文:松井 勉
前回のあらすじ
この記事はBMWのGSシリーズを深く知ってもらうための連載 PART.2の前編です。PART.1をまだお読みでない方は併せてどうぞ。
GSのラインナップは、3タイプのエンジン、6モデル構成。
前回、BMWモトラッドの歴史とその中で育まれ、世界の道を楽しむために進化したGSの歴史を振り返りました。今回のテーマは、現在ラインナップされているGSモデル全機種を紹介します。後半パートでは、それぞれの走らせた印象もお届けします。
2020年10月現在、BMWモトラッドが販売しているバイクのジャンルは6つのカテゴリーに分けられています。スポーツ、ツアー、ロードスター、ヘリテイジ、アドベンチャー、そしてアーバンモビリティーがそれで、全31モデルを販売しています。
そのうちGSモデルは、313㏄の単気筒エンジンを搭載するG310GS。853㏄並列2気筒エンジンを搭載するF750GS、F850GS、F850GSアドベンチャーの3モデル。1254㏄水平対向2気筒エンジンを搭載するR1250GS、R1250GSアドベンチャーの2モデル、合計6モデル展開。そのなかで、ベース、スタンダード、プレミアムなど機能、足付き性で選択肢を持つモデルを用意するなど好みに合わせて選びやすいモデル体系と言えそうです。では、それぞれを説明してゆきましょう。
濃縮したGSの世界観を持つG310GS
その個性を箇条書きにすると…
- 普通自動二輪免許で乗ることができるGS
- インド生産とすることで、70万円を切るベースプライスを実現
- 後傾したシリンダー、動じの吸排気レイアウトなどBMWが設計した個性的なエンジン
- 250㏄クラスのデュアルパーパスモデルからの乗り換えも違和感なく行える
- 313㏄ながらスムーズさとパワーを持ち燃費もよし!
現在アドベンチャーバイクはさまざまな排気量カテゴリーで人気を博しています。その中でG310GSのポジションは独特。2気筒エンジン搭載の大型モデルより軽量で、250㏄クラスのバイクよりも安定感とパワーに余裕を持ち、長距離ランナーとして快適性、舗装路でのアジリティー、オフロードでの走破性などGSシリーズが得意とする部分を濃縮した1台ということができます。
エンジンはもっともシンプルな水冷単気筒エンジンながら、レイアウトが独特です。シリンダー角度を後傾させ、進行方向前方から吸気、後方から排気するデザインとしています。これにより低重心化、マスの集中化した車体は、道を問わず良質な走りを発揮。フェアリングやラゲッジラックなど、ツーリングアメニティーを装備しながらも、燃料を含み170㎏のウエイトに納めています。
前輪に19インチ、後輪は17インチのホイールを履き、車体ボリュームとのバランスもあってハンドリングは全体に軽快。トルク感を伴って回転上昇するエンジンの恩恵もあり、250㏄クラスとは異なる力強さがあり、高速道路の上り坂や峠道でも不足を感じません。
オフロードでは適度なボディーサイズがあることで、自重を巧く前後タイヤに乗せるような重量バランスが良好で、基本的に走りやすいキャラクターを持っています。ここでも不足がなくかつパワフルすぎない特性のエンジンが、ライダーをバックアップ。
オフロードでは必要とあらばアフターマーケットからタイヤを選択し、さらなる走破性をG310GSに付け足すことも簡単。BMWモトラッドの強みは、ラゲッジキャリーへの便利アイテムや機能の高いライディングウエアをメーカーオプションで用意していること。その気になればBMWモトラッドディーラーですべてをそろえ、納車と同時にアドベンチャーに出られるのも大きな魅力なのです。
世界のアドベンチャーモデル激戦区に向けたFという答え
世界的に人気のアドベンチャーモデル。中でも800㏄前後の排気量を持つバイクに注目が集まっています。なぜか。それはFシリーズが持つ特徴を見ると理解できます。
Fシリーズの魅力とは…
- 853cc並列2気筒エンジンが生み出すゆとりあるパワー&トルク
- 位相クランク採用によりパルス感あるサウンド、駆動感を楽しめる
- 1000㏄超クラスよりも車体が身軽。プライスも魅力
- パッケージオプションを組み合わせると最新の電子制御をフル装備できる拡張性
- オフロードイメージのロングツーリングに最適なアドベンチャーもラインナップ
アドベンチャーバイクらしい存在感と装備をもち、GSの中でもとくにオフロードを意識させる850GSと850GSアドベンチャーで濃いめのキャラを打ち出すと同時に、チューニングをマイルドにしてあらゆる場面での乗りやすさ、足つき性のよさを追求した750GSを加えた3タイプ。Fファミリーは走る場面のカバーレンジがとにかく広いのが魅力です。
中でも23ℓの大型燃料タンクや最新の電子制御アイテムを標準装備やクイックシフターであるシフトアシスタントプロ、アクラポビッチ性スポーツサイレンサー(これ、オプションで選択するとイイお値段なんですから!)や、アルミパニアケースのフレームも標準装備。F850GSアドベンチャーは現行GSファミリーでもじつは超狙い目な一台でもあるのです。
人気のクラスだけ、BMWが力をいれて磨いている。それがFファミリーの特徴です。
ザ・看板モデル。GSとアドベンチャーモデルの究極がこれ
BMWモトラッドという一つのメーカーにとどまらず、アドベンチャーカテゴリーのバイクが好きというライダーにとってR1250GS、R1250GSアドベンチャーの2モデルは文句なしの究極でしょう。1980年のGS発売以来、連綿と続くGSシリーズのコアであり、40年間、7世代に渡って進化を続けるGSファミリーの最高峰でもあります。
その魅力は…
- 圧倒的な存在感
- BMWらしい独自技術の足回り
- 最新の電子制御、ライダーエイド装備を標準装備
- GSシリーズではRファミリーのみシャフトドライブを採用
- 巨体なのにオフロードを軽々走る想像外の乗りやすさ
1254ccの水平対向2気筒エンジンは、吸気側にBMW ShiftCamと呼ばれる可変バルブタイミングシステムを装備しています。低中回転トルクの太さと高回転でのパワーを両立するためのもので、そのドライバビリティーはGSらしさを持ちながら、パワーで上回るライバルたちに一歩もひけを取りません。常用域でのトルク感とパワー感が圧倒的にスムーズかつ扱いやすいからです。
また、A型のサスペンションアームを持つフロントテレレバーサスペンション、シャフトドライブのリフトするクセを吸収し違和感ない駆動感を出すリアスイングアームに設けたリンク、パラレバーサスペンション。独自な足回りと大排気量エンジンにして低重心となる水平対向レイアウト。水冷エンジンとなった2013年から吸排気レイアウトも刷新。大きく、重たいが乗ると軽快なハンドリングを持ち、ライバルとは異なる世界を提供します。
イタリア、スペイン、フランスなどで目撃した朝の通勤時間帯、スクーターに混じり、意外に多いのがGSの姿です。市街地でもスイスイ、サーキットだって攻められる。こんな多様性に富むアドベンチャーモデルであり、GSがそこまで突き詰めて作られたバイクであり、毎日乗りたい楽しさがある、という証拠ではないでしょうか。