9月22日に発表されたスズキのリッタークラスツアラーGSX-S1000GT。その名称とカテゴライズからGSX-S1000Fのマイナーチェンジ版と思う人もいるだろう。しかし、スズキはGSX-S1000Fの進化形ではなく見直しと説明する。では、GSX-S1000GTとはどんなマシンなのだろうか?
目次
GSX-S1000Fの進化ではなく全面的な見直しにより多岐に渡る改良が加わるGSX-S1000GT
この度発表された新型モデルGSX-S1000GT。999㎤・水冷並列4気筒エンジンと軽量コンパクトな車体を組み合わせたスーパーバイクとしての性能に、グランドツアラー(Grand Tourer)としての快適性や機能性、高級感のあるスタイリングの融合を目指して開発された。
タンデマーを乗せてロングツーリングに出かける際、あるいは一人でスポーティな走りを楽しむパフォーマンス志向のツーリング愛好家が求めるものを実現するため、GSX-S1000Fを単純に進化させたのではなく全面的に見直したと説明している。
GSX-S1000GTのコンセプトは、スズキのラインナップの中で、真のグランドツアラーとしての役割を想定しているという。パフォーマンス、敏捷性、高速安定性、快適性、コントロール性、コネクティビティ、そして目を見張るようなスタイリングを兼ね備えたプレミアムスポーツツアラーという立ち位置で、”GT”というネーミングにふさわしいプレミアムなスポーツツーリングを提供することを目指しているとのことだ。
高速道路を利用した快適でエキサイティングな長距離ツーリングの楽しさ。高度な制御システムがもたらす、コントロール性や疲労感の軽減など、総合的な楽しさ。パッセンジャーと一緒に長距離を走る楽しさ。こういった楽しさを表現するマシンであるとの期待が込められており、それは最新のコネクティビティがもたらす利便性や、ライダーが望むすべてのギアを持ち運ぶことができる能力によっても反映されているという。そして、これらの機能がもたらされるマシンの所有者であることへの誇りをも反映するとのことだ。
エンジンの特性を見直すべく新カムシャフトやマフラーなど吸排気系を刷新
採用する水冷4ストロークDOHC並列4気筒・999㎤エンジンは、広いパワーバンドでスムーズかつ安定した出力を追求する。ツーリングや日常生活で多用される低・中回転域から、高速道路での長距離走行時に使われる中・高回転域まで、快適なライディングとなる特性が追求された。高速道路でのツーリングで疲れにくいよう、幅広く滑らかなトルクカーブとパワーデリバリーを特徴とするが、電子制御技術との組み合わせにより、スポーツバイクにふさわしい力強い加速の興奮を味わうこともできるとのこと。また、排気系と吸気系のカムプロフィールを見直した新カムシャフトを採用することで、排出ガスの低減を図るとともに、性能とコントロール性のバランスを向上させている。
このようなねらいから、ボア×ストロークや排気量、圧縮比はGSX-S1000Fと同一ながら、出力も向上。110kW(150ps)/10,000rpmから112kW(152ps)/11,000rpmと最高出力が向上し、最大トルク発生回転数も9,500rpmから9,250rpmでの発揮と変更されている。とくに最大トルクが発生する回転数が下がることで低回転から豊かなトルクを発揮し、中~高回転域でもその威力を発揮することで、街乗りはもちろんロングツーリンクでの快適性アップにつながっているとも評価できる。なお最大トルク自体は108N・mから106N・mへと減少しているが、累計での平均トルク自体は向上しているとスズキは説明している。
また、パワー面も単に向上しただけではなく、出力特性もより最適化された。スムーズな出力特性が得やすい並列4気筒でも、いわゆるトルクの谷と呼ばれる出力の波が発生することがある。GSX-S1000Fでもトルクの谷は存在していたが、それをGSX-S1000GTでは極力なだらかなカーブになるように調整。これによりスロットルワークに忠実な出力が得られるようになった点もGSX-S1000GTの改良点に挙げられている。
出力面に関しては、あまり最近では見ることがなくなった0-200m、0-400mの加速性能も公開されており、GSX-S1000Fが0-200mで6.70秒、0-400mで10.25秒に対して、GSX-S1000GTは0-200mで6.64秒、0-400mで10.15秒と、それぞれ数字が向上している。
コンパクトな4-2-1エキゾーストシステムは一新し、コレクターの後方にスズキエグゾーストチューニング(SET)システムとマフラー、触媒コンバーターを配置するレイアウトとし、ユーロ5排出ガス規制に対応した新設計チャンバーを採用。迫力のある共鳴音と心地よい排気音を追求する。
新開発の電子制御スロットルボディは、アイドリング回転数の制御と出力特性のバランスを向上させるとともに、ユーロ5への対応にも貢献しているとのことだ。
さらにエアクリーナーボックスも新設計。吸気抵抗を低減し、迫力ある吸気音の響きはそのままに、音の質を高めることでライディングの楽しさを向上させることを意図した。
スズキ・クラッチ・アシスト・システム(SCAS)は、軽快なクラッチレバー操作を実現し、長時間の走行、特に渋滞時の疲労軽減に貢献する機能だ。また、スムーズな減速とシフトダウン時のコントロール性を向上させることにも寄与する。
現代車に必須の電子制御にも新システムと改良を加える
電子制御系はというと、新型GSX-S1000GTにはスズキ・インテリジェント・ライド・システム(S I R S)を構成する先進の電子システムが採用されている。S.I.R.S.には、スズキ・ドライブ・モード・セレクター(SDMS)、スズキ・トラクション・コントロール・システム(STSC)、ライド・バイ・ワイヤ電子制御システム、双方向クイック・シフト・システム、クルーズコントロールシステム、スズキイージースタートシステム、低回転アシストなどが含まれ、それぞれのシステムにより、走行状況や路面状況、ライダーのスキルや経験に応じてライダーをアシストし、最適なパフォーマンスを発揮可能にしているとのこと。ライダーをアシストすることで、オプションのサイドケースを装着した状態でも俊敏性、コントロール性、予測性にすぐれ、長距離のツーリングや日常のライディングでも疲れにくい操作性を追求。これらの特性は、ライダーに自信を与え、走りを楽しむことに集中させてくれるとのことだ。
先に挙げたようにGSX-S1000GTに新たに投入されたのがスズキ・ドライブ・モード・セレクター(SDMS)。これは出力特性の異なる3つのモードを選択することができ、ツーリングや近距離でのエキサイティングな走行、悪路や長距離ツーリングでの疲労時の走行など、さまざまな状況下でライダーをサポートするための機能だ。
そして改良されたスズキ・トラクション・コントロール・システム(STCS)は、5つのモード(+オフモード)を選択可能となる。1人での走行、同乗者との走行、荷物を積んでの走行、悪天候の中での走行など、GTマシンに求められる多様な走行条件に合わせて、より細かく設定を変更することが可能となった。これにより、ライダーの安心感を高め、ストレスや疲労を軽減することにつながるだろう。ちなみにGSX-S1000Fは3モード(+オフモード)だったので、より広範囲のシチュエーションに最適化されたともいえる。
さらに、SDMSの各モードに合わせて、スロットル操作とエンジン出力特性の関係をより細かく制御する、新開発のライド・バイ・ワイヤ式電子スロットルコントロールシステムが投入された。これは従来の機械式よりもシンプルかつ軽量・コンパクトになり、自然なレスポンスとリニアな制御を実現しながら、コントロール性を向上させることに寄与するとのことだ。
新たな双方向クイックシフトシステム(オン/オフ設定可能)の採用によって、クラッチレバーを操作することなく、より素早く、よりスムーズに、より確実にシフトアップ/ダウンを行なうこともできるようになった。シフト操作のしやすさ、疲労軽減、シフトダウン時の自動ブリッピング機能などが相まって、満足度の高い体験が得られることだろう。
また、スロットルを操作せずに設定した速度を維持できるクルーズコントロールも新しく投入。これは長距離ツーリングでの疲労軽減に貢献してくれる機能だ。設定は簡単で、とくに高速道路を一定速度で走行する場合に有効となるだろう。
そしてスズキイージースタートシステムは、スターターボタンを1回押すだけでエンジンが始動するシステムも搭載。さらにスズキの低回転アシスト機能がスズキクラッチアシストシステム(SCAS)と連動するようになり、スタンディングスタートからの発進がよりスムーズにできるようになったのも進化した点だ。
車体関係にも大々的な変更が加わる
コンパクトで軽量なシャシーは、俊敏性、快適性、高速安定性、そして安心感のあるライディングプレジャーを実現するために設計されている。長距離ツーリングではライダーの疲労を軽減し、スポーティな走りではリッタークラスのアグレッシブな性能を発揮するなど、実使用環境でのすぐれたハンドリングとコントロール性を重視した内容としたのが特徴とのことだ。
アルミ製ツインスパーフレームは、軽快なハンドリングとすぐれたロードホールディング性能を追求した。新設計のシートレールには、安全なサイドケースの取り付けポイントが設けられており、厚みのある快適なリアシートを実現するデザインを採用している。
GSX-R1000に由来するアルミ製スイングアームは高いロードホールディング性と高負荷に耐える強度を備えており、高速コーナーでの安定性などスポーティな走りに貢献することだろう。
ラバーマウント式フローティングハンドルはワイドグリップ化と位置の最適化、新設計のシートとの組み合わせにより、ツーリングやスポーティな走行時に疲れにくいアップライトなライディングポジションを追求する。
フルアジャスタブルのφ43mmKYB製倒立フロントフォークは、タンデマーを乗せてのツーリングやスポーティな走りを楽しむ際に、よりスムーズな走りを追求できる性能を与えられた。さらに、調整可能なリンク式のリヤサスペンションとの組み合わせで俊敏性と安定性を高めている。
ホイールは軽快なハンドリングと安定性を追求するため6本スポークのアルミ鋳造ホイールを採用。採用するタイヤは新開発されたダンロップ製スポーツマックス ロードスポーツ2で、適度な剛性を確保するとともに、トレッドパターンを最適化することで、ウェットコンディションでの積極的なグリップ、ウォームアップの高速化、耐久性の向上を追求している。
グランドツアラーとして気になるのは巡航距離だが、燃料容量を19Lに拡大したスタイリッシュな新燃料タンクとエンジンのすぐれた燃費性能により、すぐれた航続距離を実現するとのこと。
ブレーキまわりはというと、ABSの標準装備に加えて、フロントにはブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーとφ310mmフローティングマウント式ダブルディスクの組み合わせにより、強固で信頼性の高いブレーキ性能を追求した。
フルカウルとウインドスクリーンの空力的なフォルムに、GT専用にチューニングされたサスペンションセッティングとフレームを組み合わせることで、高速道路でのツーリングでも安心感のある安定性を追求している。
また、フローティングハンドルやラバーカバー付きのフットレストなど、ライダーやパッセンジャーがバイクに触れる部分の振動を低減するための工夫もほどこされており、よりリラックスした、疲れにくいツーリングが得られるように意図されたのも特徴だ。
電気系パーツは大部分が刷新することで利便性などをさらに追求
電子機器の特徴としては、6.5インチフルカラーTFT液晶マルチファンクションディスプレイを新しく採用した点が挙がる。もちろんアプリの表示にも対応するものであり、スマートフォンとの連携により、連絡先、地図、音楽、電話、カレンダーなどの機能を簡単に利用することができるようになった。
また、スズキ純正以外のサードパーティ製アプリにも対応しており、ナビゲーション、ルート案内、目的地までの所要時間、気象情報など、さまざまなコンテンツを追加することもできるとのこと。
そして今や必須装備といえる充電用USBコネクトは、TFT液晶インストルメントスクリーンの左側に内蔵されている。
ヘッドライトなど灯火類は水平に配置されたLEDヘッドライトと新開発のLEDポジションランプを組み合わせており、ジェット戦闘機をイメージした大胆なデザインを採用しているのが外観上の大きな特長にもなっている。そしてLEDリヤコンビネーションランプは、テールのスタイリッシュなラインを強調するデザインとした。
外装デザインは刷新してGSX-S1000Fとは別モノに
GSX-S1000GTはシャープで彫刻的なラインを持つ先鋭的なデザインを採用している。これはジェット戦闘機からインスピレーションを得ており、最先端のルックを持ちつつ空気力学的に効率のよいフロントフェイスを生み出すことにも貢献しているとのこと。その結果、印象的なフェイスをもたらす近未来的なデザインは、ツーリングでの長距離高速走行でのパフォーマンスと快適性アップにも貢献してくれることにつながっている。
また、薄いテールセクションのデザインは、GTの軽量化に加えてマスの集中感を表らすことにも貢献している。
車体には新ロゴとして「GT」をあしらったデカールを配置し、グランドツアラーとしての魅力をアピールしている。
またイグニッションキーには「GT」のロゴをゴールドであしらった特注品を採用し、高級感を演出した。
こういった新しい外装を採用するGSX-S1000GTのデザインコンセプトとは “A GT Tour de Force”と呼ばれる。新しいGTのデザインコンセプトは、真のグランドツーリングモーターサイクルが持つパフォーマンスのポテンシャル、快適性、喜びを視覚的に表現することを目的としたとのこと。同時に、スズキ・インテリジェント・ライド・システム(S.I.R.S.)やスマートフォンとの連携などの先進的な機能や、空力特性、操作性や快適性など、荷物を満載して長距離を走るときも、一人で走り出すときも、より簡単にコントロールでき、より快適になるように設計されたGSX-S1000GTから洗練された印象を伝えることを目指したとのことだ。
GTに与えられた新たなフェイスは、突き出たノーズ、水平に配置された2つのLEDヘッドライト、新しいミラーデザイン、サイドターンシグナルを組み合わせて生まれたものだ。GTのスタイリングは、スズキのモーターサイクルの新しい顔を提案するものになるだろう。そして、これらの要素に加えて新しいシートデザイン、スリムなテールセクション、短くコンパクトなマフラーデザインなどと相まって、洗練された高級感のあるイメージを表現するとともに、快適さと速さ、そして楽しさを追求したグランドツーリングマシンであることを示しているのだという。
そしてカラーリングは3タイプを用意。メインカラーとなるメタリックトリトンブルー、そしてメタリックリフレクティブブルー、グラススパークルブラックだ。メタリックトリトンブルーはスズキのブランドやアイデンティティを象徴するカラーでもあり、MotoGPマシンでも採用されていることでも知られる。パフォーマンスやスピード、俊敏性といったスポーティな印象を与えるカラーだ。メタリックリフレクティブブルーは高級感のあるグロス仕上げのダークブルーで、都会の喧騒から離れて美しい夜空を楽しんでいる姿を表現したとのこと。グラススパークルブラックは光沢感があるブラックとフラットな質感のブラックを組み合わせることで上質さや高級感を演出する。
ロングツーリングを快適にする充実したアクセサリー類を用意
グランドツアラーとは文字どおり大旅行を意味し、古くはアメリカ大陸横断をイメージさせるようなマシンにその名が冠せられていたことが多い。GSX-S1000GTもロングツーリングを強く意識したモデルであり、そのロングツーリングを支えるためのアクセサリー類を豊富に用意している。
直接的に利便性を向上させるアクセサリーとしては純正比70㎜ロング化したツーリングスクリーン、フルフェイスヘルメットが収納可能なサイドケースと装着用ブラケットセット、真夏でも雨天や深夜走行には非常に助かるグリップヒーター、フューエルタンクバッグ、フューエルタンクパッドのほか、もとはレース用だが転倒時のレバー破損防止も期待できるブレーキ/クラッチレバーガード、フレームやアクスルシャフトに装着するスライダー類、スタイリッシュレザーシート、赤く塗装されたブレンボ製フロントブレーキキャリパー、カーボン製フロント/リヤフェンダー、カーボン製クラッチ&スターターカバーなどが用意。これらはすべてスズキディーラー店で購入可能予定だ。
GSX-S1000Fをベースとしつつも、まったく生まれ変わったといえるGSX-S1000GT。なお、ここまでの情報は欧米向けに製作されたプレスリリースから引用しており、現時点では10月から世界各国で順次発売を開始するとのこと。しかし日本発売時期や価格などの詳細は未定。早期の国内導入には期待したいところだ。
SUZUKI GSX-S1000GTのスペック
- 全長×全幅×全高
- 2,140×825×1,215(㎜)
- 軸間距離
- 1,460㎜
- シート高
- 810㎜
- 車両重量
- 226㎏
- エンジン型式・排気量
- 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒・999㎤
- 最高出力
- 112kW(152ps)/11,000rpm
- 最大トルク
- 106N・m(10.8kgf・m)/9,250rpm
- 燃料タンク容量
- 19ℓ
- タイヤサイズ
- F=120/70-17・R=190/50-17
- 価格
- 未定
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- 電話番号
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