驚異のベストセラーの秘密に迫った一冊
この本の筆者である中部 博氏は25年にわたり、ホンダ・スーパーカブに関わる開発者や一般ユーザーを取材してきたノンフィクション作家だ。
中部氏はスーパーカブが17年に生産累計1億台を突破したとき“1億台の正体”というものに興味を持ったという。
確かに、町を歩けばカブを見ない日はないと思えるほど日常の風景に溶け込んでいるオートバイがスーパーカブだ。だから“1億台到達”のニュースも“カブならそうだろうな”と、なんとなく当然感があった。
だが、考えてみると“1億台”とはとてつもなく巨大な数字である。なにせ、タイヤがついた乗り物でその数字を達成した工業製品は世界中皆無なのだ。
“よく出来ているから売れた”だけでは到底成し得ない数字だろう。一体、どうあればこんなにも売れる工業製品が、存在し続けられるのか?
この答えを知るべく中部氏は18年にアジア・南米各地でスーパーカブ取材を敢行する。虫の目の如く世界をめぐる旅は大変ではあったが、スーパーカブに関わる人々との出会いは、喜びの時間でもあったそうだ。
そして、誕生した『スーパーカブは、なぜ売れる』。
本の中には“1億台”という数字に秘められたイズム・戦略・葛藤・努力…がつづられ、読者はスーパーカブ誕生から59年の間、世界中で繰り広げられたいくつもの人間ドラマを知ることとなる。カブ乗りはもちろん、モーターサイクルシーンに関わる我々必読の書といえる一冊だ。
写真・文:武田大祐
書籍情報
- 書籍名
- スーパーカブは、なぜ売れる
- 著者
- 中部 博
- 発行
- 集英社インターナショナル
- 価格
- 1,620円(税8%込)
- 体裁
- 四六判ソフトカバー/256ページ
中部 博 プロフィール
1953年生まれ。週刊誌記者・テレビ司会者を経てノンフィクションの書き手になる。『本田宗一郎伝』『1000馬力のエクスタシー』『炎上』『風をあつめて、ふたたび。』などモータースポーツにまつわる本を多数執筆