【連載】BMWの誇るアドベンチャーモデル“GSシリーズ”をもっと知ろう!PART.1 前編

文:松井 勉

休日のツーリング先でBMWのGSに出会った人は少なくないと思います。GSはBMWが誇るアドベンチャーバイク。現在、1250ccの水平対向エンジンを搭載するR1250GSシリーズ、直列2気筒エンジンを搭載するF750/850GSシリーズ(ともに排気量は850㏄)、そして単気筒エンジンを搭載するG310GSシリーズがラインナップされています。

 

今年、そのGSが発売開始から40周年を迎えました。そこで「GSをもっと知ろう。」企画でその歴史と今を紹介します。そのGSがスゴイさとは、この40年間、絶えず進化し、ファンを楽しませてきたこと。本題に入る前に、GSを造っているBMWについて話を始めましょう。

ドイツの南部、バイエルン州の州都であるミュンヘンに本社があるBMW。ちなみにBMWとは、バイエリッッシェ・モトーレン・ヴェルケ(Bayerishe Motoren Werke)の頭文字をとったもの。日本語で言えば「バイエルンのエンジン工場」となります。そのBMWが最初にバイクをリリースしたのは1923年。もうすぐ100年が経ちます。

R32と呼ばれるモデルは500㏄の水平対向2気筒エンジンを搭載し、その動力をドライブシャフトで後輪に伝えるシステムでした。ちなみに、路面に対して左右に突き出した水平対向エンジンの愛称が「ボクサーエンジン」というのをご存じですか? シリンダー内を往復するピストンの動きが、あたかもボクシングで殴り合うように見えることからそう呼ばれます。BMWのRシリーズに現在も搭載されるこのタイプのエンジンが2気筒なためボクサーツインと呼ばれ、BMWの伝統的なエンジンとなっています。

BMW R32
BMW R32

BMWの歴史については『BMWという名前の歴史を紐解く』のサイトが詳しいので、是非。青と白のシンボルマークの秘密について語った『BMWロゴの意味とは』も。創業の地、バイエルンと大きく関係しているのもここから解ります。面白いですよ、これ!

BMW初の市販車の時代に話を戻します。R32を出した当時、BMWは多くのライバルメーカーと同様、自社製バイクの優秀性を走りでアピールし始めます。最高速や都市間を結ぶ長距離レースに参加。市街地をのぞけば未舗装が多かったその時代。バイクの性能は、耐久性や信頼性があり、故障をしないことも「速さ」だったのです。都市間レースはいわばハイペースなツーリング。バイクに対する耳目は、そんな「速さ」に集まり、より冒険色とロマンのある競争だったのです。

 

競争は市販モデルを鍛え、ユーザーの日常に夢を届けます。夢が遊びになり、人生を豊かにする道具としてバイクは親しまれます。BMWは一貫してそんな夢を届けるブランドとして進化してきました。そう、遠出をする。旅をするバイク。しかもスピーディーに疲れずに。多くのバイク乗りが一目を置く存在になるのです。実はこんな夢と冒険が1980年に誕生する初代GS、R80G/Sとの共通項ではないでしょうか。そう、もともとBMWが持っている強みでもあるのです。

 

1960年代からバイクとの遊び方も多様化します。中でもバイク乗りを刺激したのはオフロードライディングでした。当時はまだオフロード用バイクはなく、ロードバイクにダート走行に適したサスペンションや排気系を搭載したスクランブラーと呼ばれるモデルが主流でした。現在、ネオレトロ系バイクやカスタムトレンドでもこの「スクランブラー」はお馴染みですね。

 

スクランブラー時代と平行してオフロードでの運動性を追求した軽量、小排気量のバイクが生まれ、現在に続くオフロードバイクへと進化する原点となります。小排気量エンジンを持たないBMWも、オフロードに特化した水平対向2気筒エンジンを搭載した競技用モデル、GS750,GS800でエンデューロ選手権に参加。150㎏を切るまでシェイプされた車体とボクサーエンジンの組み合わせは、排気量500㏄以上のクラスで活躍しました。

競技用モデルの呼称「GS」はゲレンデ・シュポルト。ドイツ語でオフロード・スポーツを意味しています。そして、こうしたダートを走るイメージと、街中から遠地まで走れる旅性能を兼ね備えたプロダクションモデルとして1980年にR80G/Sをリリースします。

 

このモデルのG/Sというネーミングは、ゲレンデシュポルトではなく、ゲレンデ/シュトラッセを意味しています。ドイツ語でオフロード/ストリート、つまりオフロードと一般道、舗装路と解釈すれば解りやすいでしょう。つまり、どんな道でも楽しめるツーリングバイクG/Sがここに誕生したのです。

BMW R80G/S
BMW R80G/S

オフロードバイクのようなアップライトなポジション。ワイドなハンドルバー、細身ながらタップリ入る燃料タンク。800㏄と余裕のあるエンジンがもたらす余裕の走り、そしてゲレンデ/シュトラッセの言葉通り、未舗装路での走破性が高く、市街地レベルの狭い道まで快適に楽しむことができるほど乗りやすい。多くのライダーが心を奪われるまで時間が掛かりません。実はこの基本的な魅力は、現在のGSにも連綿と受け継がれています。もちろん、常に磨き込まれながら。では次回、GSを一躍有名にしたラリーでの活躍についてお話をしましょう。

BMW Motorrad/GS HUB

PART.1 後編はこちら

【連載】BMWの誇るアドベンチャーモデル“GSシリーズ”をもっと知ろう!PART.1 後編

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