンドルを操作する操舵部がタイロッドとリンクを介してつながっているため、ハンドルへの振動が約30%も低減されているというから、その乗り味にも期待が高まる。
Dual Clutch Transmission(DCT)に関して
2010年にVFR1200Fに初搭載されたDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)。
カテゴリー的にはAT(オートマチックトランスミッション)に分類されるが、無段階変速となるCVTとは違い、構造的にはマニュアルトランスミッションに酷似している。クラッチ&シフトチェンジの操作を自動化したマニュアルトランスミッションという感じの変速方式だ。
NC750シリーズやCRF1000L アフリカツインなどにも搭載されてきたこのシステムだが、既存のモデルとは一線を画す仕上がり具合ということで、ホンダではVFR1200シリーズに搭載したDCTを第一世代、NC750シリーズやアフリカツインに搭載したDCTを第二世代、新型ゴールドウイングに搭載したDCTを第三世代と呼んでいる。
7速の多段ミッションは低速側をクロスレシオとすることでシフトショックを減らすとともに、高速側をワイドレシオとすることで高速巡行性能を高めエンジンの静粛性を大幅に向上。
また、各部にダンパーやラバーを採用することでシフトチェンジの際の音&振動の低減にこだわり、フラッグシップにふさわしい上質なシフトフィーリングに仕上げられているという。
さらに、新たに電子制御スロットルとの協調システムも搭載。シフトチェンジの際に自動でスロットルバルブの開度を調節することにより、変速タイミングの短縮やシフトショックの低減も達成している。