文:松井 勉
前回のあらすじ
この記事はBMWのGSシリーズを深く知ってもらうための連載 PART.2の後編です。前編をまだお読みでない方は併せてどうぞ。
個性豊かなGSの魅力、それぞれの走りを確かめる
BMWモトラッドにとってGSファミリーは販売面ではもちろんブランドイメージとしても大黒柱ともいえる存在です。前回紹介した今手に入るGSファミリー、乗ったらどうなの?! を今回は紹介してゆきましょう。
「でもなー、アドベンチャーバイクは大きいし、シート高が高いからほしいバイクから除外しているんだ」というみなさん、まずはBMWモトラッドのオフィシャルWEBでそのスペックを確認してみてください。
ローダウンサス+ローシートを備えたバリエーションがFファミリーやRファミリーに存在し、スペックシートにもインナーレッグという表記で、バイクをまたぐ時のに必要な距離も記載されています。シート高の数値とともに参考になると思います。トップページにあるMENU→モデル→Adventure→お目当てのGSシリーズの一台を選択。表れたバイクのページにある「データ&装備」をクリックすると車両スペックが見られます。
F750GSでスタンダードを選択すればシート高は770㎜。ベースとプレミアムは815㎜と45㎜の違いがあります。F850GSのシート高を見ると、スタンダードモデルが815㎜、ベースとプレミアムが860㎜となっています。
また、Rファミリーでロワードサスペンションをオプションで選択すればシート高は850㎜/870㎜→800㎜/820㎜へとなります。シート高表記が2種類あるのは、シートポジションを2段階に差し替えができるからです。
数値では解らないのが足付き感。気になる人はほしい車両に試乗、現車で確認が確かかと思います。また、シート高を下げるとハンドルバーが遠くなり、ライディングポジションも変わってきますから、その辺も要チェック。BMWモトラッドのディラーではそんなお悩みも多く扱ってきているので、ソリューションが見つかるはずです。
GSたちをイッキ乗り
GSシリーズ最小にしてGSエッセンスと味わいが濃厚な310
G310GSを“小さいGS”と思っている人はいませんか? それは正解であり不正解でもあります。GSが求めるロングツーリングから市街地、ダートなどあらゆる道を走破するために必須となる骨格的なサイズをしっかり持ち、その中でエントリーモデルとして、ツーリングモデルであるGSとして扱いやすいサイズに各部をスリムにしている。それがG310GSです。
ですからシート、フレームはスリムな作りなので、足つき性は問題なし。170㎏という車重も、ヨーロッパなどの高速道路、郊外の一般道の制限速度が100㎞/hの道が日常のお国柄で育ったため、しっかりしたフレーム、足まわりであることを思えばしっかりまとまっている質量であり、それでこそ生まれる走りの余裕、といえるのです。
G310GSのエンジンは、スムーズで振動の少なさが特徴で、低回転からしっかりとしたトルクがあり、高回転まで素直で軽やかに回ります。前後とも180㎜のストロークを持つサスペンション、前19インチ、後17インチというタイヤが支える足まわりは、ソフトで乗り心地我よく、速度を増せば安定感に寄与するので、安定感感と軽快感の両方を楽しめます。
以前、サーキットで全開にしたとき、メーター読みで160㎞/hまではすんなり速度が伸びました。同時に、フェアリングを装備することで、制限速度が120㎞/hの高速道でも巡航性能は余裕です。コンパクトながらGSらしさのすべてが詰まった一台なのです。
オフロードでは初めて林道に行く人にとってハードルが低いのはもちろん、コンパクトサイズを活かした軽快さで、大型GS乗りのファンバイクとして乗っているユーザーもあるようです。そう、楽しさの個性がしっかりある、というコトだと思います。
F750GSが持つ良質バランス
じつは雑誌業界でも「最後に乗るならF750GSがいい」という人は少なくありません。前作、F700GS時代から受け継がれるそのよさは、アドベンチャーバイクでありながら前後に履くキャストホイールで、ガチのオフ感が緩和されていること、市街地とフィット感のいいカラーリングなど、どこかスマートさと、GSらしい何所でも楽しめる走りのバランス点が高いからです。言葉を換えるならまさに「羊の皮を被ったオオカミ」。いや、凶暴と言う意味ではありません。
名前は750ですが、エンジン排気量はほかのFモデル同様853㏄の並列2気筒エンジンを搭載。その特性を750用にチューニングされパワー、トルク値は控えですが、日常域ベストとも思えるチューニングにはどこにも不満を感じません。
Fシリーズのエンジンは、クランクシャフトに位相角90度をつけることで不等間隔爆発で、リズミカルな排気音と後輪が路面を蹴る駆動をライダーにしっかりと伝えるのが特徴です。
F750GSの走りに一体感があり楽しいのは、GSらしいライディングポジションながら、オフロードと日常をうまくバランスさせることで、ことさら大きさを感じさせないからだと思います。スタンダードを選択すればシート高は770㎜。ベースとプレミアムでは815㎜とどちらも低めの設定なのも特徴です。
オプションの6.5インチTFTモニターや、プレミアムラインに装備されるダイナミックESAなどの電子制御レベルは、上級機同様。カッティングエッジテクノロジーを手軽に味わえるGS、それがF750GSなのです。
ロングツーリングから林道ツーリングまで。じつはこの低い車体が持つ安定感がビギナーから経験者まで魅了する秘密でもあるのです。峠セクションでも大人しそうで実は相当なポテンシャルをもち、その楽しさから業界人がこぞってほめるワケが潜んでいます。
F850GSというスポーツ性
F850GSの特徴はオフロード性能を意識したパッケージです。ベースとプレミアムには、前230㎜、後215㎜というサスペンションストロークが与えられ、前21インチ、後17インチのホイールを持つ足まわりは、見るからにオフロードを走りそうなのです。
実際、2020年に行なわれたインターナショナルGSトロフィーというイベントでは、このF850GSがニュージーランドを8日間、2700㎞の旅の足として活躍しました。そのイベントに私も参加取材したのですが、楽しかったなぁ。オフロード50%、舗装路50%で構成されたルートを毎日300〜400㎞をこなし、夜はテントで眠る。
そんなアドベンチャーツーリングをしてみて、GSというバイクが道を問わない旅をするために作られているのがよくわかりました。日本でも200㎞の高速道路を走り、10㎞の林道で絶景を味わう。それでまた200㎞高速道路を移動して帰る。どんな道も楽しめるGSならすてきな思い出になります。
ニュージーランドも一般道の制限速度が100㎞/hで、北海道のような道、阿蘇のワインディングのような道、草津から志賀高原に抜けるような道などなど、ハイペースで移動しても疲れない。楽しい。さすがGS。オフの強さと、ロードを相当に楽しめるパッケージ。相反する要素に思えて、その両方をバランスよく持つのがGSならでは。F850GSは1台で満足感の高いバイクなのです。
F850GSアドベンチャーならどこまでも走れる!?
前出のF850GSは燃料タンク容量が15ℓ。WMTCクラス3に属するF850GSの場合、想定燃費値が24,39㎞/ℓです。この燃費値測定は日本の速度域よりも高い速度まで加速、減速を繰り返すモードで取られるので、国内ペースでツーリングをすると大抵WMTCクラス3の燃費値は上回ります。
市街地エリア以外の場所にガソリンスタンドが減少している今F850GSアドベンチャーの23L入りの燃料タンクは、航続距離の点で大きな武器です。オンオフを交えたニュージーランドのGSトロフィー時、淡々と走ると平均燃費が26㎞/ℓを超すことも珍しくなかったので次の給油ポイントを気にせず走れるのが魅力。
そして、F850GSではオプションパッケージとなるプレミアム相当の装備を標準装備し(そのぶん価格も高いですが)、さらにアクラポビッチのスポーツサイレンサーを標準装備するというお得感。パルス感ある排気音にノーマルとは異なるマジックがかかり、気持ちも上ります。
確かに車重が増えている面もあるアドベンチャーですが、乗ればバランスのいい車体のため、大きなデメリットとは感じません。パニアケースを取り付けるためのステーを標準装備するなど、ロングツーリングへの下準備も完璧。オフロードを含むロングツーリングが趣味、という人にはお勧めのGSです。